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 アルマメイド長と一緒に食堂へ入って来た男性は出来る執事セバスチャンと言う感じ……出来る執事と言えば、な私の勝手なイメージ。

服装も動きもキッチリとしていてかっこいい。40代に見えるけれどもしかしたら50代かもしれない。

「ノア、こちらは使用人総支配人のルーベンさんです」

セバスチャンじゃなかった…………初めまして、とご挨拶をするとルーベンさんは優しく微笑んで、初めましてと言ってくれた。

「ノア、使用人には守秘義務がある事は知っているね。君に任せたい仕事があるのだけれど、この仕事を引き受けると簡単には外出も出来なくなる。それでも引き受けてくれるというならば内容を伝えられるのだがどうだろうか」

つまり引き受けると決めてからでないと内容は教えられない、ということかな。

外出は……ごめんなさい。勝手に窓から出入りさせていただきます。
それからもちろんお城には働きに来たから引き受けるつもりだけれど一体どんな内容だろう?

「お引き受け致します」

そう言うとルーベンさんはどこかホッとした様子を見せた。

とりあえず、荷解きと制服に着替えましょうと言うことで、私のためにお部屋を用意してくださったのでそこで制服に着替えた。

「先程ノアが持って来てくれた紹介状だけれども、1通はリアザイア王家のものでもう1通はベルダッド公爵家のものだったね。あの封蝋は私達では開けられないのでエリアス陛下にお渡ししたのだよ」

アルマメイド長とは別れルーベンさんのお話を聞きながら歩く。

「これからエリアス陛下にお会いして陛下が直接ノアにお話になられるそうなのでよく聞いておくようにお願いします」

……!? いきなりエリアス陛下にお会いできるの!?

王妃様もシュゼット様も一体なにを書いたのだろう……

不安になりながらも歩いていると大きな扉の前で立ち止まった。

「こちらが陛下の執務室になります」

そう言ってルーベンさんがノックをする。

「入りなさい」

「失礼致します」

ルーベンさんが言い私も一緒にお部屋へ入る。
さすがにちょっと緊張するなぁ。

「エリアス陛下、ノアを連れて参りました」

エリアス陛下はお顔を隠されていた。

「では、私は失礼致します」

えっ!? ルーベンさん一緒にいてくれないの!?

すがるような視線を送ったのにニコリと微笑みコクリと頷かれ……出ていってしまった……

とりあえずまずはご挨拶をしないと。

「初めまして、ノアと申します。王城で働かせて頂くこと光栄に思います」

「初めまして、ノア。顔を上げてくれるかな」

顔を上げて陛下のお顔を……お顔は見えないんだった……

「顔を隠したままで申し訳ないけれど、このまま話をさせてもらうよ。紹介状を読ませてもらった。内容を伝えないまま仕事を引き受けさせてしまってすまない。あまり人に知られてはいけないことだからね」

人には知られてはいけない仕事……何か不安になってきた。

「あぁ、すまない。不安にさせてしまったね。説明をさせてもらうよ」

これでわかった。私は相変わらず思った事が顔に出ているみたい。

「頼みたい仕事と言うのは私の両親の世話だよ。今は眠っている時間の方が長く体力も落ちている」

やっぱり。シュゼット様のご両親と同じように眠らされているのだ。

「今までは昔からここで働いてくれている母上の侍女が付いていてくれたのだけれど、弱っていく両親を見ているのが辛いようでね……もう1人一緒に働いてくれる侍女を探して欲しいと言われたのだよ」

なるほど。でも今日来たばかりの私にそんな大切なお仕事を任せていいのだろうか。

「紹介状があったからね。貴方は信頼できると思ったのだよ」

私の表情と会話をするのはやめて欲しい。

エリアス陛下が笑った気がした。

「私の両親の事は他言無用だよ。外出も制限させてもらうけれどその代わり城の敷地内なら自由に歩き回っても構わないからね」

「かしこまりました。精一杯務めさせていただきます」

エリアス陛下がありがとう、といい話しは終わりかなと思っていたら

「ノア、君はベルダッド家で働いていたそうだね。その……シュゼットは元気にしているか」

!!

「はい! シュゼット様はお元気です! ですが……陛下、エリアス陛下の事を毎日心配なさっています」

シュゼット様の事を聞いてくれた事が嬉しかった。

「そうか……元気なのだな」

安心したようにそういう陛下に、私はシュゼット様からお預かりした手紙を渡そうと思った。
マジックポケットとなった私の制服のポケットから手紙を取り出し

「シュゼット様からお預かりした陛下宛のお手紙です」

そう言ってお渡しした。

「ありがとう。君は本当に信頼されているのだね」

エヘヘと照れているとドアをノックする音が聞こえた。

エリアス陛下が入室を許可すると入って来たのは服装も仕草も上品でキッチリとした……ルーベンさんの女性版みたいな方が入って来た。

「エイダ、よく来てくれた。紹介するよ、こちらはノアだ。新しい侍女だよ。ノアこちらはエイダ。さっき話した母上の侍女だ」

「初めまして、エイダ様。私はノアと申します。ご指導の程よろしくお願い致します」

「初めまして、私に敬称は必要ないですよ。こちらこそよろしくお願い致します」

エイダさんがフワリと微笑む。

「では、2人とも大変な仕事だけれど頼んだよ」

かしこまりました、といいエイダさんに続いてお部屋を後にした。

「これから先王様ご夫妻の寝室へ向かいます。これまでに言われていると思いますがここから先の事はたとえ城内であっても他言しないように」

「はい。かしこまりました」

「あまり緊張しないでね、大変なお仕事ですから少しでも楽しく一緒に頑張りましょう」

「はい、エイダさん。ありがとうございます」

そう言って微笑みあうと肩の力が抜けた。思っていたより緊張していたのかも。

先王様ご夫妻の寝室へ着くとエイダさんがだいたいの仕事の流れを教えてくれた。

朝は窓を開けシーツとお布団の交換をするのだけれどお二人の身体を動かさなければならないので時間になると騎士団長のガイル様がいらっしゃるそうだ。

彼も王家に仕えて長いので信頼されているらしい。

それから時々目を覚まされるのでその時に食事や身体を拭くなどをするため、いつ目覚めてもいいようにほとんどをお部屋で過ごすことになるらしい。

エイダさんと私の二人体制の間はその時間も半分になるのでいろいろと用事を済ませる事が出来るから助かるわ。と言っていた。

エイダさんも一緒にお仕事をするから突然お二人が回復するのはいろいろと疑問を持たれそう……だから少しずつ起きられる時間を長くする感じでヒールをかけていこう。


今日はこの後エイダさんと二人でお部屋のお掃除をしてどちらかが目覚められたらその度に食事や身体を拭いたりした。


一通りの事は出来たので明日からは交代でお側にいましょうということになった。


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