90 / 251
90
しおりを挟むその日の夜8時頃、レオンのいる宿へ向かうと宿の前にレオンが立っていた。
白シャツに黒いパンツとシンプルだけれどスタイルのよさもありカッコイイ。
そして……数人の女の子に囲まれている……これは声をかけてもいいのかな……?
迷っているとレオンが私に気が付いた。
ごめんね、とか、また今度、とか言いながら女の子達を解散させてからこちらへきた。
慣れているな。たぶん私が女の子達に敵意を持たれないようにしたんだよね。
「今晩はノア、先週はすまなかったね。手紙をみたよ、ありがとう」
「今晩はレオン。こちらこそごめんね、お手紙もありがとう。まだ報告することもそんなにないし、私に構わず女の子達とご飯を食べに行ってもいいよ」
金曜日の夜でもいいし。と思ってそう言ったのに
「ヤキモチかな? 嬉しいよ」
ニコリと笑い私の髪に触れながら言うレオン。
からかわれている……私も成長しているのだよ。それくらいわかる。
「そんなこと言ったって許さないからっ」
ツンッとそっぽを向く。
からかい返してやるわ。焦るがいい。
「ノア、わかっているだろう?」
私の髪を長い指ですきながら
「俺の気持ち」
真剣な表情で後頭部に手を添えられる。
うろたえる私。
ね? と近づいてくるレオンの顔。
耐えられずしゃがみ込む私。
「フッ……ククク……そんな避けられ方初めてだよ」
笑われる私。
む、無理だった。レオンをからかうのはまだ早いみたい。
よいしょと立ち上がり、悪ふざけはここまでにして、どこでご飯を食べようかと言うと、個室のあるお店があるからそこへ行こうと言われた。
個室……? ドレスコードとか大丈夫かな? と思っていると、個室があるといってもカジュアルなお店だから安心してと教えてくれた。
お店に着くと確かにお客さんはお洒落をしているけれどそこまできっちりとした格好ではなかった。
感じのいい店員さんに個室へ案内された。
席に着き料理が運ばれて来るとレオンが話し始めた。
「ベルダッド家の様子はどうだい? 何か変わった事はあったかな」
「変わった事……というかベルダッド家は階級にこだわりが強い方々なの?」
「そんなことは無いはずだよ。平民でもメイドや執事での採用もあるみたいだしね。何かあったのか?」
確かに平民もいる。ということはベルダッド家と言うより使用人の間での事なのかな。
「大したことじゃないよ。それよりシュゼット様にお会いしたんだけれど、レオンはシュゼット様がどんな方か知っているの?」
少し考えてから
「ノア、君に先入観を与えたくないんだ。すまないがこのまま続けてくれるかな」
それじゃぁと
「シュゼット様がネコを飼っているのは知っている?」
少しだけレオンの表情が動く。
「あの部屋へ入れてもらえたのか?」
知っているんだ。
「どうしてあんなに弱っているの? 獣医さんにはみせているのかな?」
「あのネコは……おそらく病気ではないよ」
なるほど、レオンも確証がないのか。
「シュゼット様の侍女のコリンヌさんのことは知っている?」
「あぁ、数ヶ月前に入って優秀な方だとか……」
こちらも知ってはいるけれど言葉を濁している感じ。
「国王陛下の従者の方はどんな方ですか?」
「どうして?」
「コリンヌさんがその従者の方から聞いたという陛下のご様子を使用人用の食堂の噂話で聞いたのだけど、私は以前使用人には守秘義務があると教えられていたからそんなことあるのかなって」
「うん。確かに守秘義務はあるね。その従者はどんなことを言っていたのかな」
「まず陛下の毒殺未遂は本当にあったことなの?」
「残念ながら本当にあったことだよ」
「……そのせいで陛下のお姿が変わられてしまったというのも?」
「そうだね、それも本当だよ。毒には耐えたけれど黒いアザのようなものが残ってしまったらしい。顔の一部にもね。何人かの貴族達がその顔を見たときにあまりにも怖がるものだから隠すようになったと聞いているよ」
たぶんご自身も傷ついたんじゃないかな。
「確かに食堂でも似たような話を聞いたよ。それから呪いを受けているらしいとも」
「呪い?」
「うん。黒いアザがツタのように広がってきているとか」
レオンは少し考え込んでいる。
「エリアス陛下に宛てたシュゼット様の手紙を侍女が城まで届けているらしいから、その時にもしかしたら話をしているのかもしれないね」
シュゼット様お手紙を本当にだしていたんだ。
内容は噂通りかわからないけれど……
「エリアス陛下が毒を盛られる前はシュゼット様とのご関係はどうだったの?」
「……さぁ、次期王妃の最有力候補だったらしいし、定期的に一緒にお茶を飲むくらいはしていたんじゃないかな? 他の王妃候補にも言えることかもしれないけれど」
さすがに王城内の事までは詳しくないか……
「こちらでもいろいろ調べてみるよ。これでも商売がら顔は広いからね」
よろしくお願いしますと言い、それから
「私、シュゼット様にあのネコのいる部屋に入れてもらえた訳じゃないよ」
訂正しておかなければ。
先輩メイドに背中を押されて部屋に閉じ込められてコリンヌさんに怒られてシュゼット様に出ていきなさい。と言われたことを話したらお腹を抱えて笑われた。
ねぇ、レオン…………笑いすぎじゃないかな?ねぇ?
そんな夕食を終えて山の家に帰り、夜遅くに三毛猫さんと一緒に結界を張ってからゲートをくぐりあのネコさんのお部屋へ行ってみた。
レオンはおそらく病気ではないと言っていたけれど……どういう事だろう。
触れてみると温かい。呼吸もちゃんとしている。けれど反応がないし痩せている。
深い眠りについているような…………薬で眠らされている?
一体誰に? シュゼット様? 何のために?
もう少し様子を見た方がいいかもしれない。
三毛猫さんにもそう話すとジッとネコさんを見つめてから私を見て「ニャーン」と小さく鳴いた。
5
お気に入りに追加
1,173
あなたにおすすめの小説
【完結】底辺冒険者の相続 〜昔、助けたお爺さんが、実はS級冒険者で、その遺言で七つの伝説級最強アイテムを相続しました〜
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
試験雇用中の冒険者パーティー【ブレイブソード】のリーダーに呼び出されたウィルは、クビを宣言されてしまう。その理由は同じ三ヶ月の試験雇用を受けていたコナーを雇うと決めたからだった。
ウィルは冒険者になって一年と一ヶ月、対してコナーは冒険者になって一ヶ月のド新人である。納得の出来ないウィルはコナーと一対一の決闘を申し込む。
その後、なんやかんやとあって、ウィルはシェフィールドの町を出て、実家の農家を継ぐ為に乗り合い馬車に乗ることになった。道中、魔物と遭遇するも、なんやかんやとあって、無事に生まれ故郷のサークス村に到着した。
無事に到着した村で農家として、再出発しようと考えるウィルの前に、両親は半年前にウィル宛てに届いた一通の手紙を渡してきた。
手紙内容は数年前にウィルが落とし物を探すのを手伝った、お爺さんが亡くなったことを知らせるものだった。そして、そのお爺さんの遺言でウィルに渡したい物があるから屋敷があるアポンタインの町に来て欲しいというものだった。
屋敷に到着したウィルだったが、彼はそこでお爺さんがS級冒険者だったことを知らされる。そんな驚く彼の前に、伝説級最強アイテムが次々と並べられていく。
【聖龍剣・死喰】【邪龍剣・命喰】【無限収納袋】【透明マント】【神速ブーツ】【賢者の壺】【神眼の指輪】
だが、ウィルはもう冒険者を辞めるつもりでいた。そんな彼の前に、お爺さんの孫娘であり、S級冒険者であるアシュリーが現れ、遺産の相続を放棄するように要求してきた。
【完結】ライラ~婚約破棄された令嬢は辺境へ嫁ぐ
ariya
恋愛
スワロウテイル家門レジラエ伯爵令嬢ライラは美しい娘ではあるものの、周囲の令嬢に比べると地味で見劣りすると言われていた。
彼女が望むのは平凡な、安穏とした生活であり爵位を持たないが良き婚約者に恵まれ満足していた。
しかし、彼女はある日突然婚約破棄されてしまう。
その後に彼女の元へ訪れた新しい婚約は、遠方の辺境伯クロードが相手であった。
クロードは噂通り英雄なのか、それとも戦狂男なのか。
ライラは思い描いていた平凡な生活とは程遠い新婚生活を送ることになる。
---------------------------
短編・おまけ
https://www.alphapolis.co.jp/novel/532153457/985690833
---------------------------
(注意)
※直接的な性描写はありませんが、彷彿とさせる場面があります。
※暴力的な描写が含まれているます。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
巻き込まれ女子と笑わない王子様
来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
目立たず静かに生きていきたいのに何故かトラブルに巻き込まれやすい古川瞳子(ふるかわとうこ)(十八歳)。巻き込まれたくなければ逃げればいいのだが、本来のお人好しの性格ゆえかつい断りそびれて協力する羽目になる。だがそのトラブルキャッチャーな自分の命運は、大学に入った夏に遊びに来た海で、溺れていた野良猫を助けようとしてあえなく尽きてしまう。
気がつけば助けたその黒猫と一緒に知らない山の中。
しかも猫はこちらにやって来たことが原因なのか、私とだけ思念で会話まで出来るようになっていた。まさか小説なんかで死んだら転生したり転移するって噂の異世界ですか?
トウコは死に損じゃねえかと助けた猫に同情されつつも、どんな世界か不明だけどどちらにせよ暮らして行かねばならないと気を取り直す。どうせ一緒に転生したのだから一緒に生きていこう、と黒猫に【ナイト】という名前をつけ、山を下りることに。
この国の人に出会うことで、ここはあの世ではなく異世界だと知り、自分が異世界からの『迷い人』と呼ばれていることを知る。
王宮に呼ばれ出向くと、国王直々にこの国の同い年の王子が、幼い頃から感情表現をしない子になってしまったので、よその国の人間でも誰でも、彼を変化させられないかどんな僅かな可能性でも良いから試しているので協力して欲しいとのこと。
私にも協力しろと言われても王族との接し方なんて分からない。
王族に関わるとろくなことにならないと小説でも書いてあったのにいきなりですか。
異世界でもトラブルに巻き込まれるなんて涙が出そうだが、衣食住は提供され、ナイトも一緒に暮らしていいと言う好条件だ。給料もちゃんと出すし、三年働いてくれたら辞める時にはまとまったお金も出してくれると言うので渋々受けることにした。本来なら日本で死んだまま、どこかで転生するまで彷徨っていたかも知れないのだし、ここでの人生はおまけのようなものである。
もし王子に変化がなくても責任を押し付けないと念書を取って、トウコは日常生活の家庭教師兼話し相手として王宮で働くことになる。
大抵の人が想像するような金髪に青い瞳の気が遠くなるほどの美形、ジュリアン王子だったが、確かに何を言っても無表情、言われたことは出来るし頭も良いのだが、何かをしたいとかこれが食べたいなどの己の欲もないらしい。
(これはいけない。彼に世の中は楽しいや美味しいが沢山あると教えなければ!)
かくしてジュリアンの表情筋を復活させるトウコの戦いが幕を上げる。
フェードイン・フェードアウトがチートな転生女子と、全く笑みを見せない考えの読めない王子とのじれじれするラブコメ。
異世界に来たからといってヒロインとは限らない
あろまりん
ファンタジー
※ようやく修正終わりました!加筆&纏めたため、26~50までは欠番とします(笑)これ以降の番号振り直すなんて無理!
ごめんなさい、変な番号降ってますが、内容は繋がってますから許してください!!!※
ファンタジー小説大賞結果発表!!!
\9位/ ٩( 'ω' )و \奨励賞/
(嬉しかったので自慢します)
書籍化は考えていま…いな…してみたく…したいな…(ゲフンゲフン)
変わらず応援して頂ければと思います。よろしくお願いします!
(誰かイラスト化してくれる人いませんか?)←他力本願
※誤字脱字報告につきましては、返信等一切しませんのでご了承ください。しかるべき時期に手直しいたします。
* * *
やってきました、異世界。
学生の頃は楽しく読みました、ラノベ。
いえ、今でも懐かしく読んでます。
好きですよ?異世界転移&転生モノ。
だからといって自分もそうなるなんて考えませんよね?
『ラッキー』と思うか『アンラッキー』と思うか。
実際来てみれば、乙女ゲームもかくやと思う世界。
でもね、誰もがヒロインになる訳じゃないんですよ、ホント。
モブキャラの方が楽しみは多いかもしれないよ?
帰る方法を探して四苦八苦?
はてさて帰る事ができるかな…
アラフォー女のドタバタ劇…?かな…?
***********************
基本、ノリと勢いで書いてます。
どこかで見たような展開かも知れません。
暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。
婚約していないのに婚約破棄された私のその後
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「アドリエンヌ・カントルーブ伯爵令嬢! 突然ですまないが、婚約を解消していただきたい! 何故なら俺は……男が好きなんだぁああああああ‼」
ルヴェシウス侯爵家のパーティーで、アドリーヌ・カンブリーヴ伯爵令嬢は、突然別人の名前で婚約破棄を宣言され、とんでもないカミングアウトをされた。
勘違いで婚約破棄を宣言してきたのは、ルヴェシウス侯爵家の嫡男フェヴァン。
そのあと、フェヴァンとルヴェシウス侯爵夫妻から丁重に詫びを受けてその日は家に帰ったものの、どうやら、パーティーでの婚約破棄騒動は瞬く間に社交界の噂になってしまったらしい。
一夜明けて、アドリーヌには「男に負けた伯爵令嬢」というとんでもない異名がくっついていた。
頭を抱えるものの、平平凡凡な伯爵家の次女に良縁が来るはずもなく……。
このままだったら嫁かず後家か修道女か、はたまた年の離れた男寡の後妻に収まるのが関の山だろうと諦めていたので、噂が鎮まるまで領地でのんびりと暮らそうかと荷物をまとめていたら、数日後、婚約破棄宣言をしてくれた元凶フェヴァンがやった来た。
そして「結婚してください」とプロポーズ。どうやら彼は、アドリーヌにおかしな噂が経ってしまったことへの責任を感じており、本当の婚約者との婚約破棄がまとまった直後にアドリーヌの元にやって来たらしい。
「わたし、責任と結婚はしません」
アドリーヌはきっぱりと断るも、フェヴァンは諦めてくれなくて……。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる