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67 金曜日

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 金曜日。王妃様とノバルトが子熊さんを連れて来てくれる日。

熊さんはお昼頃にキツネさん達とやってきたので一緒にお昼ごはんを食べた。

時間近くになったので、庭に作ったゲートのカギを開けておく。

コン コン コン

「はーい。どうぞ」

ドアが開き王妃様がこちらへ来る。その後ろに子熊さんを抱っこしたノバルト。
子熊さんは思っていたより子熊さんだった。抱っこされている姿が可愛い。ぬいぐるみかな。

ノバルトが子熊さんを降ろすとポテポテと歩き出す。
熊さんも近づいていきスンスンと匂いを嗅いでいる。それがペロペロと毛繕いに変わりカプカプと甘噛みに変わる。

それから子熊さんの首元を咥えてこちらに歩いてくる。

子熊さんに両手を差し出すとスンスンと匂いを嗅いでから「クゥークゥー」と少し悲しげに鳴きながらスリスリしてくる。父熊さんの最後を感じているのかな。

ああすることしか出来なくてごめんなさい。
父熊さん、子熊さんは無事母熊さんの元に戻りました。

母熊さんも私にスリスリしてくる。ちょっと強目。
よしっ来い! 受け止めたる! とお相撲さんのぶつかり稽古のような体制を取るけれど押されてよろけてしまった。
ヨシヨシ、嬉しいんだね。可愛い。

トンと背中に硬いものがあたる。振り返るとノバルトの胸板。そして少し上を見ると優しい微笑み。

前には熊さん親子、後ろにはイケメン王子……あれ? 私今日死んじゃうのかな?

「こんにちは。トーカさん」

ウフフと笑いながら王妃様。

意識を戻して私もご挨拶をする。

「こんにちは。王妃様」

ご挨拶をしてから、ノバルトは2回目だけれどいつも通り温室と家の中をご案内する。
やっぱりリライがあって更にあめ玉にしていたことに驚いていた。

最後に客室のゲートを見せてお茶でも出そうと思っていたら王妃様に手を取られた。

「さぁトーカさん、今日はお城に行きましょう」

ドアを開けてやんわりと手を引かれる。

「え?」

驚いている間に歩き出してしまう。すると三毛猫さんがトコトコトコと歩いて来て一緒にドアの向こう側へ。
そのすぐ後からノバルトもついてきた。

お城に来てしまった。

「今日はマナーのお勉強をしましょう」

王妃様が嬉しそうに言う。ノバルトを見るとすまない、と聞こえてきそうな表情……

とりあえず、結界を張り王妃様のお部屋まで移動する。三毛猫さんも一緒だけれどどうして今日は付いてきてくれたのだろう?

一緒に居てくれるなら何でもいいんだけど……

お部屋に着くとノバルトは仕事に戻り、私は念のために髪色と目の色を明るくしておく。

王妃様のマナー教室が始まりました。姿勢から、立ち居振舞い、お茶の頂き方からお話の仕方まで。

幸いなことに私の存在は秘密なのでメイドさんにお風呂に入れられたりコルセットでぎゅうぎゅうされることはなかった。

元の世界のマナーと差程変わらないみたい。
今まで読んだ異世界モノに出てきたご令嬢や悪役令嬢を思いだしながら、少し普段の動きに気を付けて優雅さを足したら誉められた。

「トーカさん素晴らしいわ! 元の世界では貴族のご令嬢だったのかしら?」

嬉しい。こんなに誉めてもらえるとは。きっと細かい事をいうと本当はもう少しなところが多いのだろうけれど、王妃様は褒めて伸ばすタイプみたい。

褒められるのは嬉しいのでホホホと扇子で口元を隠しながら笑う。すぐ調子に乗るんです私。

「ドレスを着せたいわ……どうにかならないかしら?」

ポツリと恐ろしい呟きが聞こえて来る。

どうやら今日教えようとしていた範囲をクリアしたみたい。王妃様の教え方が上手だったのか思いのほか楽しかった。

私は1度姿を消して、王妃様がメイドさんにお菓子を持ってきてもらいメイドさんには下がってもらう。
そして王妃様が紅茶を入れてくれた。

美味しい。ホッと一息つき身体の力を抜く。

お菓子も美味しく頂きそろそろ帰ろうかと、三毛猫さんをみるとジッとこちらを見つめている。どうしたのだろう?

三毛猫さんと帰ろうと思い立ち上がるとクラリと視界が傾く。

「トーカさん? 大丈夫?」

王妃様が心配している。大丈夫ですと言いたいけれど、何かおかしい。
ゾクゾクと寒いような服を脱ぎたくなるほど暑いような……

まさか……と思い額に触れると熱い。熱がある。いつから? どうして? ……まさか……知恵熱?


ヒール…… 効かない 

「ヒール……」 効かない 


どうして…………

身体がダルくて動けなくなる。そのまま床に倒れこむ。

「トーカさん! どうしたの!? トーカさんっ!」

王妃様が慌てている。どんな時も取り乱してはいけないってさっきマナー教室で言っていたのに……本当に心配してくれている。嬉しい。

家族に会いたい。

「……お……母さ…………」


三毛猫さんがトコトコと近づいて来るのが見えて……それから私は意識を手放した…………


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