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しおりを挟む王妃様のお部屋を後にしてそろそろ一度家に帰ろうと思い周りを確認する。
結界を張って姿を消してクリーンをかけた制服を元の場所に戻して近くの窓から外へ出る。
フワリと浮かび山へ向かおうとしたら馬達が目に入った。広い柵の中で思い思い過ごしている。
その中に一際大きな馬がいる。もしかしてグリアかな?
そう思い近づいて見るとやっぱりそうだった。
驚かせないように少し離れた所に降りて結界を解く。
結界を解く前からこちらに向かって歩いて来たような気がするけれど気のせいかな?
両手を伸ばすと顔をスリスリしてくる。可愛い。
後ろからもう一頭私の方に顎を乗せてくる。ノクトの愛馬メイヒアだ。可愛い。
パカパカと他のコ達も寄ってくる。みんな可愛い。
いつも頑張ってくれている君たちにはこれだっ!
「ヒール」
みんなケガには気を付けてね。と気が済むまで撫でさせてもらってから再び家に向かう。
ただいま、と家に着くといつも通り三毛猫さんがお出迎えしてくれる。可愛い。
そろそろ夕食の準備かな。甘いもの食べたばかりでお腹空いていないけど……作っているうちに食べたくなるかも。
作りながらお城での事を思い出す。
使用人さん達からは悪い噂は聞かなかったけれど、没落や追放された元貴族達の事と隣国との関係が少し気になる。逆恨みされてなければいいけれど。
お隣さんはどんな国なんだろう。
そろそろこの世界についてちゃんと知らなければいけないかも。誰か教えてくれる人を紹介してもらえるか聞いてみようかな。
でも私の年で基礎からとなると……国外から来た設定にしても常識無さすぎと思われそう。
……まずは本と地図を借りてみよう。
それにしても華やかなお茶会だったなぁ。
またメイドさんに紛れてお城のお仕事体験もしてみたいかも。私の変装技術もなかなかのものだしバレることは無さそうだし。
お馬さん達にも会えるし!
いろいろ考えているうちにご飯も出来たので三毛猫さんに今日あったことを話ながら一緒に食べる。
食後のお茶を飲みながら三毛猫さんをナデナデして一息ついてからお城に向かう。
今日はバルコニーの窓が開いている。降り立つとすぐにノバルトが出てきてくれた。もう慣れてきました。
「今晩は、トウカ。皆を呼ぶから少し待っていてくれないか」
「今晩は、ノバルト。突然お邪魔してすみません。こちらは準備ができていますのでいつでも大丈夫です。もし皆さんのご都合が合わない様でしたらまた日を改めますので」
ノバルトは頷くと奥の仮眠室に案内してくれた。
仮眠室には小さなテーブルと椅子があり、ノバルトが紅茶をいれて持って来てくれた。
しばらくすると皆さんが来てくれたようで、ノバルトに呼ばれ部屋を出ると全員揃っていた。
突然来てしまったことをお詫びして、集まってくれたことにお礼をしてから説明を始める。
「もしお許し頂けるなら、私の家とお城をゲート……ドアで繋ごうと思います」
王妃様とノバルト以外は ? な表情。
ノバルトが補足してくれる。
「トウカの家と城にドアを作り行き来出来るようにするということか。どういう仕組みかは解らないが、ドアを開ければお互いの家に繋がるのか。そうすればトウカの家の場所を知られることもないし、我々がトウカの家にも行けるということかな」
最後の一言をイタズラっぽく言われた。あ、そういうつもりではなくてですね、私が呼び出されるんですよね? 王族はうちになんて来ないですよね? ね?
いろいろ言いたい事があり言葉が出ずハクハクしている間にノシュカトが
「それは嬉しいです! リライを見に行きたいし、他の植物も! それから……またトーカの家でご飯を一緒に食べたいです」
可愛く言われた。可愛い。
「トーカのご飯はうまいのか? それなら俺も行く。それから熊も遊びに来ると言っていたな。1度手合わせしてみたいな」
ノクトはノクトだった。
「良ければまたピクニックをしたい……ミケネコサンとグリアも一緒に……」
オリバーー! 勇気を出して言ってくれたんだね……
未だに恐る恐るな感じが私の母性を……くぅっ
こうなったらポストの事はしっかり伝えておかないと!
「ドアには手紙を入れるポストもついていますので先触れを出せるようにしておきます。伺う際は必ずご連絡いたします」
だからそちらもそうしてくださいね――。それから、
「どちらのドアにも鍵がありますので、指定された日時に開けて通れるようにして頂ければと思います」
必死に説明をするとノバルトがクスクスと笑う。
「……すまない。困らせる気はなかったのだが私達もそうできたら嬉しい」
「そうねぇ。私もトーカさんのお家に遊びに行きたいわ」
王妃様の援護射撃…………
陛下をチラリ……困ったような笑顔が可愛い……じゃなくて!
よし! 一度話を変えよう。
「あの、この世界の事を知りたいのですが本や地図など貸し出して頂く事は可能ですか? もしくは買うことが出来るお店を教えて頂ければ……」
「本は貴重な物だけれど貸し出し出来るものもあるわ。地図は詳しく書かれたものがとても少ないの。街で売られているものもあるけれどかなり大雑把なものよ」
それなら、と王妃様が続けて
「息子達とオリバーが交代でトーカさんのお家に本と地図を持って行って教えるというのはどうかしら? 教える人がいた方が早く覚えられるわ」
「それはいい考えですね」
本当にそうかなノシュカトさん。
「仕方がない、教えてやる」
嬉しそうに言うんじゃない俺様ノクト様。
「わた……俺もいいのだろうか……解りやすく教えられるよう努力する」
努力の人オリバー。
「私も協力させてもらえるかな。トウカが早くこの世界に馴染んでくれるように」
お兄さん。
「決まりね! もちろん私も協力するわ。万が一の事もあるしマナーやレディーの振る舞いは任せてちょうだい」
王妃様……。
あれ? 私この世界の事が知りたかっただけなのに皆うちに来ることになっていません?
陛下をチラリ……困ったような笑顔が……じゃなくて!
なぜこうなった………
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