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52 ノヴァルト

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 ふと、外が気になり窓を見る。

トウカを見つけた。思っていたより早く来てくれたようだがノシュカトに何かあったのだろうか。

部屋の中に入ってもらい、トウカが姿を現すと隣にはノシュカトもいる。

あぁ。無事意識が戻って良かった。

ノシュカトを抱き締める。温かい……生きていて本当に良かった。

トウカも抱き締め礼を言う。

「無事に弟さんを連れてこられて良かったです。色々と説明をしたいのですが、急な事で申し訳ないのですが、本日はご家族皆様と騎士団長のオリバーはお城にいらっしゃいますか?」

私達家族にトウカの事を話してくれる覚悟を決めてきてくれたらしい。
それにしてもオリバーとも知り合っていたとは……という事はおそらくノクトとも会っているだろう。
討伐でカーティス領に行ったときか。

これで帰って来たときの2人の変化に納得がいく。

夜ならば皆揃うと伝えると一度家に戻ると言う。

ミケネコサンとは猫のことだろうか……それからキツネ達とご飯を食べてから戻って来るらしい。

昨日来た頃に来るようなのでこちらも夕食後になる。

トウカが窓から帰り、戻って来るまでにノシュカトに詳しい経緯きくことにする。

だが、まずは皆にノシュカトの無事を知らせよう。

ノシュカトが正門からも裏門からも入らずに突然城内に現れると騒がれるので、両親とノクトとオリバーには私の執務室へ来てもらう。

トウカには夜ならば皆揃うと言ったが、一度私とノシュカトから彼女と出会った経緯と私達が知っている彼女の事を皆に話しておこうと思った。

ノクトとオリバーはトウカに会っているだろうが、両親は違う。
私達がこれから話す内容と、今夜トウカが話す内容の辻褄が合えば彼女の話しも信じてくれるだろう。

トウカは話す覚悟を決めてくれた。私も皆に彼女を受け入れて欲しい。


ノシュカトには仮眠室に再び入ってもらい、使用人を呼ぶ。
急ぎの用なのでなるべく早く私の執務室に来て欲しい、と伝えてもらう。

まずは両親が来た。次いでノクトとオリバーが一緒に執務室へ入って来る。

お茶を入れてもらい、使用人には席を外してもらう。

「兄上、急ぎの用とは何ですか? 雨が上がったので明日、明るくなり次第ノシュカトを探しに行く予定をオリバーと組んでいたのですが」

オリバーも頷づく。

父上も母上も普段は見せない不安そうな表情をしている。

「父上、母上、ノクト、オリバー約束して欲しい。これから話すことを口外しないと。ノシュカトにも関係があることです」

「ノヴァルト一体何なのだ。ノシュカトは見つかったのか?」

「……あなたがそう言うのならよっぽどの事なのでしょう。あなたの言う通り口外はしないし……あなた1人には背負わせないわ」

さすが母上。

私と母上はこういう所が似ている。
父上もわかっているからか母上がそう言うならと納得してくれた。

ノクトとオリバーも頷く。

「ノシュカト、こちらへ来てくれ」

奥の部屋からノシュカトが出てきて皆驚いている。

母上が歩みよりノシュカトを抱きしめ無事を確認しながら、

「あぁ! ノシュカト……無事で……無事で良かった」

「母上、父上も心配かけてすみません。泣かないで……」

父上もノシュカトを母上ごと抱きしめている。

ノクトとオリバーは驚きこちらを見ている。
説明しようと私は頷き、ソファーにかけてもらう。

まずはノシュカトに私もまだ聞いていない事の経緯を話してもらう。

子キツネを助けようとして密猟者が仕掛けた落とし穴に落ちたこと。その際右足の足首を骨折してしまい、さらに落とし穴の底には短い槍がいくつも仕掛けられていて、その内の1本が右足の太ももに刺さり動けなくなってしまった事を話してくれた。

「これを見てください」

ノシュカトが何かを取り出す。
それは山へ向かう日に着ていた服だった。

話の通り右の太もも部分に穴が空き突き抜けている。

母上の顔が青ざめている。ノシュカトのケガは本来ならば生きてはいない、生きて帰れたとしても右足を失うようなものだった。

こんな短期間でどうにかなるケガではないのに、ノシュカトの足は綺麗に治っているようにみえる。
皆同じことを思っているようだが、まずはノシュカトの話を聞くことにする。


その状態で2日間、穴から出られなかったのだ。キツネ達が助けようとしてくれた様で、木の実やムカの葉まで持って来てくれ何とか生きていられたようだった。

しかし限界はくる。意識が途切れ途切れになり深い眠りについてしまい次に目が覚めた時はベッドの上だったという。

ここでノシュカトには少し休んでもらい、私が話を引き継ぐ。

私は幼い日の事を思い出す。あの頃と全く見た目の変わらないトウカの事を。

そこから話そう。父上も母上も当時の事は覚えているだろう。
これからあり得ない話が続くから順を追って話そう。

トウカはこの世界の理から外れている様で、この世界から愛されているようにも感じる。

まずはここにいる全員でトウカを受け入れ、トウカにも受け入れてもらいたい。


私の知っている彼女の事を話そう。
熱に浮かされていたあの夜から今日の事までを……


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