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 ノシュカトさんがあの落とし穴に居る。

いや、そんなはずはない。私の家に居るはずだしケガも治している。

夢かな。どうしてノシュカトさんが目覚めないのかヒントがあったりするかも。

とりあえずノシュカトさんと話してみる。

ケガをした時の感覚を覚えていて怖いみたい。

あんな状態の自分の足を見たのだ。治したとしても心が追い付いていないのだろう。

それでも帰りたい、みんなに会いたいと思っているから大丈夫なはず。


いつの間にかキラキラと光の粒が漂っている。


手を取り、頭を撫でながら少しずつ不安を取り除いて、起きようと誘ってみる。

起きたら私とも会えるかと聞いてくる。

……可愛いじゃないか。

そろそろ朝かもしれない。お腹が空いてきた。

そう言うと笑われた…………どうせ夢よ。

それから久しくしていない瞬間移動が発動する時のように光が強くなり、眩しくて私は目が覚めた。

ボンヤリとノシュカトさんの方を見ると目があった。


…………目があった?


「おはよう」

とイケメンさんが微笑む。……っまぶしっ。

私も挨拶を返そうとした瞬間……物凄く大きな音でお腹が鳴った。

…………………………

は、恥ずかしいぃぃぃ――――――!!

顔が熱い!

チラリと彼を見ると向こうを向いて肩を震わせている。

「ご、ご飯! 朝ごはん用意します! キツネさん達ここをお願いします!」

任せてという顔でこちらをみるキツネさん達を撫でて部屋を出る。

出た瞬間部屋からクスクスと笑い声が聞こえる。

笑えばいいさ……笑いかたがノバルトさんそっくり。さすが兄弟。

キッチンへ向かい三毛猫さんも起きていたので挨拶をする。
三毛猫さんを撫でて気持ちを落ち着かせる。
いつもありがとう、三毛猫さん。

さて、私はサンドイッチを食べるとしてノシュカトさんはお粥がいいかな。4日間くらい飲まず食わずだったんだよね……
とりあえずレモン水を作り、塩と砂糖も少し入れたものを持って行こう。

コン コン コン

「はい」

おぉ……返事が返ってきた。彼は枕を背に上半身を起こしていた。

仕切り直そう。

「おはようございます。お体の具合はいかがですか?」

「おはよう……ございます。……助けていただきありがとうございます……」

笑い、堪えてません?

コホン、とノシュカトさんが咳払いをして続ける。

「貴方がいなければ僕は死んでいた。本当にありがとう」

そう言って微笑む彼はやっぱりノクトにも似ているしノバルトと同じ色の瞳をしている。

「貴方が助けてくれたこのコ達が知らせてくれたのですよ。お礼ならキツネさん達に言ってください」

「あぁ、お前達もありがとう。心配をかけたね」

イケメンとモフモフ……か。心のカメラで連写する。

そんなことしている場合じゃない。

「ご飯の前にこちらをどうぞ。レモン水に塩と砂糖を加えたものです。4、5日食事も水分も取れない状況だったので先にこちらを飲んで下さい。食事が出来たらまた持ってきます」

ノシュカトさんが一口飲み、美味しいと言って再びコップに口を着けた。
どうやら飲めそうなので、空になったコップにおかわりを注いでご飯を作りにキッチンへ戻る。

落ち着いたら右足の状態を確認させてもらおう。

お米を研いで卵粥を作る。

お粥を少し冷ましている間に、サンドイッチと三毛猫さんのご飯とキツネさん達用の果物も切り分ける。

三毛猫さんのお皿に先にご飯を分けて、私のサンドイッチもテーブルに置いておく。

「三毛猫さん、待たせてごめんね。先に食べてていいよ」

「ニャ――ン」

三毛猫さんのいただきますを聞いてからノシュカトさんとキツネさん達のご飯をお盆に乗せて、またお腹が鳴りそうだったので、レモン水を一杯飲んでから運ぶ。

ノックをして部屋に入るとキツネさん達がベッドの上にみんな乗っている。

本当に大丈夫? と言うように彼の顔や足に顔を近づけていてノシュカトさんはくすぐったそうに笑っている。

私もそのベッドにダイブしたい。

そう思った瞬間、キツネさん達が一斉にこっちをみる。

おぅ……何かごめん。

「お待たせしました」

子キツネさん達が寄ってくる。可愛いなぁ。お腹空いたかぁ。

「キツネさん達もここで食べていいですか?」

「もちろんだよ。ありがとうございます。貴方は………」

彼はハッとした表情をして

「大変失礼をしました。まだ名前を名乗っていませんでした。僕はノシュカトと申します」

……しまったぁ また王族に先に名乗らせちゃった。
私はノシュカトの名前を知っているから気が回らなかった。
フルネームを名乗らなかったのは私が気を遣わないようにと考えての事かな……

「こちらこそ、申し遅れました。私はトウカと申します。ノシュカトさん、お粥なのですがご飯は食べられそうですか?」

「トーカさん、私の事はノシュカトと呼んでください。お腹はペコペコなので頂いてもいいですか」

私もこのパターンには慣れてきたのです。

「それではノシュカト……と呼ばせていただきます。私の事はトウカと呼んでください。お粥は1人でも食べられそうですか?」

……………………

何だろうこの間は。キツネさん達の耳がピクピクしてる。

可愛い。

「……少し身体が怠くて腕を上げにくいので……申し訳ないけれどトーカ、食べさせてもらえないだろうか?」

4日間寝た状態だったから身体が動かし難くなっているのかな?

「もちろんいいですよ。身体はすぐに元通りになるので心配しないでご飯をしっかり食べましょう」

「ありがとう」

そう言って微笑む彼は儚げな天使のよう。
フワフワの髪の毛も可愛い。
本当にノクトの弟かな?

ベッドの横に椅子を移動して座る。

お粥をスプーンですくい、食べられるくらいに冷めていると思うけど一応フーフーしておく。

「はい、あ――ん」

あ、弟にするみたいにしちゃった。

それでもノシュカトは素直に口を開けてパクリと食べてくれた。可愛い。

モグモグしている頬が少しピンクに染まっているけど熱かったかな。


「美味しい」


そう言って幸せそうに笑う彼を見て、私は親鳥が如くお粥を彼の口に運びたくなるのだった。


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