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 パジャマはやっぱりいい!

このまま今日1日中パジャマでいてもいいくらい。

でも今日は庭仕事をするので、私が持っている服の中で2番目に楽チンな作業着に着替える。

植物図鑑によると、湖で三毛猫さんが教えてくれた泡のでる葉っぱは「パプル」というらしい。
あの時は助かったなぁ。

昨日山で図鑑を見ながら見つけた、麻酔効果のある水色の厚みのあるブヨブヨした葉っぱ「ムカの葉」も希少なものだったので根っこから採取してきた。

綿花のようにワタワタと咲いていたのは「ワッテメン」綿の部分が湿っていて、消毒効果があるみたい。
湿った綿のままでも使えるし、絞って消毒液としても使えるらしい。

黄色いチューリップのような花は「バリバナ」水で煮詰めると軟膏のようなものになると書いてある。

白い花びらのカモミールに似た花は「アンミル」といってカモミールと同じくリラックス効果のあるハーブティーも作れるようなので採取してきた。

赤いすずらんのような丸い花が咲く植物は「リライ」といい、すでに絶滅してしまったと書いてある。

この花から流れる水滴を小瓶一本分ほど集めると、万能薬のような効果があるらしい。

異世界風にいうとポーションのようなものだろうか。

さらに丸い花の中に水滴を溜めて花ごと口に含むと身体の欠損部位も治ると言われていたらしいが本当かどうかはわからない。

高値で取引されたので乱獲され極端に数が減り絶滅したとされているみたい。

増やしたらトラブルの元になりそうだけど、山なら人は来ないしいいよね。

そして「バルラ」は、みた感じバラの花で、「アロア」はアロエみたい。
この2種類は化粧水を作るために育ててみようと思う。

アロアはアロエと同じく火傷にもいいみたいだから塗り薬に出来るかついでに試してみようかな。

とりあえずこの7種類の植物を温室で増やしてみよう。

温室の一角を耕し、間隔を開けて植えてみる。

植物を育てる力を初めて試してみようと思ったけど、どうやるの?

…………イメージしてみよう。

手をかざして植物の生命力の強さとどんどん増えて広がって行く感じ。


………………すっごい増えた。


外に出て庭の一角を耕す。
土魔法で根っこを傷付けないように掘り起こし、風魔法も使い外の畑に移動する。

7種類の一部はそれぞれ温室に残しておく。
この世界の気候がまだ良くわからないし、今は春から初夏くらいの感じがするけど、突然冬がきたりするかもしれない。
年中育てられるようにしておきたい。

外に作った畑は広いのでどんどん増やす。

お家の周りは花壇にして、もともとここに生えていた花を植え直した。


増やした植物を採取してお家に入る。
私の寝室の向かいの部屋を作業部屋にすることにした。


ムカの葉は葉っぱに麻酔効果のある水分が多量に含まれていてブヨブヨしているらしいので、風魔法を使って絞りとる。
絞った液体を濾して昨日街で買っておいた蓋付きの大きなガラス容器に入れていく。
小瓶も買ってあるので、持ち歩く時はそちらに移すつもり。

ワッテメンも同じ要領で絞って濾したものと、綿に染み込んだままのものを別々に大きなガラス容器に入れていく。
絞った綿は暖炉に使えそうなのでとっておく。

ガラス容器には間違えないようにラベルも張っておこう。

バリバナは水と火魔法を使って煮詰めると、軟膏になった。
これはジャムのビンくらいの大きさの容器に入れていく。

アンミルは火魔法でゆっくり乾燥させてから大きなガラス容器に詰めていく。

リライからは1日に数滴しか取れないようなので、結界で花を1つずつ包み、しずくが溢れないようにして鈴の形のような花の中に溜まるようにする。

水分が溜まったら砂糖を溶かして花をコーティングしてあめ玉みたいにしてみようと思う。

バルラは花びらを煮てハーブティーのようにしてアロアから絞った少しとろみのある液体を混ぜる。
それを濾して冷まして小瓶に入れて化粧水の出来上がり。
これは私の寝室においておこう。

庭仕事と増やした植物でやってみたかった事はできたかな。

クリーンをかけてワンピースに着替える。
せっかく東屋を作ったから少し遅めのお昼ごはんを三毛猫さんと外で食べよう。

ランチセットを東屋に運び、さっき乾燥させたカモミールで早速お茶を入れる。いい香り。

一仕事終えた後のご飯は美味しいなぁ……

「ニャ――――」
「? どうしたの? …………あ、熊さん」

熊さんが近づいてくる。

「明るい時にくるのは初めてだねぇ」
「グルルルゥ」

「今日はちょっとお庭をいじってみたんだよ。遊びに来てくれて嬉しい」
「ガゥ」

可愛い。山で植物採取のついでに採ってきた果物をあげよう。
三毛猫さんと熊さんももう仲良し。
みんなでゴロゴロ私はモフモフも堪能した。
しばらくすると、熊さんは庭を一周して森へ帰って行った。



この場所を誰にも教えるつもりはないけど、このまま元の世界に帰れなければ、私はずっとここに一人……なのかな。



庭を綺麗にしても東屋を作っても誰かが来ることはないと思うと少しだけ虚しくなる…………





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