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しおりを挟むオリバーと教会で別れる前、一応髪のことを誰にも言わないで欲しいとお願いしておいた。
グリアに跨がるオリバーを足が長いなぁ――と思いながら見送る。
「さて、これからどうしようか三毛猫さん」
どこか落ちついて過ごせる拠点……というか家が欲しい。
別に帰ることを諦めた訳ではないよ。ただ安心できる場所が欲しい。あとそろそろお風呂にも入りたいしお布団に入って寝たい。
私の髪や顔立ちそれに三毛猫さんの事もあるし出来れば人里離れた場所がいいなぁ。
裸では過ごさないけどそれくらいリラックスできる場所が欲しい。
ひとまず、
「今夜はどこで寝ようか」
「ニャーン」
あの丘は……誰か来そうだし……
「一旦森に戻ろうか」
「ニャン」
誰もいないことを確認して浮遊する。
かなり上空まで行き森へ向かう。
森が………黒い。真っ暗。そりゃそうだ森だもの。
あの湖だけは月明かりを反射してキラキラしている。
でも、湖も人が来ない訳じゃない。
空から森を見渡し、人が通る道から湖、湖からさらに奥へ目を向けると山がある。
そちら側なら人は来ないだろう。
山へ向かう道はなさそうだし、人が来るとしても湖までだと思う。何となく。
明るくなったらちゃんと確認してみよう。
道がなければ山に住むのもいいかも知れない。
ちょうどいい感じに枝を広げた木を見つけたので、今夜はそこで眠ることにする。
「今日は何だかいろいろあったねぇ」
一日を振り返ってみる。
女の子と初めて話した。セアラ、一生懸命で気が利いていいコだったなぁ。
オリバーもあんなに逞しいのに恐る恐る近ついて来る感じが可笑しくて可愛かった。
「いい出会いがあった一日だったね」
「ニャン!」
ただ、森の熊さんの事が頭から離れない。
人間のせいで…………
下の方で気配がする。
浮遊してゆっくり降りてみると、元はおそらくウサギだったもの達が3匹いる。
身体は汚れてボロボロに傷ついている。
初めて森を彷徨っていた時、三毛猫さんが威嚇して追い払ってくれていた小型の魔獣達だ。
あの時は全くわからなかった声が今ははっきりと聞こえる。
ポロポロと涙が溢れる。
ごめんね…………ごめん今の私にはこうすることしか出来ない。
3匹を光で包むイメージをする。
光に包まれた彼らは一瞬、元の可愛らしい姿になりやがて光の粒となり消えていった。
彼らはただ、正しく生きていただけだ。
自然の中では食物連鎖があるが、それが自然だ。
弱肉強食も自然の中ではあることだが、それを履き違えている人間がいるみたいだ。
木の上に戻り三毛猫さんを撫でる。
三毛猫さんはいつも寄り添ってくれる。
今夜はあったら便利な能力を考えてから寝ないと。
…………さて何がいいかな?
今日一日過ごして思い付いたことは……
とりあえず、結界みたいなものがあったら非常に助かる。
空を飛ぶ事を夢見ていた時から心配してた事がある。
虫が当たるのだ。少し低めに飛ぶとビシバシと。
空にお邪魔しているのは私なんだけど……申し訳ない……
結界欲しい。
この結界についてはいろいろ条件というか機能があれば便利だと思う。
結界内を外から見えなくするとか、悪意のあるものは入れないとか。
髪の色とか瞳の色も変えられたら便利だけど……できるかな。
あとは、マジックバッグで出し入れできる家が欲しい。
もしかしたら移動するかも知れないし、一から建てるつもりはない。
出来れば元の世界の基準で三毛猫さんも楽しんで住める仕様でお願いしたい。
それから東屋と温室も欲しい。
どれくらいの広さの土地が見つかるかわからないけど、持っておくだけ持っておきたい。
家を置く土地を整備する能力と土地を耕して作物や植物を育てられる能力もあるといいかも。
あとは水と火かな。近くに川や湖がなくても、着火材がなくても生活出来るように。
けっこう無理難題を願っているけど大丈夫かな。
三毛猫さんの体温を感じていたら眠くなってきた……
「明日は何をしようか………三毛猫さん………」
「ニャ――ン………」
朝起きたらさっき考えた能力が使えるか試してみよう……………ね……三毛猫さん…………
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