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 あの丘へ戻ってきました。

人のいないところまで歩きそこからひとっ飛び!

「三毛猫さ―ん三毛猫さ―ん!」

「ニャ――ン!」

ガサガサと繁みから出てきた。良かった! ちゃんと待っていてくれた。

それからひとしきり街での出来事を三毛猫さんに聞いてもらい、買ってきたお洋服も広げてみてもらった。

髪を隠すベールの被り方もみてもらった。
その間三毛猫さんは私を見つめ、フムフムと聞いてくれているような感じだ。ありがとう。可愛いねぇ。

日が傾き始めたこの時間からここまで来る人はいないよね?騎士様が来てるから夜までお祭り騒ぎが続くとセアラが言っていたし。

本当はお風呂にゆっくり浸かりたいところだけど、贅沢は言わない。
私には便利なクリーンがある。偉いぞ初日の私。

そしてありがとう今まで読んだ異世界モノの作者様。

クリーンをかけベールを外す。
髪がサラサラと風になびいて気持ちがいい。

毛繕いでいつもキレイにしているから必要ないかと思ったけど三毛猫さんにもクリーンをかけてみる。
気持ち良さそうにしているので大丈夫だったみたい。

買った物をマジックバックにしまい、街をみる。

「ねぇ三毛猫さん……あの森の熊さんがあんな風になってしまったのは人間のせいなんだって………」

「………」

「あの時の熊さんの気持ち………どれだけひどい事をしたんだろうねぇ……」

「ニャ――・・・」

「……………………………」


「ご飯にしようか!」

「ニャン!」

「ウフフ 三毛猫さんのもちゃんとあるんだよぉ! お皿もね!」

「ニャンニャ―ン!」

いそいそと準備をする。敷物を広げてその上に靴を脱いで座り私と三毛猫さんのお皿をおく。
買ってきたバーガーみたいなものを私のお皿に乗せ、お魚を三毛猫さんのお皿に乗せる。お水用のお皿にお水も入れる。

さて! いただきましょうかという時に、三毛猫さんが警戒体制に入る。

「三毛猫さん? 何かいるの?」

三毛猫さんが一点を見つめている。
すると木のかげから出て来たのは大きい馬……と人……だれ?

この世界で名前を知っているのは二人だけなので誰に会ってもだれ? なんだけど……少し笑いそうになる。

ゆっくりと近づいて来る一頭と一人。

うわぁ………どっちも美丈夫だなぁ。

と思いながらみていると5m程手前で止まった……アレ? 警戒されちゃったかな? そんな舐めるようにみてたつもりはないんだけど……たぶん……いやだってどっちもスゴいんだよ!

ごめんなさい。警戒しないで。

怖くないよ――と微笑んでみる。向こうは狼狽える。

ゴメンて!

三毛猫さんも警戒をといて毛繕いしてる。大丈夫なんだね。じゃあ話しかけてみようじゃないか。

「あの……何か……?」

「……もう日が暮れます。こんなところで一人で何をしているのですか?」

深く静かなステキな声でごもっともな事を言われてしまった。

「夕食にしようかと……たまには外で」

慌てて取り繕う……ど、どうしよう!?

「そうですか……そちらは猫ですか? 見たことがない毛色ですね」

………見たことがない!? これが三毛猫さんが街に行かなかった理由か―――!
じゃあどんなネコがいるの?

話題を変えよう。今すぐに。

「あなたは何故ここに?」

「…………………失礼しました。名乗っていませんでしたね。私はオリバーといいます。ここは好きな場所でよく来るんです。」

オリバーさん。ラフな格好をしているけど、生地がセアラのお店でみた上等コーナーにありそうな感じ。
それから立派なあの馬。絶対平民ではなさそう。

そして何度も言うが凄い身体だ。赤茶色の髪にグリーンの瞳で整っているが少し可愛くもみえる顔立ちにムキムキの身体………

「オリバーさんですか。私はトウカといいます。先に場所を取ってしまい申し訳ありません。すぐに避けますので少しお待ちください。」

ご飯は森の湖で食べてもいいしね。

「いえ、私の方が後に来たのでト―カさんはそのまま続けて下さい。終わりましたら家まで送りますので」

紳士だ。美丈夫の紳士と馬の美丈夫。でも今は困る!
そして初めて呼び捨て要求されなかった。

どうしよう……食べている間ここにいるのか……こうなったら……

「あの……良ければ一緒に座りませんか? あと馬触ってもいいですか?」

全く関係ないお願いを同時にする事で何となく断り難くなる気がする。

「っ!? あ、あぁ…」

ほら!
馬を引きこちらへ来る。近くで見ると凄いよどちらも!

「立派な馬ですね! それにとってもキレイ……キレイだねぇ、お名前は何ていうのかなぁ?」

「グリアです」

……何かすみません。

「グリア――いいこだね――お利口だね――よしよ――し」

撫でると顔を私の肩に乗せて来る。可愛い!
たくさん撫でさせてもらった。満足。

三毛猫さんが足元をウロウロし始めた。
そうだ。ご飯にしよう。

「三毛猫さんお待たせ、ご飯にしようね」

「ニャン」

「オリバーさんもこちらへどうぞ。あ、敷物の上は靴を脱いでくださいね」

オリバーさんが靴を脱いでいる間、私はバーガーをナイフで半分に切ってもう一枚お皿を出してオリバーさんの前に出す。もう食べてきたかもしれないし、逆に全然足りない
かもしれないけど、一緒に座るのに何も出さないのは何かね……

平民ではない人にこれは失礼かなと思ったけど、名前しか名乗らなかったし、もう気付いていない振りでいこうと思う。
私の敷物の上では無礼講と言うことで。

「…………これはトーカさんのご飯ですよね。突然お邪魔してしまい申し訳ない。良ければフルーツを持って来たのでこちらもどうぞ。」

おぉ! 美味しそう。ブドウ、イチゴ、梨……みたいなの。

「わぁ! ありがとうございます! 何だか華やかな食卓になりましたね」

三毛猫さんがジッッと魚を見つめている。急がなければ。

「では!い………どうぞ召し上がって下さい」

三毛猫さん待たせてごめんね。

いただきます。は心の中で言い、ようやく食事が始まる。

ふと、オリバーさんを見ると目が合う。

そこで私はようやく気が付いた………………


私、今ベールしてないしクリーンでメイクも落ちてスッピンだということに――――


 
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