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しおりを挟むあまりの光の強さに三毛猫さんを強く抱き締めた。
どこからか激しい怒りと悲しみ悔しさがごちゃ混ぜになったような感情が流れてきて、それは何故かわからないけれど、あの巨大熊から溢れているような気がしてまた涙がこぼれる。
涙で視界が歪み瞬きをした瞬間、強い風が吹く。
目を開けると景色が変わっていた。
(うわぁ…………月が大きくてキレイ……)
遮るものが何もなく、広い夜空が見える。
そして、今度は………また森が見える。
ただし下の方に、だ。
またどこかの高所に降り立ったのか………とほとんど諦めながらも覚悟を決めて着地の体勢をとる。
そして、着地………
……………………………しない!!
落ちるぅ!!
足場がない!真下には湖が見えるが…結構な高さだ
なるべく身体に負担のかからない飛び込みの体勢はどうだったか……
いや!三毛猫さんも一緒だ!
あぁ……………こんな時、空が飛べたら………
ごめん……三毛猫さん………ここまでかも……
諦めかけた瞬間、落下速度が落ちた
………………え?
ん?
ゆっくりと落ちていく。
重力に逆らっている感じが物凄くする。
長い髪もゆらゆらと私の目線の辺りを漂っている。
キラキラは相変わらずキラキラしている。
三毛猫さんを見るとクリクリした可愛い目で私を見上げている。
落ち着いているようで良かった。可愛い。
しかし私は落ち着いていられない。
探し求めていた水場だが、ゆっくりとはいえそのど真ん中目掛けて落ちている。
フワフワと落ちながら考える。
三毛猫さんを濡らしてはいけない、と。
深さもわからないし、何がいるかもわからない。
この力は私のいうことを聞いてくれるのだろうか。
この短期間でまた黒歴史を更新するのは嫌だ。
心なしかゆっくり回転しながら落ちている。
全然コントロールできる気がしない。
そもそもどうやるの。
湖面が近づいてくる。
でも! やってやんよ! 三毛猫さんのために!
「フライ!」
とか言おうとしたけど、まずはイメージしてみよう。
傷は浅い方がいいに決まっている。
湖面に立つ感じ。
そのまま歩いて岸まで行ければなおいい。
よし!!
湖面に爪先が着く……と一瞬跳ね返る感覚があり爪先が着くかつかないかくらいで浮いている。
爪先を湖面に着けると波紋で揺れる。美しい。
三毛猫さんが腕の中でもぞもぞと動く。
そうだ、早く岸に向かわなければ。
行けるかな?………思ってたのと違う感じで浮いてるけど…
とりあえず、少しジャンプする感じで
ト―――――ンとバレリーナのごとく一歩踏み出してみる。
できた。足跡のように波紋が広がる。
そのまま続けて
ト―――――ント―――――ント―――――ン クルクル
調子に乗って回転もしてみた。
テレビで見た無重力空間はこんな感じなんだろうな。
楽しい。
このまま岸に向かい無事に着地できた。
「三毛猫さん、無地に着いたねぇ」
「ニャン」(可愛い)
すると三毛猫さんはトコトコ歩きだし白っぽい葉っぱの前で止まりこちらを振り向く。
「ん? 何かにゃ? 食べられるのかにゃ?」
この話し方は聞き流して欲しい。
三毛猫さんは葉っぱを1枚噛みきるとそれを咥えて湖へ向かう。
どうしたどうした。
葉っぱを水につけて両前足でフミフミしだした。
何してるの? 可愛いんですけど……好きっ!!
かわいいねぇかわいいねぇとしばらくみていると、三毛猫さんの両前足からブクブクと泡が立ち始める………
アワ!?
水があり泡がある……つまり……
「髪も身体も洗える―――!!」
嬉しいぃ―!! さっそく! と思ったけど、一応周りをキョロキョロ。
静かだ。
夜明けまではまだ少しありそうだけど、裸になるのは躊躇われる。
それにあの突然発動する移動能力。
鞄どうしよう。
すると三毛猫さんがまたトコトコと木が生い茂っている方に歩いていく。
ついて行くと、ロープのように長―いツタの前でこちらを見ている。
そうか、鞄と手首か足首をツタで繋いでおけばいいのか。
三毛猫さんありがとう!!
かなり長目のツタを手に入れ、片端を鞄に結びつける。
全身洗うと服も洗いたくなるだろうから服のまま入ってもいいかと思ったけどやっぱり脱ぐ事にする。
服の中にはお尻まで隠れる黒のスリップを着ているのでとりあえずそれ1枚になる。
脱いだ服をあの葉っぱの泡で洗う。
キレイな湖だけどこの泡大丈夫だよね?自然環境的に…
葉っぱから出た泡だし…きっと大丈夫…
洗った服はツタに絡めて干しておく。
どうせこれから濡れるし一応パンツだけははいておく。
その方が落ち着く。
三毛猫さんには鞄の上で寝ててもらう。
そして、私の足首にツタのもう一方を結びつける。
これで準備万端!
いろいろありすぎた……疲れているはずなのに眠くないのはきっと無意識に興奮しているせいだろう。
お風呂(水だけど)で疲れを洗い流したい。
その後の事はそれから考えよう。
私は三毛猫さんをひと撫でしてから湖へ向かった。
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