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しおりを挟む「森かぁ」
異世界ならようやくスタートラインかな。
私の周りのキラキラも消えたようだ。
何だったの。
とりあえず鞄から靴を出して履こう。
私はいつもオフィスカジュアルにペタンコ靴を履いていたのでヒールはついていない。
しかし、この森である。
スニーカーか登山靴が欲しい。
今はまだ夜だから、歩き回るのは明るくなってからにしよう。
何がいるかわからないし、転んで怪我したくない。
いろいろありすぎてクタクタだ。お腹もペコペコだ。
そして眠い。
寒いわけではないけれど、鞄からカーディガンを出して着る。虫とかね。
それから登りやすそうな木を見つけて登りたかったけど無理でした。木登りって意外と難しい。
木の根本にいい感じの窪みがあったからそこで眠ることにする。
落ち着く場所を見つけて、今日の事を考えてみる。
あの真っ暗な空間は何だったのか。
ここは地球なのか。
なぜお城の屋根の上だったのか。
キラキラしていたのは何だったのか。
あの王子っポイ人は王子様なのか。
言葉は通じるのか。
どうやってこの森にきたのか。
考えても分からないことばかりだ。
人がいることはわかったのでこの先誰かにあった時、言葉は通じて欲しい。あと読み書き。
もし異世界で魔法とかあるなら自由に空を飛んでみたい!
小さい頃からの夢だ。
治癒の能力もあったら便利かなぁ……靴擦れとかすぐ治せる。小さい傷でも痛みが伴うと動けなくなるし、知らない世界でのケガや病気は怖い。
それからクリーン? 的な洗浄能力も欲しい。傷口の洗浄や、ただ単にお風呂に入れない時のために。
服まで綺麗になったらすごく嬉しい。
あとは…お金の稼ぎ方がわからないので、当面の衣食住の生活費……は森にいるから関係ないかあぁ……お腹は空くけど……
それから………私専用のマジックバック……異世界定番あると便利ってやつ。
女一人旅だし………重いものとか……お金とか……安全に持ち歩き……たい………………
……あぁ……ネコにさわりたい。。
最後にしっかり現実逃避をしてから私は眠りに落ちた。
――――ニャ――― ―― ニャ―――――ン
ん―――――ネコォ…………?
まだ眠くて目が開けられない……でも触りたいので手探りで辺りを探って見る。
手触りで昨日の事を思い出す。
目が覚めたら知らない天井……ではなくマンションの自分のベッドの上……でもなく、森の中。
とりあえず、ネコは何処かな? とキョロキョロしていると、いた!!
あのネコスポットでよく会う三毛猫さんがいる!
知ってる顔に会えてうーれーしーいー!
三毛猫さんは私に近づいてきて触らせてくれる。泣いちゃいそう。
一緒にこっちに来ちゃったのかな?ケガはないかな?
私が満足するまで触らせてくれる三毛猫さん、大好きだ。
三毛猫さんを撫でながら周囲を確認する。明るくなっても森だなぁ。
お腹空いた……と思っていると三毛猫さんが立ち上がって歩き始めた。
ついておいでと言うように、こちらを振り返りながら進むのでついていくことにした。お尻が可愛い。
少し歩いてわかった事………ここって………
「異世界だぁ―――――――――――!!」
(だぁ…だぁ……だぁ………)
三毛猫さん驚かせてごめんなさい。叫ばずにはいられなかった。
なぜわかったか、見たことのない色の草花、狂暴そうな顔をした小動物…三毛猫さんが「シャァ―――ッ!」したら散っていったんだ………大好き………。
しばらく歩いていると三毛猫さんが1本の木の前で止まり、こちらを振り返る。
木を見るとリンゴのような赤い実がなっている。
美味しそう! しかもそんなに高さのある木じゃないから何とか採れそう。
三毛猫さんが木に登り始め、枝の先まで歩いていく。
すると枝がしなり背伸びすると赤い実が採れる位置まで下がってきた。
こんな素晴らしいネコ様がいるだろうか。君が神か。
有り難くその枝の実をいただいた。届くところに4つあったので4つ採らせてもらった。
とりあえず、持っていたハンカチで実を拭きかじってみる。
うん、リンゴ。
おいしい…泣きそう。三毛猫さんは寝転がって側に居てくれている。
1つ食べ終わると少し落ち着いた。
明るいうちに水も確保したいところだけれど、1度自分の持ち物を確認しておこう。
A4サイズの肩掛けと斜め掛けができるベルトの付いた黒い鞄。何せ仕事帰りだったからサバイバルに役立ちそうなものは期待出来ないが現状把握をしなければ。
お財布にスマホ、さっき使ったハンカチ、
ポケットティッシュ、替えのストッキング、
フェイスタオル、歯ブラシセット、ポーチ、
メイクセット、ヘアゴム、ヘアブラシ、
ソーイングセット、筆記用具、ノート、
小型のライト、防犯ブザー、
解熱鎮痛剤、風邪薬、絆創膏、のど飴、
ペットボトルの水(残り半分くらい)、
折り畳み傘、折り畳みエコバッグ。
ペットボトルの水……チビチビ飲もう。
時々、地震とか何かあって自宅に帰れなくなる事を考えて、何となく鞄に入れて備えてるつもりになっていたけれど……
全然足りてない!!平和ボケもいいところだ………
スマホは電源は入っているけど電波はゼロ。期待はしていなかったのですぐに電源オフにする。夜役に立つかもしれないし。
一先ず荷物を鞄に戻し、辺りを見渡し誰もいない事を確認する。
よし、いよいよあの言葉を言うときがきたようだ。
「ステータスオープン!」
からの
「ファイアーボール!」
顔は真っ赤である。誰も居なくても自分に返ってくるダメージが予想以上で……
三毛猫さんは変わらずゴロゴロしていたが、ふと顔をこちらに向けて「終わったか」とでも言いたげにジッと見つめてくる。
ごめんなさい。お待たせしました。
ふぅ………どうやら私に魔法は使えなさそうだ。
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