帝国防衛軍 復活-1950-

突撃隊長

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本編(戦争中期)

第20話:対馬海峡掃討作戦1

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1952年9月2日。駆逐艦「雪風」
この日、雪風は第二臨時掃海総隊の旗艦と第一駆逐戦隊の旗艦を兼任していた。第一駆逐戦隊は、済州島沖海戦の後、「響」及び「潮」が配備された。しかし、1951年7月に輸送船団を護衛中に潜水艦3隻以上の同時襲撃を受け、「雪風」が被雷大破、「潮」は被雷撃沈された。
後、アメリカから貸し出されたシムス級駆逐艦「DL-1」(元USS「ラッセル」)が「潮」の代わりとして編入され、「雪風」は修理中、予備役に編入され、2隻の駆逐隊となった。しかし、「DL-1」は訓練中の事故で大破、ドックに引っ込むこととなった。この事件から、「響」は訓練艦へと種別変更された。
第一駆逐戦隊は「雪風」が復帰するまで解隊扱いとされ、52年4月、「雪風」「DL-1」「葵」(日本防衛海軍初の新造駆逐艦、葵型駆逐艦一番艦)をもって再開隊した。

そして、9月1日を持ってHS作戦が発令され、雪風を旗艦として、日本にいて任務が特にない駆逐艦などの小艦艇を片っ端からかき集めて、臨時掃総隊が編成された。駆逐艦、海防艦クラスのみならず、漁船改造の特設駆潜艇のような艦艇もいた。
編成された昨日も英国の輸送船が1隻、対馬海峡で撃沈されていた。今日は、米国籍の輸送船8隻からなる輸送船団が対馬海峡を通過するため、二日目からいきなり、第二臨時掃海総隊の半数近くはこの護衛に駆り出されることになった。

 船団が徐々に見えてきたところで、雪風以下12隻が転舵し、船団に近づく。
艦橋では艦長が双眼鏡を覗いていた。
「各艦を散開させよ。本艦及び海防艦3隻は船団の先頭に出る。」
「はっ。」
「航海長、代わってくれ。」
「分かりました。」
艦長は舵輪の前から艦長席に戻る。
「雪風」の艦長は、この作戦の前に朝鮮戦争開戦時から艦長を務めてきた戸田大佐は少将に昇進し、陸上勤務に移り、チェジュ島沖海戦以来海軍作戦本部で働いていた、元駆逐艦「桐」の副長・手名大佐が務めていた。
また、「雪風」には改装時に新型レーダー及びヘッジホッグなどが備え付けられていた。
このため、艦隊随一の対空・対潜索敵能力及び対潜攻撃能力を持っていた。
ただ、露払いの為に海防艦3隻を雪風の更に前に出すことにしていた。
「針路そのまま、第1戦速に落とせ。」
「はっ。」
輸送船団と歩みを共にするため、雪風は更に速度を落とした。

2時間後。
対馬海峡東水道を船団より先に(輸送船に比べて)高速で進入していた第8海防隊の海防艦「8号」「14号」「16号」のソナーが多数の影を捉えた。
「敵潜ですっ!」
三隻全てで一斉に警報が鳴り始め、全速で走り始める。各艦が点でんバラバラな方向に向かい始め、艦尾に設置された爆雷投射機から一斉に爆雷が放り投げられる。
一拍起き、海面に水柱が盛り上がる。これと同時に、旗艦の「8号」からは「我敵潜に遭遇、これより交戦する。」との信号が「雪風」に向けて打たれた。
各艦がバラバラとなって爆雷投下を行ったため、海中は反響音で凄まじい状態となり、一時的に探知能力が0となった。
一方、敵潜は潜望鏡でこの3隻の姿を既に捉えいた。
そして、3隻のK型潜水艦「K-52」「K-53」「K-54」から一斉に魚雷が放たれた。
計18発の魚雷が3隻の非力な海防艦に向かっていった。
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