564 / 709
番外編
指輪ものがたり 1
しおりを挟む
「レディ・ミア・アンジェリカ・クレイトス、君との婚約は破棄させてもらう。」
私の腰を引き寄せ抱き締めると、これ見よがしにシグウェルさんは目の前の美女・・・ミアさんに冷徹にそう言い放った。
場所はまばゆいシャンデリアが魔法で空中に浮かぶ華やかな宴席の大広間、周りには豪華に着飾ったたくさんの貴族達。
・・・あれ、なんだろう。こういうの、元の世界で深夜残業を終えて帰って来て付けたテレビの、深夜の異世界系アニメで見たことある。
いわゆる悪役令嬢って言われる人が衆人環視の中で断罪されるやつ。
私とシグウェルさんの目の前には艶やかで美しい燃えるように真っ赤な赤髪を綺麗に編み込み、美しいドレスに身を包んだ悪役令嬢・・・ではなくクレイトス公女のミアさんがもの凄い顔で私を睨んでいる。
ますますアニメ感がある状況だけど、どうすんのこれ?
シグウェルさんの後ろではユリウスさんも
「今この場でそれを言うっすか⁉︎」
と真っ青になっている。そうだよね。そもそもはシグウェルさんが原因で、ミアさんはそれに拍車をかけただけだもんね。
・・・まあそのせいで私達はルーシャ国を出て自治領であるクレイトス大公領まで来る羽目になったんだけど。
話はクレイトス大公領を訪れる前に遡る。
とある日、魔法の指導を受けるために魔導士院を訪れてシグウェルさんの団長室でお茶をご馳走になっていた時のことだ。
その日受け取った郵便物や書類を確かめていたシグウェルさんが突然声を上げた。
「なんだこれは」
いつになく不機嫌そうな、それでいて少し困惑したようでもあるその声色に私だけでなく私のおしゃべりの相手をしていたユリウスさんもそちらを見た。
「どうかしたっすか団長。」
「婚約確認証明書とルーシャ国への魔法陣を使った訪問許諾申請書だ。」
「こ・・・?」
婚約?え?誰が?私もユリウスさんもぽかんとした。
シグウェルさんは珍しく僅かに眉間に皺をよせ、まだ書類に目を通している。
「・・・おいユリウス、俺はクレイトス大公領の公女と婚約していたのか?」
その言葉に弾かれたようにユリウスさんが立ち上がってツッコミを入れた。
「何言ってんすか、団長はユーリ様と結婚してるじゃないっすか!結婚式を挙げて新婚休暇にも行って来て、その後も一ヶ月はなんだかんだで俺に仕事を押し付けてダラダラしてたのはどこの誰っすか⁉︎休み過ぎてついにボケたっすか⁉︎」
「だらけていたのではなく結婚式と休暇で進捗が遅れた自分の魔法実験に注力していただけだ」
「仕事を放り出して自分の趣味に没頭するとか、人はそれをサボリと言うっすよ!つーか、団長がした覚えのない婚約を俺が知ってるわけないっす!何したんすか団長、婚約詐欺っすか⁉︎」
「人聞きの悪いことを言うな、俺がユーリ以外に興味を持つわけがないだろうが」
あ、そうですか・・・。
心底嫌そうな顔をしたシグウェルさんの言葉に、二人のやりとりをただ聞いていただけの私はちょっと気恥ずかしくなった。
相変わらず恥ずかしくなるようなセリフを平然と言うなあ。
「ユーリ様も!赤くなってる場合じゃないっすよ⁉︎自分の旦那に結婚した後で婚約者が現れるなんて、そこはもっとこう、心配するとか怒るとかしないと!」
なぜかユリウスさんの矛先が私にも向かってしまった。
「そう言われても、話が全然見えないんですけど・・・。そもそも、私達の結婚式ってかなり大々的にやったのにそれから4ヶ月以上も経ってからそんな・・・婚約履行がどうとかって言われても。え?シグウェルさんて元々婚約者がいたんですか?」
本人も全く身に覚えがなさそうだけど。
一応聞いてみたらますますシグウェルさんがむっとした。
「まさか君までそんな事を言い出すとはな。君の他に誰か付き合っている者がいるように見えたか?」
「ですよね」
まあ分かってはいたけど一応聞いてみただけだ。だって初めて会った時、シグウェルさんのことをユリウスさんは「友達も恋人もいない」ってヒドイ言い方をして私に紹介していたし。
「でもルーシャ国って身分の高い人や才能のある人は複数の伴侶を持てるらしいですから、もしかしてシグウェルさんも誰か親の決めた相手がいてもおかしくないかなって・・・」
そう言ったらユリウスさんがあっ!と声を上げた。
「思い出したっす!クレイトス大公領って言ったらそこの公女様、ドラグウェル様が薦めて来た団長の最後のお見合い相手じゃないっすか‼︎」
「そうだったか?」
そこでユリウスさんが「ちょっと見せて下さい!」とシグウェルさんの手にしていた書類を奪い取って素早く目を通した。
「ほらぁやっぱり!ここにちゃんとミア・アンジェリカ・クレイトスって書いてあるじゃないっすか、しかも日付からすると許可さえ出せば今日明日にもここに来るっすよ⁉︎」
ビシッ!とユリウスさんが指差した書類は魔法陣を使ってルーシャ国へ入国する許可を求める申請書だ。
王宮に報告して了承が得られたらこの書類に魔力を流すと、申請書を出した相手が反応して魔導士院の転移魔法陣にすぐにでも転移して来れる。
「便利ですけど他国の王都の・・・しかも王宮の中にいきなり転移してくるのは結構大変なんじゃないですか?」
なにせルーシャ国の国境だけでなくこの王都にも強力な二重結界が張ってあるのに、それを乗り越えて他国からいきなりここに転移出来るなんてかなりの魔導士じゃないと不可能では・・・?
そう思っていたら、その考えが伝わったらしくユリウスさんが教えてくれた。
「クレイトス大公領は魔導士や魔力持ちの人間達が魔法を極めようと自然に集まって出来た、どこの国にも属さない自治領なんす。そこを治めているクレイトス大公もドラグウェル様に匹敵するような大魔導士で、その娘のミア・アンジェリカ様も優れた魔導士っす。だから転移魔法もお手のもので、」
その膨大な魔力から団長のお見合い相手にも選ばれたわけで・・・と最後の方はユリウスさんの声がモゴモゴと小さくなった。
「年に一度の見合いは家から命じられた義務だったからな、毎年恒例の行事みたいなものでいちいち相手など覚えていない」
そう補足したシグウェルさんが、
「だが見合い相手の誰とも婚約などしていない。茶を飲んで買い物に付き合い、歌劇やら演劇やらを鑑賞して食事をして解散というのがいつものコースでクレイトス公女の時も同様のはずだ。」
淡々と自分の記憶を思い出しながら話しているけどなんかこう・・・本当に義務でお見合いしてました感がひしひしと伝わってくる。
これだけ顔の良い人に丸一日エスコートされてデートするって決まってたら、相手の女の人はすごく楽しみにしていただろうになあ・・・。
お互いの温度差が凄そうで想像しただけで風邪を引きそう。
シグウェルさんの言葉に私が微妙な顔をしていたからなのか、ユリウスさんが首を振って
「言いたいことは分かるっすけど、実際目の当たりにするともっとヒドイっすよ。お相手のこと、石ころか草木でも見るような目で見てたんすから」
となんのフォローにもならない事を言った。
「だからこそ不思議なんすよね。一体何をどうすれば団長と婚約したことになってるんだか・・・。なんかそれらしいプレゼントでも渡したんじゃないすか?」
「知るか」
ユリウスさんの疑問にシグウェルさんは全く興味なさげだ。ただ、
「問題はこのルーシャ国への訪問許諾申請書だ。何の理由もなく却下は出来ない。一応ルーシャ国とも魔導士の交流を通してそれなりの親交がある国だからな。」
と書類をひらひらと振った。
「許可をして、実際そのミアさんて言う人に会ってどういうことか聞くのが一番手っ取り早いんじゃないですか?」
そう提案したら、ちらと横目で見られて
「君は自分の伴侶が自称婚約者を名乗る女と会っても気にならないのか?」
と聞かれてしまった。そうは言われても、お見合い相手だったのにシグウェルさんの記憶に全く残っていないほど興味がない相手なら浮気の心配もないと思うんですけど。
そう思ったのが顔にでていたらしい。ぐいと近付いたシグウェルさんに
「嫉妬もなしか。寂しいものだな、君は俺に対する愛情が薄いんじゃないか?俺の方は休暇でもその後も、嫌というほど愛情を伝えたつもりだが、君にはそれが伝わっていないから嫉妬もしないのか?それならもっとじっくり夜を徹してそれを伝える必要があるな。」
とアメジストの瞳を煌めかせて囁かれた。不穏だ。嫌な予感しかしない。具体的には朝まで離してもらえない気がする。
するとそんな妖しい雰囲気をぶち壊すようにユリウスさんが
「ユーリ様が嫉妬しないのにかこつけて団長室でいかがわしい行為をするのは止めるっすよ!ユーリ様は元から情緒が死んでるから嫉妬しないのも仕方ないっす!」
と私とシグウェルさんの間に手刀を入れて制した。
「情緒が死んでるとか失礼ですね⁉︎私だって・・・!」
「なんだ、嫉妬することがあるのか?」
いつだ、聞かせてくれないか、とシグウェルさんが面白そうに目をすがめたので言葉に詰まる。
そんなの今さらだから言えないけど・・・あのヘイデス国の聖女エリス様の正体を暴くため、シグウェルさんがエリス様の側にいた時はその理由を知らない時は心配したし嫉妬した。
「・・・これから嫉妬することがあるかも知れないじゃないですか!」
うっすらと頬を染めてそう誤魔化したら、
「では君を嫉妬させるためにクレイトス公女に会うとするか。」
シグウェルさんが面白そうにそんな事を言う。さっきまでは身に覚えのない自称婚約者の訪問申請で不機嫌だったのに、私の気持ちを振り回すためならそんな相手に会うのも構わないらしい。つくづく変わっている。
そしてそんな変わり者だから、何の騒ぎも起きないわけがなかったのだった。
私の腰を引き寄せ抱き締めると、これ見よがしにシグウェルさんは目の前の美女・・・ミアさんに冷徹にそう言い放った。
場所はまばゆいシャンデリアが魔法で空中に浮かぶ華やかな宴席の大広間、周りには豪華に着飾ったたくさんの貴族達。
・・・あれ、なんだろう。こういうの、元の世界で深夜残業を終えて帰って来て付けたテレビの、深夜の異世界系アニメで見たことある。
いわゆる悪役令嬢って言われる人が衆人環視の中で断罪されるやつ。
私とシグウェルさんの目の前には艶やかで美しい燃えるように真っ赤な赤髪を綺麗に編み込み、美しいドレスに身を包んだ悪役令嬢・・・ではなくクレイトス公女のミアさんがもの凄い顔で私を睨んでいる。
ますますアニメ感がある状況だけど、どうすんのこれ?
シグウェルさんの後ろではユリウスさんも
「今この場でそれを言うっすか⁉︎」
と真っ青になっている。そうだよね。そもそもはシグウェルさんが原因で、ミアさんはそれに拍車をかけただけだもんね。
・・・まあそのせいで私達はルーシャ国を出て自治領であるクレイトス大公領まで来る羽目になったんだけど。
話はクレイトス大公領を訪れる前に遡る。
とある日、魔法の指導を受けるために魔導士院を訪れてシグウェルさんの団長室でお茶をご馳走になっていた時のことだ。
その日受け取った郵便物や書類を確かめていたシグウェルさんが突然声を上げた。
「なんだこれは」
いつになく不機嫌そうな、それでいて少し困惑したようでもあるその声色に私だけでなく私のおしゃべりの相手をしていたユリウスさんもそちらを見た。
「どうかしたっすか団長。」
「婚約確認証明書とルーシャ国への魔法陣を使った訪問許諾申請書だ。」
「こ・・・?」
婚約?え?誰が?私もユリウスさんもぽかんとした。
シグウェルさんは珍しく僅かに眉間に皺をよせ、まだ書類に目を通している。
「・・・おいユリウス、俺はクレイトス大公領の公女と婚約していたのか?」
その言葉に弾かれたようにユリウスさんが立ち上がってツッコミを入れた。
「何言ってんすか、団長はユーリ様と結婚してるじゃないっすか!結婚式を挙げて新婚休暇にも行って来て、その後も一ヶ月はなんだかんだで俺に仕事を押し付けてダラダラしてたのはどこの誰っすか⁉︎休み過ぎてついにボケたっすか⁉︎」
「だらけていたのではなく結婚式と休暇で進捗が遅れた自分の魔法実験に注力していただけだ」
「仕事を放り出して自分の趣味に没頭するとか、人はそれをサボリと言うっすよ!つーか、団長がした覚えのない婚約を俺が知ってるわけないっす!何したんすか団長、婚約詐欺っすか⁉︎」
「人聞きの悪いことを言うな、俺がユーリ以外に興味を持つわけがないだろうが」
あ、そうですか・・・。
心底嫌そうな顔をしたシグウェルさんの言葉に、二人のやりとりをただ聞いていただけの私はちょっと気恥ずかしくなった。
相変わらず恥ずかしくなるようなセリフを平然と言うなあ。
「ユーリ様も!赤くなってる場合じゃないっすよ⁉︎自分の旦那に結婚した後で婚約者が現れるなんて、そこはもっとこう、心配するとか怒るとかしないと!」
なぜかユリウスさんの矛先が私にも向かってしまった。
「そう言われても、話が全然見えないんですけど・・・。そもそも、私達の結婚式ってかなり大々的にやったのにそれから4ヶ月以上も経ってからそんな・・・婚約履行がどうとかって言われても。え?シグウェルさんて元々婚約者がいたんですか?」
本人も全く身に覚えがなさそうだけど。
一応聞いてみたらますますシグウェルさんがむっとした。
「まさか君までそんな事を言い出すとはな。君の他に誰か付き合っている者がいるように見えたか?」
「ですよね」
まあ分かってはいたけど一応聞いてみただけだ。だって初めて会った時、シグウェルさんのことをユリウスさんは「友達も恋人もいない」ってヒドイ言い方をして私に紹介していたし。
「でもルーシャ国って身分の高い人や才能のある人は複数の伴侶を持てるらしいですから、もしかしてシグウェルさんも誰か親の決めた相手がいてもおかしくないかなって・・・」
そう言ったらユリウスさんがあっ!と声を上げた。
「思い出したっす!クレイトス大公領って言ったらそこの公女様、ドラグウェル様が薦めて来た団長の最後のお見合い相手じゃないっすか‼︎」
「そうだったか?」
そこでユリウスさんが「ちょっと見せて下さい!」とシグウェルさんの手にしていた書類を奪い取って素早く目を通した。
「ほらぁやっぱり!ここにちゃんとミア・アンジェリカ・クレイトスって書いてあるじゃないっすか、しかも日付からすると許可さえ出せば今日明日にもここに来るっすよ⁉︎」
ビシッ!とユリウスさんが指差した書類は魔法陣を使ってルーシャ国へ入国する許可を求める申請書だ。
王宮に報告して了承が得られたらこの書類に魔力を流すと、申請書を出した相手が反応して魔導士院の転移魔法陣にすぐにでも転移して来れる。
「便利ですけど他国の王都の・・・しかも王宮の中にいきなり転移してくるのは結構大変なんじゃないですか?」
なにせルーシャ国の国境だけでなくこの王都にも強力な二重結界が張ってあるのに、それを乗り越えて他国からいきなりここに転移出来るなんてかなりの魔導士じゃないと不可能では・・・?
そう思っていたら、その考えが伝わったらしくユリウスさんが教えてくれた。
「クレイトス大公領は魔導士や魔力持ちの人間達が魔法を極めようと自然に集まって出来た、どこの国にも属さない自治領なんす。そこを治めているクレイトス大公もドラグウェル様に匹敵するような大魔導士で、その娘のミア・アンジェリカ様も優れた魔導士っす。だから転移魔法もお手のもので、」
その膨大な魔力から団長のお見合い相手にも選ばれたわけで・・・と最後の方はユリウスさんの声がモゴモゴと小さくなった。
「年に一度の見合いは家から命じられた義務だったからな、毎年恒例の行事みたいなものでいちいち相手など覚えていない」
そう補足したシグウェルさんが、
「だが見合い相手の誰とも婚約などしていない。茶を飲んで買い物に付き合い、歌劇やら演劇やらを鑑賞して食事をして解散というのがいつものコースでクレイトス公女の時も同様のはずだ。」
淡々と自分の記憶を思い出しながら話しているけどなんかこう・・・本当に義務でお見合いしてました感がひしひしと伝わってくる。
これだけ顔の良い人に丸一日エスコートされてデートするって決まってたら、相手の女の人はすごく楽しみにしていただろうになあ・・・。
お互いの温度差が凄そうで想像しただけで風邪を引きそう。
シグウェルさんの言葉に私が微妙な顔をしていたからなのか、ユリウスさんが首を振って
「言いたいことは分かるっすけど、実際目の当たりにするともっとヒドイっすよ。お相手のこと、石ころか草木でも見るような目で見てたんすから」
となんのフォローにもならない事を言った。
「だからこそ不思議なんすよね。一体何をどうすれば団長と婚約したことになってるんだか・・・。なんかそれらしいプレゼントでも渡したんじゃないすか?」
「知るか」
ユリウスさんの疑問にシグウェルさんは全く興味なさげだ。ただ、
「問題はこのルーシャ国への訪問許諾申請書だ。何の理由もなく却下は出来ない。一応ルーシャ国とも魔導士の交流を通してそれなりの親交がある国だからな。」
と書類をひらひらと振った。
「許可をして、実際そのミアさんて言う人に会ってどういうことか聞くのが一番手っ取り早いんじゃないですか?」
そう提案したら、ちらと横目で見られて
「君は自分の伴侶が自称婚約者を名乗る女と会っても気にならないのか?」
と聞かれてしまった。そうは言われても、お見合い相手だったのにシグウェルさんの記憶に全く残っていないほど興味がない相手なら浮気の心配もないと思うんですけど。
そう思ったのが顔にでていたらしい。ぐいと近付いたシグウェルさんに
「嫉妬もなしか。寂しいものだな、君は俺に対する愛情が薄いんじゃないか?俺の方は休暇でもその後も、嫌というほど愛情を伝えたつもりだが、君にはそれが伝わっていないから嫉妬もしないのか?それならもっとじっくり夜を徹してそれを伝える必要があるな。」
とアメジストの瞳を煌めかせて囁かれた。不穏だ。嫌な予感しかしない。具体的には朝まで離してもらえない気がする。
するとそんな妖しい雰囲気をぶち壊すようにユリウスさんが
「ユーリ様が嫉妬しないのにかこつけて団長室でいかがわしい行為をするのは止めるっすよ!ユーリ様は元から情緒が死んでるから嫉妬しないのも仕方ないっす!」
と私とシグウェルさんの間に手刀を入れて制した。
「情緒が死んでるとか失礼ですね⁉︎私だって・・・!」
「なんだ、嫉妬することがあるのか?」
いつだ、聞かせてくれないか、とシグウェルさんが面白そうに目をすがめたので言葉に詰まる。
そんなの今さらだから言えないけど・・・あのヘイデス国の聖女エリス様の正体を暴くため、シグウェルさんがエリス様の側にいた時はその理由を知らない時は心配したし嫉妬した。
「・・・これから嫉妬することがあるかも知れないじゃないですか!」
うっすらと頬を染めてそう誤魔化したら、
「では君を嫉妬させるためにクレイトス公女に会うとするか。」
シグウェルさんが面白そうにそんな事を言う。さっきまでは身に覚えのない自称婚約者の訪問申請で不機嫌だったのに、私の気持ちを振り回すためならそんな相手に会うのも構わないらしい。つくづく変わっている。
そしてそんな変わり者だから、何の騒ぎも起きないわけがなかったのだった。
11
お気に入りに追加
1,916
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
王太子妃、毒薬を飲まされ意識不明中です。
ゼライス黒糖
恋愛
王太子妃のヘレンは気がつくと幽体離脱して幽霊になっていた。そして自分が毒殺されかけたことがわかった。犯人探しを始めたヘレン。主犯はすぐにわかったが実行犯がわからない。メイドのマリーに憑依して犯人探しを続けて行く。
事件解決後も物語は続いて行きローズの息子セオドアの結婚、マリーの結婚、そしてヘレンの再婚へと物語は続いて行きます。
暗闇に輝く星は自分で幸せをつかむ
Rj
恋愛
許婚のせいで見知らぬ女の子からいきなり頬をたたかれたステラ・デュボワは、誰にでもやさしい許婚と高等学校卒業後にこのまま結婚してよいのかと考えはじめる。特待生として通うスペンサー学園で最終学年となり最後の学園生活を送る中、許婚との関係がこじれたり、思わぬ申し出をうけたりとこれまで考えていた将来とはまったく違う方向へとすすんでいく。幸せは自分でつかみます!
ステラの恋と成長の物語です。
*女性蔑視の台詞や場面があります。
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿で両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる