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番外編
マッシュルーム・ハンティング 3
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ぶわりと舞い上がった予想外の胞子の量にくしゅんくしゅんとくしゃみが止まらないでいると、エル君だけでなくリオン様とレジナスさんまで駆けて来た。
そして私の足元にある黒いキノコをみたレジナスさんが
「酔っ払い茸だ」
そう言うと持っていた布に腰から下げていた皮袋から水を出してかけ、固く絞って私に渡して来た。
「ユーリ、すぐに顔を拭け。それから水でうがいも」
「な、なんですかこれ」
酔っ払い茸という不穏な単語が聞こえたよ?
濡れタオル代わりの布を受け取って顔を拭いていればリオン様が教えてくれた。
「その名の通り、酔っ払い茸はアルコール成分に似たものを持っていてそれを食べたり胞子を浴びた動物は酩酊状態になるんだよ。だから今みたいな時はその胞子を早く落とすに限るんだけど」
エル君も、
「・・・本当はもっと人気のない山奥に生えているはずなんですけど。動物にくっついて運ばれて来て自生したんでしょうか」
と辺りを確かめていた。
なるほど、と思いながら話を聞いていたけど頭のぼうっとする感じが晴れない。
「リオン様・・・これ、お酒じゃないけど酔ったら私、大きくなると思います?」
それが今の最大の疑問だ。なんかこのボンヤリする感じはもう酔い始めている気がする。
「アルコールじゃないし、度数で言えばいつものお酒よりは低いと思うけどどうなんだろうね・・・?」
リオン様とレジナスさんが顔を見合わせた。
と、その時だ。自分の口からヒック、というしゃっくりが一つ出た。あっ、まずい。
「ユーリ、大丈夫⁉︎」
リオン様がふらついた私の肩に手をかけて慌てて支えてくれたけど。
「だ、大丈夫じゃ・・・ないれす!」
体がぽかぽかするし頭はふわふわする。しかも呂律が怪しい。
自分の体を見下ろしてみるけど、大きくなる前の前兆のあのうっすらと体が光る感じはない。ないけども。
「・・・なんか楽しい気分になって来ました」
「ウソでしょ⁉︎」
私の自己申告にリオン様がぎょっとした。その様子がなんだかすごく面白い。
「・・・ふ、うふふ・・・」
「おいユーリ、しっかりしろ!いくら何でもこんなに早く酔うとは」
レジナスさんまで狼狽えている。面白い。
「なんで二人ともそんなにあわててるんですか、私はだいじょーぶですよ?」
ない胸を張れば二人とも全然大丈夫じゃない、と声を合わせた。
そんな二人を見たら、私を心配する様子がなんだか無性にかわいく思えてきた。
その気持ちのまま肩に手を置いているリオン様にぎゅうっと抱きつく。
「ユーリ⁉︎具合が悪いの⁉︎」
「・・・好き!」
「え?」
「リオンさま、かわいー!好き‼︎」
脈絡もなく予想外のことを言われたリオン様だけでなくなぜかレジナスさんまで固まっている。なんでだ、かわいい。
「レジナスさんも!」
手招きしてちょっと頭を下げてもらうようにしてからよーしよし、とわんこを撫でるようにその短い黒髪を撫でる。
「わんちゃんみたいでかわいい!好き‼︎」
ぎこちなく頭を下げたレジナスさんはほんのりと目元を赤くしている。
「えっと、エル君は・・・」
エル君も撫でてあげようと周りを見渡したけど、どこにもいない。どうやら私のすることを見て隠れてしまったらしい。
本当に素早いんだから。ぶすっと頬を膨らませた私を見ながらリオン様が、
「ええと・・・これは酔ってるんだよね・・・?」
とレジナスさんに同意を求めている。
「酔ってませんよ!おっきくなってないし‼︎」
意義あり、と声を上げれば
「どう見ても酔ってますね」
とレジナスさんはため息をついた。
「レジナスさんまでひどい!」
リオン様に抱きついたまま文句を言ったらまあまあとそのリオン様に諌められた。
「このままだとスミレの花畑まで行くのは無理そうだね。とりあえず別邸に行って休もうか?」
「ええっ、野イチゴのジャムパンは⁉︎」
「後で別邸の者に野イチゴを準備させるから別邸で食べようか?」
さすがリオン様、私のわがままにも嫌な顔一つせず笑顔で頷いてくれる。
「ありがとーございます、好き!」
「・・・こんなにユーリに好きって言われる事はないから物凄く貴重な機会な気がするね。」
せっかく好意を伝えたのにリオン様は何故か複雑そうな笑みを浮かべていた。
「そうですか?えっと、今日のリオン様はいつもと違うくろいふくがすてきです!ギャップ萌えですね、かっこいー‼︎」
「・・・萌え?何それ、ユーリの世界の言い回し?」
「ふだんと違うかっこうにキュンとするってことです!キュンです‼︎」
「それは褒めてくれてるんだよね?ありがとう・・・?」
ヒック、とまた一つしゃっくりが出る。
戸惑うリオン様に、懸命にその格好良さを伝えようとするけど頭の中がふわふわしていて上手く言えない。
そんな私をレジナスさんが心配そうに見つめているのに気がついた。レジナスさんも褒めて欲しいのかな?
「レジナスさん!レジナスさんもいつもとまた違ったかっこうがすてきですよ!さっき鴨を取りにピューンって走って行ったのも黒いわんちゃんみたいでカッコよかった!さすがレジナスさん‼︎」
リオン様から離れてはい、とレジナスさんに両手を差し出す。
だけどレジナスさんは微動だにせずそんな私を眺めていた。その頬がうっすらと赤い気がする。
「・・・?どうしたんですかレジナスさん、抱っこですよ?」
「え?」
「いつもの抱っこです!」
ほら。と広げた両手でもう一度催促すれば、やっとレジナスさんはいつものように縦抱きにしてくれた。
「・・・ユーリの方からそんな事を堂々とねだられるとはな」
「ね?貴重だよね。君に向かって犬みたいでかわいい、って頭を撫で回す人も初めて見たからそれも何だかすごく貴重なものを見せてもらった気がするよ。」
「面白がってますねリオン様」
会話を交わす二人を眺めていればレジナスさんの眉間に僅かに皺が寄った。
せっかくのカッコいい顔が勿体無い。その皺を伸ばそうとその眉間に手のひらを押し当てる。
「ユーリ⁉︎急に何をする⁉︎」
レジナスさんが驚いた声を上げた。それが面白くてあはは、と笑いながら
「だってせっかくのかっこいー顔が台無しだから!あれ?伸びないですね、なんでだろう」
むしろ困惑したのかレジナスさんの眉間の皺が深まってしまった。
「レジナス、ユーリを抱き上げたまま馬に乗れる?自分の前に座らせるよりもそのまま運ぶ方が良くない?」
まだ必死にレジナスさんの額に手を当てている私を見ながらリオン様がそんな事を言っている。
「・・・確かにその方が良さそうです。このまま別邸に行ってユーリを休ませましょう」
そしてそれに答えるレジナスさんの声が呆れているような気がした。
「なんですかレジナスさん、そんな目でひとのこと見て!わたしのこと嫌いなんですか⁉︎」
「そんな目って何だ?俺はユーリを心配して」
「うそです、すきな人をそんな目でみるわけないです!私のことすきじゃないんでしょ⁉︎」
「そんなわけがあるか」
「じゃあ好きっていってみてくださいよ!」
抱き上げられたまま見つめれば、レジナスさんはグッと言葉を詰まらせた。
「いえないんだ?わたしは言えますよー、レジナスさん、好き‼︎」
「・・・勘弁してくれ」
レジナスさんが顔を赤くしたまま天を仰ぐ。
リオン様は並走させる馬で私達の隣から、
「僕はいくらでもユーリを好きだって言えるよ?ほらレジナス、せっかくユーリが言って欲しいって言ってるんだから早く君も言わないと。」
と面白そうに笑っている。
「リオン様まで・・・。酔った人間の冗談に付き合わないで下さい」
「じょーだん⁉︎わたしがレジナスさんを好きなのはじょーだんなんかじゃないですよ?その証拠に今からいっこずつレジナスさんの好きなところを言っていきましょうか?えっと、まず優しいでしょー、手があったかいでしょー」
大きな声で話し始めた私の目をレジナスさんが器用にも抱き上げたままその手で覆う。
「いいから少し眠れユーリ!」
塞がれた視界の横でリオン様の笑う声がする。
「それって猫が暴れてる時におとなしくさせる方法じゃない?」
暴れ猫?心外だ。
「だれがねこちゃんですか!」
「どこからどう見ても可愛い仔猫だよ。レジナス、そのままユーリを寝かせちゃって」
「こんなことで寝たりなんかしませんよ!」
・・・なんて言ったくせに、視界を塞がれてなおかつそれがレジナスさんの暖かな手だったりしたものだから私はいつの間にか眠ってしまっていた。
そうしてハッと我に返った時にはなぜか別邸の一室のベッドの上で、隣にはリオン様が添い寝をしていた。
そのまま
「森の中ではなかったけどたくさん昼寝が出来たみたいで良かったよ」
と微笑まれると、
「じゃあユーリ、今度は僕の好きなところを1つずつ言ってみてくれる?」
と言われた。
・・・なんの話?そう思っていたら野イチゴの入った籠を手にしたレジナスさんがちょうど部屋にやって来て私を見るなり顔を赤くする。
酔っ払い茸で酔った私がレジナスさんの好きなところを別邸に向かう間、眠ってしまうまで大きな声で話し続けていたとリオン様から教えられたのはその後だ。
「もう一人では絶対にキノコには触りません・・・」
反省して奥の院に帰れば、今度はものすごくいい笑顔のシェラさんがやって来て
「ユーリ様、オレの好きなところも言っていただけませんか?絶対にレジナスよりもたくさんあるはずですから。」
としつこくお願いされる羽目になり、「あの酔っ払い茸があれば言っていただけるんですか?」と取りに行こうとする始末だった。
そんな感じでリオン様達との遠乗りは消化不良に終わり、スミレの花畑に野イチゴ摘みも出来なかった私はしばらくの間はまともにレジナスさんの顔を見れずに恥ずかしい思いをするだけの遠出になったのだった。
そして私の足元にある黒いキノコをみたレジナスさんが
「酔っ払い茸だ」
そう言うと持っていた布に腰から下げていた皮袋から水を出してかけ、固く絞って私に渡して来た。
「ユーリ、すぐに顔を拭け。それから水でうがいも」
「な、なんですかこれ」
酔っ払い茸という不穏な単語が聞こえたよ?
濡れタオル代わりの布を受け取って顔を拭いていればリオン様が教えてくれた。
「その名の通り、酔っ払い茸はアルコール成分に似たものを持っていてそれを食べたり胞子を浴びた動物は酩酊状態になるんだよ。だから今みたいな時はその胞子を早く落とすに限るんだけど」
エル君も、
「・・・本当はもっと人気のない山奥に生えているはずなんですけど。動物にくっついて運ばれて来て自生したんでしょうか」
と辺りを確かめていた。
なるほど、と思いながら話を聞いていたけど頭のぼうっとする感じが晴れない。
「リオン様・・・これ、お酒じゃないけど酔ったら私、大きくなると思います?」
それが今の最大の疑問だ。なんかこのボンヤリする感じはもう酔い始めている気がする。
「アルコールじゃないし、度数で言えばいつものお酒よりは低いと思うけどどうなんだろうね・・・?」
リオン様とレジナスさんが顔を見合わせた。
と、その時だ。自分の口からヒック、というしゃっくりが一つ出た。あっ、まずい。
「ユーリ、大丈夫⁉︎」
リオン様がふらついた私の肩に手をかけて慌てて支えてくれたけど。
「だ、大丈夫じゃ・・・ないれす!」
体がぽかぽかするし頭はふわふわする。しかも呂律が怪しい。
自分の体を見下ろしてみるけど、大きくなる前の前兆のあのうっすらと体が光る感じはない。ないけども。
「・・・なんか楽しい気分になって来ました」
「ウソでしょ⁉︎」
私の自己申告にリオン様がぎょっとした。その様子がなんだかすごく面白い。
「・・・ふ、うふふ・・・」
「おいユーリ、しっかりしろ!いくら何でもこんなに早く酔うとは」
レジナスさんまで狼狽えている。面白い。
「なんで二人ともそんなにあわててるんですか、私はだいじょーぶですよ?」
ない胸を張れば二人とも全然大丈夫じゃない、と声を合わせた。
そんな二人を見たら、私を心配する様子がなんだか無性にかわいく思えてきた。
その気持ちのまま肩に手を置いているリオン様にぎゅうっと抱きつく。
「ユーリ⁉︎具合が悪いの⁉︎」
「・・・好き!」
「え?」
「リオンさま、かわいー!好き‼︎」
脈絡もなく予想外のことを言われたリオン様だけでなくなぜかレジナスさんまで固まっている。なんでだ、かわいい。
「レジナスさんも!」
手招きしてちょっと頭を下げてもらうようにしてからよーしよし、とわんこを撫でるようにその短い黒髪を撫でる。
「わんちゃんみたいでかわいい!好き‼︎」
ぎこちなく頭を下げたレジナスさんはほんのりと目元を赤くしている。
「えっと、エル君は・・・」
エル君も撫でてあげようと周りを見渡したけど、どこにもいない。どうやら私のすることを見て隠れてしまったらしい。
本当に素早いんだから。ぶすっと頬を膨らませた私を見ながらリオン様が、
「ええと・・・これは酔ってるんだよね・・・?」
とレジナスさんに同意を求めている。
「酔ってませんよ!おっきくなってないし‼︎」
意義あり、と声を上げれば
「どう見ても酔ってますね」
とレジナスさんはため息をついた。
「レジナスさんまでひどい!」
リオン様に抱きついたまま文句を言ったらまあまあとそのリオン様に諌められた。
「このままだとスミレの花畑まで行くのは無理そうだね。とりあえず別邸に行って休もうか?」
「ええっ、野イチゴのジャムパンは⁉︎」
「後で別邸の者に野イチゴを準備させるから別邸で食べようか?」
さすがリオン様、私のわがままにも嫌な顔一つせず笑顔で頷いてくれる。
「ありがとーございます、好き!」
「・・・こんなにユーリに好きって言われる事はないから物凄く貴重な機会な気がするね。」
せっかく好意を伝えたのにリオン様は何故か複雑そうな笑みを浮かべていた。
「そうですか?えっと、今日のリオン様はいつもと違うくろいふくがすてきです!ギャップ萌えですね、かっこいー‼︎」
「・・・萌え?何それ、ユーリの世界の言い回し?」
「ふだんと違うかっこうにキュンとするってことです!キュンです‼︎」
「それは褒めてくれてるんだよね?ありがとう・・・?」
ヒック、とまた一つしゃっくりが出る。
戸惑うリオン様に、懸命にその格好良さを伝えようとするけど頭の中がふわふわしていて上手く言えない。
そんな私をレジナスさんが心配そうに見つめているのに気がついた。レジナスさんも褒めて欲しいのかな?
「レジナスさん!レジナスさんもいつもとまた違ったかっこうがすてきですよ!さっき鴨を取りにピューンって走って行ったのも黒いわんちゃんみたいでカッコよかった!さすがレジナスさん‼︎」
リオン様から離れてはい、とレジナスさんに両手を差し出す。
だけどレジナスさんは微動だにせずそんな私を眺めていた。その頬がうっすらと赤い気がする。
「・・・?どうしたんですかレジナスさん、抱っこですよ?」
「え?」
「いつもの抱っこです!」
ほら。と広げた両手でもう一度催促すれば、やっとレジナスさんはいつものように縦抱きにしてくれた。
「・・・ユーリの方からそんな事を堂々とねだられるとはな」
「ね?貴重だよね。君に向かって犬みたいでかわいい、って頭を撫で回す人も初めて見たからそれも何だかすごく貴重なものを見せてもらった気がするよ。」
「面白がってますねリオン様」
会話を交わす二人を眺めていればレジナスさんの眉間に僅かに皺が寄った。
せっかくのカッコいい顔が勿体無い。その皺を伸ばそうとその眉間に手のひらを押し当てる。
「ユーリ⁉︎急に何をする⁉︎」
レジナスさんが驚いた声を上げた。それが面白くてあはは、と笑いながら
「だってせっかくのかっこいー顔が台無しだから!あれ?伸びないですね、なんでだろう」
むしろ困惑したのかレジナスさんの眉間の皺が深まってしまった。
「レジナス、ユーリを抱き上げたまま馬に乗れる?自分の前に座らせるよりもそのまま運ぶ方が良くない?」
まだ必死にレジナスさんの額に手を当てている私を見ながらリオン様がそんな事を言っている。
「・・・確かにその方が良さそうです。このまま別邸に行ってユーリを休ませましょう」
そしてそれに答えるレジナスさんの声が呆れているような気がした。
「なんですかレジナスさん、そんな目でひとのこと見て!わたしのこと嫌いなんですか⁉︎」
「そんな目って何だ?俺はユーリを心配して」
「うそです、すきな人をそんな目でみるわけないです!私のことすきじゃないんでしょ⁉︎」
「そんなわけがあるか」
「じゃあ好きっていってみてくださいよ!」
抱き上げられたまま見つめれば、レジナスさんはグッと言葉を詰まらせた。
「いえないんだ?わたしは言えますよー、レジナスさん、好き‼︎」
「・・・勘弁してくれ」
レジナスさんが顔を赤くしたまま天を仰ぐ。
リオン様は並走させる馬で私達の隣から、
「僕はいくらでもユーリを好きだって言えるよ?ほらレジナス、せっかくユーリが言って欲しいって言ってるんだから早く君も言わないと。」
と面白そうに笑っている。
「リオン様まで・・・。酔った人間の冗談に付き合わないで下さい」
「じょーだん⁉︎わたしがレジナスさんを好きなのはじょーだんなんかじゃないですよ?その証拠に今からいっこずつレジナスさんの好きなところを言っていきましょうか?えっと、まず優しいでしょー、手があったかいでしょー」
大きな声で話し始めた私の目をレジナスさんが器用にも抱き上げたままその手で覆う。
「いいから少し眠れユーリ!」
塞がれた視界の横でリオン様の笑う声がする。
「それって猫が暴れてる時におとなしくさせる方法じゃない?」
暴れ猫?心外だ。
「だれがねこちゃんですか!」
「どこからどう見ても可愛い仔猫だよ。レジナス、そのままユーリを寝かせちゃって」
「こんなことで寝たりなんかしませんよ!」
・・・なんて言ったくせに、視界を塞がれてなおかつそれがレジナスさんの暖かな手だったりしたものだから私はいつの間にか眠ってしまっていた。
そうしてハッと我に返った時にはなぜか別邸の一室のベッドの上で、隣にはリオン様が添い寝をしていた。
そのまま
「森の中ではなかったけどたくさん昼寝が出来たみたいで良かったよ」
と微笑まれると、
「じゃあユーリ、今度は僕の好きなところを1つずつ言ってみてくれる?」
と言われた。
・・・なんの話?そう思っていたら野イチゴの入った籠を手にしたレジナスさんがちょうど部屋にやって来て私を見るなり顔を赤くする。
酔っ払い茸で酔った私がレジナスさんの好きなところを別邸に向かう間、眠ってしまうまで大きな声で話し続けていたとリオン様から教えられたのはその後だ。
「もう一人では絶対にキノコには触りません・・・」
反省して奥の院に帰れば、今度はものすごくいい笑顔のシェラさんがやって来て
「ユーリ様、オレの好きなところも言っていただけませんか?絶対にレジナスよりもたくさんあるはずですから。」
としつこくお願いされる羽目になり、「あの酔っ払い茸があれば言っていただけるんですか?」と取りに行こうとする始末だった。
そんな感じでリオン様達との遠乗りは消化不良に終わり、スミレの花畑に野イチゴ摘みも出来なかった私はしばらくの間はまともにレジナスさんの顔を見れずに恥ずかしい思いをするだけの遠出になったのだった。
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