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第七章 ユーリと氷の女王
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・・・・侍女のシンシア殿とユリウス副団長に
誉めそやされながら、ユーリ様が嬉しげに
その身に纏っている魔狐の毛皮を見てオレは考える。
魔狐はそれ自体が魔法を使えるだけでなく、
その毛皮も通常の魔法攻撃は弾いてしまう
特殊性を持っていて倒すのがとても困難だ。
その魔法耐性は死んで毛皮だけになっても
変わらない。
だから昔からその毛皮は特別で希少性が高い。
ユーリ様が今身に付けているあの毛皮。
仕立てからして恐らく一枚物の毛皮だ。
その大きさからしても相当の大物で、あれを
倒してその美しい毛皮を傷付けることなく
持ち帰るのはかなり難しかっただろう。
その価値は計り知れない。
そんな王家に献上されてもおかしくないものを
ユーリ様に贈ってくるあたりからして、
ユールヴァルト家が本気でユーリ様を
狙っているのは間違いない。
もし仮に、ユーリ様がユールヴァルト家に
嫁いだとして、オレはどうすればそれに
付き従うことが出来るだろうか。
いや、何も嫁ぎ先はユールヴァルト家だけとは
限らない。酔った時のあの美しく成長した姿、
あれがユーリ様の将来的な姿だとすれば
引く手数多だ。
何処かへ嫁ぐことになるだろうその時、
オレはどうやってその側へいようか。
なにしろユーリ様のそばにいるだけで
オレの心は今までにないほど穏やかに凪いで
己の心の醜さを忘れ慰められるのだから、
できるだけその近くにいたい。
護衛騎士か、侍従か、側近か。
それともはたまた、愛妾か。
その側にいられれば名目は何でもいい。
・・・何でもいい。そう思ったその時、
ふとヒルダ様夫妻の事が頭に浮かんだ。
それからダーヴィゼルドに来る前に
リオン殿下がユーリ様へ話していた
複数の配偶者制度の話も。
・・・そうか、側にいられる名目が
何でもいいなら何もユーリ様が
どこかへ嫁ぐのを待つ必要はないし、
誰かがすでにその伴侶になっていてもいい。
オレもその伴侶の一人になればいいのか。
考えてみれば、伴侶であれば何の憂いもなく
ずっとその側にいられるのだ。
そうすれば今のように朝からユーリ様の
お世話をすることも続けられる。
女神をこの手に入れるなど、あまりにも
畏れ多くてすぐにはその発想には至らなかったが、
唐突に思い付いたそれは神の啓示のようだった。
むしろ腕一本を切り落として除隊し側に
いるよりは確実にその隣にいられるし
さすがにリオン殿下も文句は言えないだろう。
オレがユーリ様の伴侶に?
それはまるで、天空の星をこの手に掴む
夢物語のような話だけれど。
・・・そう。清らかで美しいオレの女神の、
あの白く柔らかな身体を甘やかな囁きと共に
この卑しくも穢れた腕の中に大切に
ずっと閉じ込めてしまうのだ。
そうして二度とあの夜空に戻れないように
思い付く限りのありとあらゆる悦びと幸福を
オレの身も心も全て捧げ与えて、この地上に
引きずり堕としたまま縫い止めてしまえばいいのか。
それは畏れ多くも浅ましい背徳的な想いと行いだ。
背筋がゾクリとしたのは、その背徳的で
甘美な思い付きがあまりにも素晴らしく
美しいものに思われてオレの欲望が
刺激されたからなのか、
それとも畏れのせいなのか。
いずれにせよ、ユーリ様のそばにこの先も
ずっといられるならそれもいいかも知れない。
それも選択肢の一つであり、オレに取れる
手のひとつだ。
王都へ戻り、護衛騎士の任を解かれた後に
どうすべきか。この先のことに思いを
巡らせながら、オレはただひたすらに
ユーリ様を見つめていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『・・・で、空に向かって叫んだら雷が落ちたと』
「はい、間違いありません。」
鏡の向こうではシグウェルさんが淡々と
私の話を無表情で紙に書き留めている。
くっ、冷静にまとめられればまとめられるほど
恥ずかしくなるのはどうしてだろうか。
「私の言葉に呼応するみたいに山全体に
雷が落ちました。そこまでするつもりは
なかったんですけど」
でも、むしゃくしゃしてやった。
後悔はしていない。
口には出さないけどそう思っている私の心境は
テレビでよく見る犯罪者の自供と同じそれである。
刑事長、私にカツ丼を出してやって下さい・・・。
ああ、カツ丼食べたいな。この世界には
ないんだろうけども。
『酒を飲んだことによる力の解放か。
無意識のうちに制御されているか、枷になっていた
何かが飲酒によって外れて、与えられている
加護の力が溢れ出したのか?
それだけ大きな力を使っても魔力切れを
起こしていないところを見ると、
グノーデル神の加護の力にはまだ余裕があるな。
さすが、勇者様が素手で竜を殴り殺すだけの
加護の力だ。俺もぜひ目の前で見てみたかった。』
本当に残念そうに言うシグウェルさんなら、
きっとユリウスさんみたいに勇者様の遺物を
持った状態で雷に打たれても面白がりそうだ。
「いつものこの姿に戻っちゃったら、どうすれば
グノーデルさんの力を引き出せるのかは
やっぱりよく分からないんですけどね・・・。」
『・・・考えられるのは』
私から聞き取ったメモを見返しながら
シグウェルさんは言う。
『君が加護の力を使う時、いつも何かを思って
それが素直に反映されているだろう?
今回も何か強く思うところがあってそれが
グノーデル神の力の解放に繋がったのでは?』
飲酒はその感情なり何なりをより
増幅させたのかも知れない。
そう言われた。あの時思っていた「何か」で
身に覚えがあるのは一つしかない。
『心当たりがありそうだな』
さすがシグウェルさん、私の動揺を見逃さない。
「・・・あの時はリオン様に腹を立てていて。
それで、その怒った状態でお酒を飲んだんです。
言われてみれば、怒っていたから私の力も
攻撃性を増していたのかも・・・」
『なんだそれは。殿下に対してそんな事を
思っていたのか?』
鏡の向こうでシグウェルさんが目を丸くしている。
そんな珍しい表情をさせるってことは、
やっぱり一国の王子様に怒るとかないよね⁉︎と
私も少し焦る。いや、後悔はしてないんだけども。
「いっ、色々あったんですよ!」
『詳しくは聞かないが・・・だがなるほど、
少し分かった気がする。君の中のグノーデル神の
力は本能に近い感情の動きに左右されるところが
あるんだろう。』
「本能?」
『今回で言えば怒りだ。グノーデル神は戦神。
闘争心や怒りはグノーデル神の司るところだ。
君が本能的に感じた怒りはそのまま神の力に
直結してその加護を降ろしたんじゃないか?』
なるほど。普段あんな風に誰かや何かに対して
怒ることはないから今までグノーデルさんの
力を引き出すところまでいかなかったのか。
「なんだか分かったような気がします。
でも何かに対して怒って、その状態で
お酒を飲んだからグノーデルさんの力を
使えたって言うのならやっぱり普段は
その力を使う機会はないのかも・・・」
『いいんじゃないか?イリューディア神が
君に求めているのは勇者様のように魔物を
倒すことではないのだろう?
とりあえず、グノーデル神の加護の力が
その身に備わっていて、いざと言う時は
使えることが分かっただけでも収穫だ。』
そう言ってもらえて安心する。
良かった、そうなんだよ私はこの世界を
豊かにするお手伝いをイリューディアさんに
頼まれたのであって、魔物を倒せとは
言われていない。
グノーデルさんの加護の力があるからと、
勇者様みたいに竜退治だなんだという
役割まで期待されてしまったら
どうしようかと思ったよ。
『ただ気になるのはそれだ』
胸を撫で下ろした私にシグウェルさんが続けた。
見つめているのは、私の前に置かれている
真ん中から真っ二つに割れた魔除けの結界石。
『カイゼル殿を助けた時ではなくて、ヨナス神の
夢を見て目覚めた時に割れていたんだったな。』
「そうです、ヨナスの出てくるなんか怖い夢を見て
その時に鈴の音がしました。それで、起きてみたら
これが割れちゃってて・・・」
「先日君は王都で大規模な癒やしの力を使い、
今回はグノーデル神の力を使った。もう一つ、
君の中にはヨナス神の力もあるはずだから
自分の力が弱まるのを恐れたヨナスが君の意識に
介入しようとしたのを結界石が弾いたのかもな。』
「カイゼル様を助けた時、最後にあの紫色の
霧みたいなのを吸い込んだのがやっぱり
悪かったのかな・・・」
思い当たるのはそれしかない。
そのせいで内容は忘れたけど、何か変な夢を見て
ヨナスにつけ込まれそうになったのかも。
『そうだな。セビーリャ族が割った物の欠片は
ユリウスにも見せてもらったが、ヨナス神の
古い偶像だった。様式から見てルーシャ国で
作られた物ではなかったから、どこかから
手に入れて持ち込み、ダーヴィゼルドや
この国に混乱をもたらそうとしたんだろう。
まったく厄介な事をしてくれる。』
持ち込んだ当の本人が魔物に変わってしまい
すでに討伐されてしまっているので、
どこから持ち込まれたものかも分からないらしい。
『今回、運が悪かったのは持ち込まれたあれが
かなり古い年代ものでヨナス神の力が濃く
凝縮されていた祭祀用の偶像だった事と、
それの影響を受けたのがヒルダ様より魔力が
弱いとは言え、ダーヴィゼルドの由緒正しい
血筋の貴族であるカイゼル様だったと言うことだ。
そのおかげで滅多にはない悪影響を受けたんだろう』
「じゃあ、ほかの魔力がある人も影響を
受ける可能性があるんですか?」
『今回のような年代モノでヨナス神の力が
込められている品物はそうそう無いと思うから
大丈夫だと思うが・・・もしまた何かあれば、
その時は再度君の出番だな。』
「ええ・・・」
またお酒の力に頼ってグノーデルさんの加護の力を
使うのはちょっと・・・。
『万が一の場合だ。それより、ヨナス神の力が
眠っている君の意識に介入してその力を強めようと
している事の方が厄介だ。早々にまたノイエから
良質な結界石を取り寄せて魔除けを作ろう。
・・・と、今回はこれくらいだな。他に
疑問が出来たらそれはこちらに帰って来てから
聞く事にする。
あと何か、君から聞きたい事は?』
私から聞き取った事をまとめた用紙を整理して
片付けに入り始めたシグウェルさんに
あの!と思い切って声を掛ける。
このために私はユリウスさんもシェラさんも
同席させずに一人でシグウェルさんと
面談していたのだ。
「私が寝ている間にシグウェルさんの実家から
贈られてきたお見舞い品についてなんですけど‼︎」
誉めそやされながら、ユーリ様が嬉しげに
その身に纏っている魔狐の毛皮を見てオレは考える。
魔狐はそれ自体が魔法を使えるだけでなく、
その毛皮も通常の魔法攻撃は弾いてしまう
特殊性を持っていて倒すのがとても困難だ。
その魔法耐性は死んで毛皮だけになっても
変わらない。
だから昔からその毛皮は特別で希少性が高い。
ユーリ様が今身に付けているあの毛皮。
仕立てからして恐らく一枚物の毛皮だ。
その大きさからしても相当の大物で、あれを
倒してその美しい毛皮を傷付けることなく
持ち帰るのはかなり難しかっただろう。
その価値は計り知れない。
そんな王家に献上されてもおかしくないものを
ユーリ様に贈ってくるあたりからして、
ユールヴァルト家が本気でユーリ様を
狙っているのは間違いない。
もし仮に、ユーリ様がユールヴァルト家に
嫁いだとして、オレはどうすればそれに
付き従うことが出来るだろうか。
いや、何も嫁ぎ先はユールヴァルト家だけとは
限らない。酔った時のあの美しく成長した姿、
あれがユーリ様の将来的な姿だとすれば
引く手数多だ。
何処かへ嫁ぐことになるだろうその時、
オレはどうやってその側へいようか。
なにしろユーリ様のそばにいるだけで
オレの心は今までにないほど穏やかに凪いで
己の心の醜さを忘れ慰められるのだから、
できるだけその近くにいたい。
護衛騎士か、侍従か、側近か。
それともはたまた、愛妾か。
その側にいられれば名目は何でもいい。
・・・何でもいい。そう思ったその時、
ふとヒルダ様夫妻の事が頭に浮かんだ。
それからダーヴィゼルドに来る前に
リオン殿下がユーリ様へ話していた
複数の配偶者制度の話も。
・・・そうか、側にいられる名目が
何でもいいなら何もユーリ様が
どこかへ嫁ぐのを待つ必要はないし、
誰かがすでにその伴侶になっていてもいい。
オレもその伴侶の一人になればいいのか。
考えてみれば、伴侶であれば何の憂いもなく
ずっとその側にいられるのだ。
そうすれば今のように朝からユーリ様の
お世話をすることも続けられる。
女神をこの手に入れるなど、あまりにも
畏れ多くてすぐにはその発想には至らなかったが、
唐突に思い付いたそれは神の啓示のようだった。
むしろ腕一本を切り落として除隊し側に
いるよりは確実にその隣にいられるし
さすがにリオン殿下も文句は言えないだろう。
オレがユーリ様の伴侶に?
それはまるで、天空の星をこの手に掴む
夢物語のような話だけれど。
・・・そう。清らかで美しいオレの女神の、
あの白く柔らかな身体を甘やかな囁きと共に
この卑しくも穢れた腕の中に大切に
ずっと閉じ込めてしまうのだ。
そうして二度とあの夜空に戻れないように
思い付く限りのありとあらゆる悦びと幸福を
オレの身も心も全て捧げ与えて、この地上に
引きずり堕としたまま縫い止めてしまえばいいのか。
それは畏れ多くも浅ましい背徳的な想いと行いだ。
背筋がゾクリとしたのは、その背徳的で
甘美な思い付きがあまりにも素晴らしく
美しいものに思われてオレの欲望が
刺激されたからなのか、
それとも畏れのせいなのか。
いずれにせよ、ユーリ様のそばにこの先も
ずっといられるならそれもいいかも知れない。
それも選択肢の一つであり、オレに取れる
手のひとつだ。
王都へ戻り、護衛騎士の任を解かれた後に
どうすべきか。この先のことに思いを
巡らせながら、オレはただひたすらに
ユーリ様を見つめていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『・・・で、空に向かって叫んだら雷が落ちたと』
「はい、間違いありません。」
鏡の向こうではシグウェルさんが淡々と
私の話を無表情で紙に書き留めている。
くっ、冷静にまとめられればまとめられるほど
恥ずかしくなるのはどうしてだろうか。
「私の言葉に呼応するみたいに山全体に
雷が落ちました。そこまでするつもりは
なかったんですけど」
でも、むしゃくしゃしてやった。
後悔はしていない。
口には出さないけどそう思っている私の心境は
テレビでよく見る犯罪者の自供と同じそれである。
刑事長、私にカツ丼を出してやって下さい・・・。
ああ、カツ丼食べたいな。この世界には
ないんだろうけども。
『酒を飲んだことによる力の解放か。
無意識のうちに制御されているか、枷になっていた
何かが飲酒によって外れて、与えられている
加護の力が溢れ出したのか?
それだけ大きな力を使っても魔力切れを
起こしていないところを見ると、
グノーデル神の加護の力にはまだ余裕があるな。
さすが、勇者様が素手で竜を殴り殺すだけの
加護の力だ。俺もぜひ目の前で見てみたかった。』
本当に残念そうに言うシグウェルさんなら、
きっとユリウスさんみたいに勇者様の遺物を
持った状態で雷に打たれても面白がりそうだ。
「いつものこの姿に戻っちゃったら、どうすれば
グノーデルさんの力を引き出せるのかは
やっぱりよく分からないんですけどね・・・。」
『・・・考えられるのは』
私から聞き取ったメモを見返しながら
シグウェルさんは言う。
『君が加護の力を使う時、いつも何かを思って
それが素直に反映されているだろう?
今回も何か強く思うところがあってそれが
グノーデル神の力の解放に繋がったのでは?』
飲酒はその感情なり何なりをより
増幅させたのかも知れない。
そう言われた。あの時思っていた「何か」で
身に覚えがあるのは一つしかない。
『心当たりがありそうだな』
さすがシグウェルさん、私の動揺を見逃さない。
「・・・あの時はリオン様に腹を立てていて。
それで、その怒った状態でお酒を飲んだんです。
言われてみれば、怒っていたから私の力も
攻撃性を増していたのかも・・・」
『なんだそれは。殿下に対してそんな事を
思っていたのか?』
鏡の向こうでシグウェルさんが目を丸くしている。
そんな珍しい表情をさせるってことは、
やっぱり一国の王子様に怒るとかないよね⁉︎と
私も少し焦る。いや、後悔はしてないんだけども。
「いっ、色々あったんですよ!」
『詳しくは聞かないが・・・だがなるほど、
少し分かった気がする。君の中のグノーデル神の
力は本能に近い感情の動きに左右されるところが
あるんだろう。』
「本能?」
『今回で言えば怒りだ。グノーデル神は戦神。
闘争心や怒りはグノーデル神の司るところだ。
君が本能的に感じた怒りはそのまま神の力に
直結してその加護を降ろしたんじゃないか?』
なるほど。普段あんな風に誰かや何かに対して
怒ることはないから今までグノーデルさんの
力を引き出すところまでいかなかったのか。
「なんだか分かったような気がします。
でも何かに対して怒って、その状態で
お酒を飲んだからグノーデルさんの力を
使えたって言うのならやっぱり普段は
その力を使う機会はないのかも・・・」
『いいんじゃないか?イリューディア神が
君に求めているのは勇者様のように魔物を
倒すことではないのだろう?
とりあえず、グノーデル神の加護の力が
その身に備わっていて、いざと言う時は
使えることが分かっただけでも収穫だ。』
そう言ってもらえて安心する。
良かった、そうなんだよ私はこの世界を
豊かにするお手伝いをイリューディアさんに
頼まれたのであって、魔物を倒せとは
言われていない。
グノーデルさんの加護の力があるからと、
勇者様みたいに竜退治だなんだという
役割まで期待されてしまったら
どうしようかと思ったよ。
『ただ気になるのはそれだ』
胸を撫で下ろした私にシグウェルさんが続けた。
見つめているのは、私の前に置かれている
真ん中から真っ二つに割れた魔除けの結界石。
『カイゼル殿を助けた時ではなくて、ヨナス神の
夢を見て目覚めた時に割れていたんだったな。』
「そうです、ヨナスの出てくるなんか怖い夢を見て
その時に鈴の音がしました。それで、起きてみたら
これが割れちゃってて・・・」
「先日君は王都で大規模な癒やしの力を使い、
今回はグノーデル神の力を使った。もう一つ、
君の中にはヨナス神の力もあるはずだから
自分の力が弱まるのを恐れたヨナスが君の意識に
介入しようとしたのを結界石が弾いたのかもな。』
「カイゼル様を助けた時、最後にあの紫色の
霧みたいなのを吸い込んだのがやっぱり
悪かったのかな・・・」
思い当たるのはそれしかない。
そのせいで内容は忘れたけど、何か変な夢を見て
ヨナスにつけ込まれそうになったのかも。
『そうだな。セビーリャ族が割った物の欠片は
ユリウスにも見せてもらったが、ヨナス神の
古い偶像だった。様式から見てルーシャ国で
作られた物ではなかったから、どこかから
手に入れて持ち込み、ダーヴィゼルドや
この国に混乱をもたらそうとしたんだろう。
まったく厄介な事をしてくれる。』
持ち込んだ当の本人が魔物に変わってしまい
すでに討伐されてしまっているので、
どこから持ち込まれたものかも分からないらしい。
『今回、運が悪かったのは持ち込まれたあれが
かなり古い年代ものでヨナス神の力が濃く
凝縮されていた祭祀用の偶像だった事と、
それの影響を受けたのがヒルダ様より魔力が
弱いとは言え、ダーヴィゼルドの由緒正しい
血筋の貴族であるカイゼル様だったと言うことだ。
そのおかげで滅多にはない悪影響を受けたんだろう』
「じゃあ、ほかの魔力がある人も影響を
受ける可能性があるんですか?」
『今回のような年代モノでヨナス神の力が
込められている品物はそうそう無いと思うから
大丈夫だと思うが・・・もしまた何かあれば、
その時は再度君の出番だな。』
「ええ・・・」
またお酒の力に頼ってグノーデルさんの加護の力を
使うのはちょっと・・・。
『万が一の場合だ。それより、ヨナス神の力が
眠っている君の意識に介入してその力を強めようと
している事の方が厄介だ。早々にまたノイエから
良質な結界石を取り寄せて魔除けを作ろう。
・・・と、今回はこれくらいだな。他に
疑問が出来たらそれはこちらに帰って来てから
聞く事にする。
あと何か、君から聞きたい事は?』
私から聞き取った事をまとめた用紙を整理して
片付けに入り始めたシグウェルさんに
あの!と思い切って声を掛ける。
このために私はユリウスさんもシェラさんも
同席させずに一人でシグウェルさんと
面談していたのだ。
「私が寝ている間にシグウェルさんの実家から
贈られてきたお見舞い品についてなんですけど‼︎」
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