84 / 709
第七章 ユーリと氷の女王
4
しおりを挟む
深刻そうな話の腰を折るように
つい異世界結婚事情に夢中に
なってしまったけど、
一通りそのことについての説明をした
リオン様は、すぐに北方守護伯の
ヒルダ様と連絡を取ると言って
王宮へと向かった。
魔導士さんが魔法と鏡を使って
遠く離れた所と連絡が取れる、
テレビ電話みたいな仕組みのもので
話し合いをするらしい。
レジナスさんも伴って出掛け、
すぐに戻ると言ったけど
それまでの間はシェラさんと
2人で留守番だ。
「おそらくこのままですと
ユーリ様はダーヴィゼルド公爵の所へ
行くことになりますね。」
お茶を飲みながらシェラさんは
静かにそう言った。
「ダーヴィゼルドの女公爵ヒルダ様は
大層な魔力持ちで大概のことなら
自ら解決するお方です。
過去には騎士団を率いて竜退治まで
なされたほどの方で、その功績により
伯爵から公爵へ昇爵されたのです。
その方が、わざわざ黒封筒で王家と
癒し子様に助けを求めるなど
相当なことがあったのでしょう。」
私は全然構わない。むしろ私の力が
役立てるのならいくらでも使って欲しい。
リオン様にも、必要と判断したら
すぐにでも私を北方へ行かせて
欲しいとさっき伝えた。
「ここからそこまではどれくらいの
時間がかかりますか?」
「通常、馬車で向かえば休憩も含めて
2日近くかかりますね。
先日デレクがオレ達の北方演習に
途中から合流しましたが、その時
デレクが使った山道を単騎駆けで
必要最小限の休息にすれば1日近く
短縮はできますが・・・」
まさかそちらの方法をお考えで?
シェラさんの瞳がそう問いかけてきた。
そのまさかである。幸いにも少しだけ
成長した今の姿なら、少なくとも
10歳児の姿よりも多少の無理は
きくんじゃないだろうか。
「シェラさんもその道は分かりますか?
分からなければ、デレクさんと」
「オレ以外にその役目は譲りませんよ」
被せ気味にきっぱりはっきりと
言い切られた。
うん、そう言うんじゃないかって
気はしたよ・・・。
「本気ですかユーリ様!」
シンシアさんに心配された。
「今の時期、北の方はそろそろ雪も
ちらつく季節です。王都よりも
遥かに寒いですし、道程も馬車ではなく
馬だなんて・・・」
それでも、私が本気だと分かっている
からなのか何を持っていくべきなのかを
シンシアさんはあれこれ書き出し始めた。
それを見ながらシェラさんは話す。
「現在イリヤ殿下はルーシャ国の
南部地方を視察しながら魔物討伐に
行っておいでです。
となれば、リオン殿下とその護衛騎士
レジナス、騎士団長は王都を
空けるわけにはまいりません。
手が空いているのは長期演習明けの
キリウ小隊か騎士団副団長ですが、
そうなりますと先のリオン殿下との
約束通りオレがユーリ様の
臨時の護衛騎士として同行して
当然ですからね。ふつつか者ですが、
よろしくお願いいたします。
誠心誠意、忠信を持って
仕えさせていただきます。」
お嫁にでも来るのかな?と言うセリフを
吐いてシェラさんは私に嫣然と微笑む。
同行できるのが嬉しくてたまらないと
言った風で、緊急事態で出掛けるという
緊張感が全くない。
「ユーリ様が先のノイエ領視察に
使った馬があるでしょう?あれは
速いだけでなく体力もありますので、
普通の馬を使うよりも休息を挟む時間を
最小にできます。オレがユーリ様と
2人乗りをして、同行はとりあえず
デレクのみでダーヴィゼルド公爵領へ
向かえば相当時間を短縮出来ますが。
・・・かなりの強行軍になりますよ、
その覚悟はおありですか?」
微笑む顔は優しげだけど、
その金色の瞳は私を試すように
見つめている。
「やります、頑張ります。」
しっかりと見つめ返して頷いた。
必要な時に使わない力なら、
最初からないのと同じだ。
迷いなく答えた私を眩しいものを
見るように目を瞬くと、シェラさんは
すっと私の前に跪いた。
そのまま流れるような所作で
私の手を取り口付けたシェラさんは、
私の手の甲を自分の額に
押しいただく。
うわ、また一体何をそんなに
仰々しいことを⁉︎
ひんやりとして滑らかな白いおでこに
触れた私の手を、シェラさんの
サラサラした紫色で手触りの良い
髪の毛が隠す。
思わず目をまん丸にして
固まってしまった私に構わず
シェラさんは続けた。
「さすがはオレの女神。
我が身を惜しまず助力するその姿は
この醜い世界に輝きを放ち人々を導く、
一筋の美しい星の光です。
オレにあなたの万分の一でもいいので
その清らかさを分けて欲しいものです」
大袈裟過ぎる!癒し子原理主義者って
なんて厄介なんだ・・・!と思ったものの
どうすればいいのか分からないので
下手に動けないでいるところに、
ちょうどリオン様とレジナスさんが
戻ってきた。
「・・・少し目を離している間に
また一体シェラは何をしているの?」
リオン様が呆れている。
「オレの女神に祈りと感謝を
捧げておりました。」
「やめて下さいよ‼︎」
当然と言った風のシェラさんに
さすがにたまらなくなって声を上げた。
この人はまさかダーヴィゼルド領に
行っても他の人達の前でこんな事
したりしないよね⁉︎
・・・いや、やりかねない。
私は恥ずかしくて赤面してしまった。
「わ、私は神様とかじゃないですから!
あんまり大袈裟過ぎると恥ずかしいので
こういうのは本当にやめて下さいね⁉︎」
「薔薇色に染まった頬が
大変美しいですね、ユーリ様。」
「シェラさん、人の話聞いてます⁉︎」
「はい、聞いております。
ユーリ様の口からオレの名が
呼ばれるなんて夢のようです。
もっと呼んで下さい。」
「リ、リオン様!」
ダメだ、何を言ってもシェラさんには
自分にいいように聞こえているらしい。
たまらずリオン様にヘルプを
求めてしまった。
私がそんな風にリオン様に助けを
求めるのは珍しいので、
待ってましたとばかりに
すかさず抱き上げられる。
「シェラ、ユーリは大袈裟に
崇められるのは本当に嫌なんだよ。
このままだと君、ユーリに嫌われて口を
聞いてもらえなくなるけどいいの?
そうしたらダーヴィゼルド領には
君以外の騎士をユーリに付けるよ?」
リオン様の言葉にハッとする。
「リオン様、それじゃやっぱり・・・」
「そう。ユーリには申し訳ないけど
なるべく早くダーヴィゼルド領へ
向かってもらわないといけなそうだ。
カイゼル殿の状態が思ったより
深刻らしい。本当は僕やレジナスも
同行したいんだけど、兄上が不在の
王都を空けるわけにはいかないんだ。
・・・大丈夫?」
シェラさんの言った通りになった。
私を抱き上げているリオン様の腕に
少し力がこもったような気がする。
心配そうに覗き込まれたけど、
こちらは元より行くつもりだったのだ。
こくりと頷く。
「勿論です。すぐにでも
出発できるよう準備しますよ!」
シェラさんと馬に2人乗りをして
山道を行けば相当早く着くという、
さっきの話をリオン様にもする。
「山道か・・・。確かにそちらは
馬で抜けられる分早く着くけど、
乗馬し慣れていないとかなり
大変だと思うよ。それでも行くの?」
心配して渋るリオン様にシェラさんが
礼を取って説明をしてくれる。
「つきましては、ノイエ領視察に
使われたあの馬をお貸しいただけますか?
あれなら速い分、ユーリ様の負担に
ならないように途中で数度の休憩を
挟みましても普通の馬で行くより
遥かに早く着くはずです。
また、同行はデレクのみとし荷物も
最小限、ユーリ様の侍女と
ダーヴィゼルド滞在に必要な物は
追って馬車を走らせていただけますか?」
そのままちらりとシェラさんが
シンシアさんに視線を向ければ、
シンシアさんも心得たとばかりに
頷き返した。
有能な侍女のシンシアさんはすでに
荷物のリストアップは終えたらしく、
さっきまで書き出していたメモは
他の侍女さんに手渡し済みだ。
馬で行きたいという私の希望に
シェラさんの説明、シンシアさんの
準備の段取りの良さという
連携の取れた動きにリオン様も
諦めてため息をついた。
「まったく、ほんの少しの間席を
外していただけなのに、いつの間に
話を詰めていたの?
そこまで決められていたら
僕が口出しは出来ないね。
何より癒し子の希望が第一優先だ。
兄上が戻られれば僕もそちらに
合流できるんだけど、それは南部の
魔物討伐の状況次第になるし・・・。
カイゼル殿の状態によりユーリが
どのくらいダーヴィゼルドに
滞在することになるのか、
その日数も今はまだ分からない。
・・・本当に気を付けてね、ユーリ。」
なんだか少しリオン様が寂しそうだ。
そう言えば、なんだかんだで
この奥の院に越してきてからは
三日と開けず、毎日のように
リオン様と顔を合わせている。
ノイエ領への視察も一緒だったし。
「あれ?もしかして寂しいんですか?」
私よりもずっと大きい大人なのに
まるで小さな子供みたいに寂しげな
表情だ。
ちょっと意外だ。そう思って言ったら
「寂しい。ユーリと離れるなんて
考えたこともなかった。
早く会えるように頑張ってきてね。」
即答である。
恥ずかしげもなく言うあたりが
王子様というか、育ちが良いというか。
思いのほか真顔でそう言われ、
ぎゅっと抱きしめられてしまった。
後ろのレジナスさんも同意するように
頷いている。
あ、あれ?そんな真面目に言われるとは
思わなかった。
面食らった私は驚いてただこくこくと
無言で頷くことしか出来なかった。
つい異世界結婚事情に夢中に
なってしまったけど、
一通りそのことについての説明をした
リオン様は、すぐに北方守護伯の
ヒルダ様と連絡を取ると言って
王宮へと向かった。
魔導士さんが魔法と鏡を使って
遠く離れた所と連絡が取れる、
テレビ電話みたいな仕組みのもので
話し合いをするらしい。
レジナスさんも伴って出掛け、
すぐに戻ると言ったけど
それまでの間はシェラさんと
2人で留守番だ。
「おそらくこのままですと
ユーリ様はダーヴィゼルド公爵の所へ
行くことになりますね。」
お茶を飲みながらシェラさんは
静かにそう言った。
「ダーヴィゼルドの女公爵ヒルダ様は
大層な魔力持ちで大概のことなら
自ら解決するお方です。
過去には騎士団を率いて竜退治まで
なされたほどの方で、その功績により
伯爵から公爵へ昇爵されたのです。
その方が、わざわざ黒封筒で王家と
癒し子様に助けを求めるなど
相当なことがあったのでしょう。」
私は全然構わない。むしろ私の力が
役立てるのならいくらでも使って欲しい。
リオン様にも、必要と判断したら
すぐにでも私を北方へ行かせて
欲しいとさっき伝えた。
「ここからそこまではどれくらいの
時間がかかりますか?」
「通常、馬車で向かえば休憩も含めて
2日近くかかりますね。
先日デレクがオレ達の北方演習に
途中から合流しましたが、その時
デレクが使った山道を単騎駆けで
必要最小限の休息にすれば1日近く
短縮はできますが・・・」
まさかそちらの方法をお考えで?
シェラさんの瞳がそう問いかけてきた。
そのまさかである。幸いにも少しだけ
成長した今の姿なら、少なくとも
10歳児の姿よりも多少の無理は
きくんじゃないだろうか。
「シェラさんもその道は分かりますか?
分からなければ、デレクさんと」
「オレ以外にその役目は譲りませんよ」
被せ気味にきっぱりはっきりと
言い切られた。
うん、そう言うんじゃないかって
気はしたよ・・・。
「本気ですかユーリ様!」
シンシアさんに心配された。
「今の時期、北の方はそろそろ雪も
ちらつく季節です。王都よりも
遥かに寒いですし、道程も馬車ではなく
馬だなんて・・・」
それでも、私が本気だと分かっている
からなのか何を持っていくべきなのかを
シンシアさんはあれこれ書き出し始めた。
それを見ながらシェラさんは話す。
「現在イリヤ殿下はルーシャ国の
南部地方を視察しながら魔物討伐に
行っておいでです。
となれば、リオン殿下とその護衛騎士
レジナス、騎士団長は王都を
空けるわけにはまいりません。
手が空いているのは長期演習明けの
キリウ小隊か騎士団副団長ですが、
そうなりますと先のリオン殿下との
約束通りオレがユーリ様の
臨時の護衛騎士として同行して
当然ですからね。ふつつか者ですが、
よろしくお願いいたします。
誠心誠意、忠信を持って
仕えさせていただきます。」
お嫁にでも来るのかな?と言うセリフを
吐いてシェラさんは私に嫣然と微笑む。
同行できるのが嬉しくてたまらないと
言った風で、緊急事態で出掛けるという
緊張感が全くない。
「ユーリ様が先のノイエ領視察に
使った馬があるでしょう?あれは
速いだけでなく体力もありますので、
普通の馬を使うよりも休息を挟む時間を
最小にできます。オレがユーリ様と
2人乗りをして、同行はとりあえず
デレクのみでダーヴィゼルド公爵領へ
向かえば相当時間を短縮出来ますが。
・・・かなりの強行軍になりますよ、
その覚悟はおありですか?」
微笑む顔は優しげだけど、
その金色の瞳は私を試すように
見つめている。
「やります、頑張ります。」
しっかりと見つめ返して頷いた。
必要な時に使わない力なら、
最初からないのと同じだ。
迷いなく答えた私を眩しいものを
見るように目を瞬くと、シェラさんは
すっと私の前に跪いた。
そのまま流れるような所作で
私の手を取り口付けたシェラさんは、
私の手の甲を自分の額に
押しいただく。
うわ、また一体何をそんなに
仰々しいことを⁉︎
ひんやりとして滑らかな白いおでこに
触れた私の手を、シェラさんの
サラサラした紫色で手触りの良い
髪の毛が隠す。
思わず目をまん丸にして
固まってしまった私に構わず
シェラさんは続けた。
「さすがはオレの女神。
我が身を惜しまず助力するその姿は
この醜い世界に輝きを放ち人々を導く、
一筋の美しい星の光です。
オレにあなたの万分の一でもいいので
その清らかさを分けて欲しいものです」
大袈裟過ぎる!癒し子原理主義者って
なんて厄介なんだ・・・!と思ったものの
どうすればいいのか分からないので
下手に動けないでいるところに、
ちょうどリオン様とレジナスさんが
戻ってきた。
「・・・少し目を離している間に
また一体シェラは何をしているの?」
リオン様が呆れている。
「オレの女神に祈りと感謝を
捧げておりました。」
「やめて下さいよ‼︎」
当然と言った風のシェラさんに
さすがにたまらなくなって声を上げた。
この人はまさかダーヴィゼルド領に
行っても他の人達の前でこんな事
したりしないよね⁉︎
・・・いや、やりかねない。
私は恥ずかしくて赤面してしまった。
「わ、私は神様とかじゃないですから!
あんまり大袈裟過ぎると恥ずかしいので
こういうのは本当にやめて下さいね⁉︎」
「薔薇色に染まった頬が
大変美しいですね、ユーリ様。」
「シェラさん、人の話聞いてます⁉︎」
「はい、聞いております。
ユーリ様の口からオレの名が
呼ばれるなんて夢のようです。
もっと呼んで下さい。」
「リ、リオン様!」
ダメだ、何を言ってもシェラさんには
自分にいいように聞こえているらしい。
たまらずリオン様にヘルプを
求めてしまった。
私がそんな風にリオン様に助けを
求めるのは珍しいので、
待ってましたとばかりに
すかさず抱き上げられる。
「シェラ、ユーリは大袈裟に
崇められるのは本当に嫌なんだよ。
このままだと君、ユーリに嫌われて口を
聞いてもらえなくなるけどいいの?
そうしたらダーヴィゼルド領には
君以外の騎士をユーリに付けるよ?」
リオン様の言葉にハッとする。
「リオン様、それじゃやっぱり・・・」
「そう。ユーリには申し訳ないけど
なるべく早くダーヴィゼルド領へ
向かってもらわないといけなそうだ。
カイゼル殿の状態が思ったより
深刻らしい。本当は僕やレジナスも
同行したいんだけど、兄上が不在の
王都を空けるわけにはいかないんだ。
・・・大丈夫?」
シェラさんの言った通りになった。
私を抱き上げているリオン様の腕に
少し力がこもったような気がする。
心配そうに覗き込まれたけど、
こちらは元より行くつもりだったのだ。
こくりと頷く。
「勿論です。すぐにでも
出発できるよう準備しますよ!」
シェラさんと馬に2人乗りをして
山道を行けば相当早く着くという、
さっきの話をリオン様にもする。
「山道か・・・。確かにそちらは
馬で抜けられる分早く着くけど、
乗馬し慣れていないとかなり
大変だと思うよ。それでも行くの?」
心配して渋るリオン様にシェラさんが
礼を取って説明をしてくれる。
「つきましては、ノイエ領視察に
使われたあの馬をお貸しいただけますか?
あれなら速い分、ユーリ様の負担に
ならないように途中で数度の休憩を
挟みましても普通の馬で行くより
遥かに早く着くはずです。
また、同行はデレクのみとし荷物も
最小限、ユーリ様の侍女と
ダーヴィゼルド滞在に必要な物は
追って馬車を走らせていただけますか?」
そのままちらりとシェラさんが
シンシアさんに視線を向ければ、
シンシアさんも心得たとばかりに
頷き返した。
有能な侍女のシンシアさんはすでに
荷物のリストアップは終えたらしく、
さっきまで書き出していたメモは
他の侍女さんに手渡し済みだ。
馬で行きたいという私の希望に
シェラさんの説明、シンシアさんの
準備の段取りの良さという
連携の取れた動きにリオン様も
諦めてため息をついた。
「まったく、ほんの少しの間席を
外していただけなのに、いつの間に
話を詰めていたの?
そこまで決められていたら
僕が口出しは出来ないね。
何より癒し子の希望が第一優先だ。
兄上が戻られれば僕もそちらに
合流できるんだけど、それは南部の
魔物討伐の状況次第になるし・・・。
カイゼル殿の状態によりユーリが
どのくらいダーヴィゼルドに
滞在することになるのか、
その日数も今はまだ分からない。
・・・本当に気を付けてね、ユーリ。」
なんだか少しリオン様が寂しそうだ。
そう言えば、なんだかんだで
この奥の院に越してきてからは
三日と開けず、毎日のように
リオン様と顔を合わせている。
ノイエ領への視察も一緒だったし。
「あれ?もしかして寂しいんですか?」
私よりもずっと大きい大人なのに
まるで小さな子供みたいに寂しげな
表情だ。
ちょっと意外だ。そう思って言ったら
「寂しい。ユーリと離れるなんて
考えたこともなかった。
早く会えるように頑張ってきてね。」
即答である。
恥ずかしげもなく言うあたりが
王子様というか、育ちが良いというか。
思いのほか真顔でそう言われ、
ぎゅっと抱きしめられてしまった。
後ろのレジナスさんも同意するように
頷いている。
あ、あれ?そんな真面目に言われるとは
思わなかった。
面食らった私は驚いてただこくこくと
無言で頷くことしか出来なかった。
51
お気に入りに追加
1,916
あなたにおすすめの小説
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
暗闇に輝く星は自分で幸せをつかむ
Rj
恋愛
許婚のせいで見知らぬ女の子からいきなり頬をたたかれたステラ・デュボワは、誰にでもやさしい許婚と高等学校卒業後にこのまま結婚してよいのかと考えはじめる。特待生として通うスペンサー学園で最終学年となり最後の学園生活を送る中、許婚との関係がこじれたり、思わぬ申し出をうけたりとこれまで考えていた将来とはまったく違う方向へとすすんでいく。幸せは自分でつかみます!
ステラの恋と成長の物語です。
*女性蔑視の台詞や場面があります。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿で両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる