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開花14

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 アーキアが目を覚ました時を同じくしてのこと
 りえは一人トラウマの世界で震えていた
 彼女は特に親に虐待されていたわけでもいじめられていたわけでもない
 地球の、ごく普通の少女だ
 だが彼女には唯一トラウマと呼ぶべき出来事があった
 彼女は一度誘拐されているのだ
 彼女が10歳のころのこと、学校帰りに突如男に攫われた
 車にいきなり乗せられ、連れ去られたのだ
 男の目的は性的なもの
 幼いりえにとっては恐怖そのものだっただろう
 幸いにも目撃していた男性により追跡され、小さなアパートに連れ込まれそうになるところを、すんでのところで救出された
 それこそが彼女最大のトラウマ
 そしてここは、その連れ去られた道、アパートだ
 今現在彼女はその男の幻影に追われている
 どこへ逃げてもその男は追ってくる
 さらには訳の分からない力を使って恐怖を倍増させてきた
「怖い、怖いよ。助けて生田目さん・・・」
 救出してくれ男は生田目と言い、りえにとってはヒーローのような男性だ
 りえと同じくらいの娘がいるらしく、目撃したからには放ってはおけなかったらしい
 だがこのトラウマの世界に彼はいない
 どこまでも追ってくる男から逃げつつ、隠れながらあたりの様子をうかがった
「どこだいりえちゃぁあん。ほら、お兄さんといいことしようよ」
「う、うう、怖い・・・」
 男はりえの名前を呼びながら探している
 この男はずっとりえを狙っていたようで、綿密な計画の元りえを攫ったのだが、りえの強運が働いたのか、目撃者の生田目によって救われた
 りえは泣きながら男をちらりと見る
 しかしそこに男はいなかった
「見ぃいいいつけたぁ」
 なんと男はヤモリのように壁に張り付き、舌を長く伸ばしてりえの頬をぺろりとなめた
「ひぃいい!!」
 りえは恐怖のあまりその場から動けなくなる
 しかしここでふと自分の力を思い出した
「そうだ・・・。私は守られてばかりの弱い自分にサヨナラしたんだ。だから、きっと大丈夫!」
 自分に言い聞かせるように奮い立ち、男の顔に手を触れた瞬間、男が膨れ上がった
「そう、これが私の開花した力なのね? エアプール」
 男はまるで風船のようにフワフワと浮かび上がって空高くに消えてしまった
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