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始動

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 世界の端
 そこには何もない
 そしてそこは彼にとって最も心地よい場所だった
「ねえ母さん、リルカが蘇った。これも母さんの計画通りなのかな?」
「ええアウル、あなたは何も心配しなくていいわ。守り人が集まる。そしたらどうなると思う? 泳がせてるあいつ、あいつが守り人の力を手に入れるはずよ。あれだあの女は使える。裏切りなんてとっくにばれてるとも知らずにね」
「さすが母さんだ。じゃあ僕らはこれからどうするの?」
「ああ私のアウル、慌てなくていいの。全部母さんに任せなさい。あなたが幸せに、そう、あなたがただ幸せになってくれれば私はそれで充分。ほらアウル、抱きしめさせて」
 二人はしばらく抱き合うと、アウルは満足したようにふぅと息を吐いた
 愛を感じるのは母にだけ、愛を注ぐのも母にだけ
(愛しいアウル、私の子。きっとあなたを)
 アウルの母エティには少し罪悪感があった
 息子を騙しているという罪悪感が
 彼のためならば自分は存在ごと消滅しようがかまわない
 人だって殺してみせるだろう
 誰がどうなろうが、世界がなくなろうが構わないとさえ考えている
 だが、彼女の悪意の中にほんの少し残った善意がその罪悪感を産む
 その善は日に日に大きく自分の中で膨らんでいた
 息子にこんなことをさせていいのか? 彼を止めるのが母親としての役目ではないのか?
 そんな考えがずっと消えないのだ
「どうしたの母さん? 何か悩み?」
「いいえアウル、大丈夫、大丈夫よ。きっとあなたにいいようになる」
「うん、それじゃあ行こう。まずは僕が力を与えちゃったあいつらからかな? まさか世界の種があんな形で力を与えるとは思っても見なかったよ。だがまあ収穫だよね。種だけに」
「アウル、ギャグのセンスはその、ごめんなさい、私の遺伝子をしっかり継いでしまったのね」
 二人の間に気まずい沈黙が流れるが、アウルは何事もなかったように続けた
「それじゃあ母さんはここで見てて、僕が作ったあいつらが、世界の種に選ばれた者達を殺すのを」
「ええ、アウル」
 アウルはエフィの手をギュッと握ると、世界の種に選ばれた者達を消滅させるため、拠点へと戻って行った
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