上 下
695 / 1,022

大勇者と救世者12

しおりを挟む
 炎が渦巻き、大量に焼死体が転がる街
 アイシスが駆け付けたときすでに街は悲惨なありさまだった
 仲間と共に街に生き残りがいないかを探すため一時的にバラバラになる
「それじゃあ生き残りを見つけたらこの広場へ集合ってことで」
「ああ分かった。セナはここで待っていてくれ。怪我人を見つけたら回復を頼む」
「はい! 任せてください!」
「それじゃあ僕はアイシスちゃんと一緒に行こうかな。えーっと風のバリアっと」
 少しでも触れようものならズタズタに切り裂かれる風の渦巻き
 それでセナを守るように囲った
「ありがとうデレッド」
「この焼き後、高熱で焼かれてるんだけど、この風のバリアなら大丈夫だと思うよ」
「俺は一人で大丈夫だ。炎程度にやられるような鍛え方はしてないからな」

 アイシスはデレッドと共に東へ、アーノルドは西へ向かう
「酷い有様だね。ところでアイシスちゃん、大勇者の調子はどう?」
「どうって? 俺は別に普通に・・・。いや、成すべくしてならなければならなかった。なんつーかうまく言えねぇけどよ、俺はただ守りたいと思っただけなんだ」
「そうか、僕もそうだ。僕も家族を守りたいからね」
 デレッドは自分の元居た世界では勇者だった
 自らの世界を平和に導いたのち、救世界にスカウトされた
 風の力、ありとあらゆる風を操る彼の力は強力、ゆえにウルにも何度か狙われたのだが、救世界の力を借りて撃退している
 今回のこの世界での任務は彼にとっても適任といえる
 何せこの世界に来ているウルの大幹部、花のラナマーヤは火を操る
 強大な炎だろうとデレッドの風の力ならば真空空間を発生させて対処可能だ
「アイシスちゃん、見てほら、あそこ」
 デレッドが何かを見つける
 その指示した方向には馬鹿笑いしながら人をゆっくりと焼き、苦しめている少女といってもいいほどの年齢の女が立っていた
「あのやろう!」
 すぐに出て行こうとするのをデレッドが止める
「待って、僕があいつを止めるからとどめを頼む」
「分かった」
 デレッドが風の力で焼かれている人を救出
 なんとその人はまだ幼い少年だった
「何、してんの? 私の玩具、返してよ」
「救いようがないね」
 周囲で燃えていた炎を風で消し飛ばすと風の牢獄でラナマーヤを捕まえた
「なによこれ! 出せ! 出せぇ!」
 風の牢獄を炎で壊そうとはするが、全ての炎が弾かれる
「この! 死ね!」
「無駄だよ。僕の風は頑強なんだ。アイシス、頼んだ」
「ああ!」
 風の牢獄の上から馬の黄金鎧を着たアイシスがレーザーのようなものを放とうと飛び上がる
「ひっ、やめ」
「人を殺しすぎたな。どこの言葉だったか、年貢の納め時ってやつだよ」
「この! 糞女ガァアア!!」
 上に向かって炎を放つがそれごとレーザーに飲み込まれるラナマーヤ
「アアアアアア!!!」
 ジュウと皮膚が焼ける音がしてラナマーヤは泣き叫んだ
「こんな子供が、人をたくさん殺しているなんて・・・」
「ああ、こいつに洗脳されたような痕跡は一切ない。自分から殺してたんだよこいつは! 楽しんでな!」
「グウウウアアア!! 熱いぃい!!! 痛い痛い痛い痛い痛い!!」
 体が焦げ、骨がむきだす
 悲鳴は辺り一帯に響いて断末魔としてアイシスたちの耳に残る
「ごんな! どごろで! じんでだまるがぁああ!!!」
 焦げた手を上に掲げるラナマーヤ
 その腕からは超高温、今までの比ではない温度の炎が吹きあがり、レーザーを飲み込んだ
「なんだと!」
 驚いた
 アイシスのレーザーは炎とは比べ物にならないほどの質量を持った超効能度エネルギーだ
 それを炎で包み込むなどあり得ないこと
「あああがああ、わだじのぉお、可愛い体がぁ、こんなにぃいい、ゆるざないぃい、ひひゃ、ひひひひひひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
 狂ったように笑うラナマーヤ
 可愛い顔だったが今や見るも無残に焼けただれ、ケロイドによって口半分も片目も塞がっている
 手は骨がむき出しに、ドロドロとした体によってまるでモンスターのようだ
 それが大笑いしながら滅茶苦茶に超高温の炎の塊を放つ
「くそ、何が起こったんだ」
「恐らく死への恐怖があいつの力を進化させたんだ。ごくまれにそう言うことが起こるんだ。正義だろうと悪だろうとね」
「く、これじゃ近づけねぇ」
 襲われていた子供は風で守られているとは言うものの、炎によって気圧が変化し、その結界も解けそうだ
「早急に倒すぞ!」
「ああ、カマイタチ!!」
 鋭い鎌鼬を作り出すとラナマーヤに撃つ
「あひゃひゃ、こんなあああものぉおお!! ぎゃががが」
 ライターの火程度の炎でそれらを簡単に吹き飛ばす
「わだじが! あんだらみだいなのにぃ! やられるはずがないの! 全部ゴロズ!ぐるじめでごろず!」
 小さな炎をマシンガンのように打ち出す
 一つ一つがロケット砲のような威力がある
「クソ! 大丈夫かデレッド!」
「僕は大丈夫だから君は自分の身を守るんだ!」
 黄金鎧を換装しつつ様々な攻撃でラナマーヤを攻めるが、進化した彼女の能力でそれらを防がれてしまう
「どうする、どうすりゃいい、考えるんだ」
 死の恐怖がラナマーヤを大幅に強化してしまい、二人は攻めあぐねていた
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...