上 下
677 / 1,022

守り人10

しおりを挟む
 一つの世界でのウルの暗躍潰しを終えてニニミミはまた別の世界に来ていた
 七姉妹はそれぞれが世界の移動手段を持っている
 生体武器ではなく、異放の力としてだ
 渡った先の世界には数多の蟲がはびこっており、それらの中にはどうやら人間と同程度の知能を持った存在も確認できる
 街が形成され、巨大な甲虫などを家畜として農業などに使っているようだ
 知識ある昆虫の種族、インセクトイドのみが住む世界セクティ
「いっぱい人がいますね。それに街並みも素敵です」
 街は木々を使って作られており、ちゃんと自然が生かされているようだ
 この世界にいるインセクトイドたちは平和にほのぼのと暮らしているのだが、どうやらこの世界にまでウルは入り込んでいるらしい
 ウルは強力なインセクトイドの力に目をつけたのだろう
 争いは嫌いだが力は強いのがインセクトイドたちだった
「さて、やりますか」
 本をパラパラとめくるとそこにはウルが今この世界で何をしているのかが事細かに描かれていた
「ああまったくもう、とんでもないことしてますね。この子は、どうやら操られていますね。それからこっちは恐怖で支配・・・。まだほんの子供じゃないですか。酷いことを」
 ウルの中でも無理やり従わせられている者たちを的確に見つけ出すニニミミ
 まずはその子供達を保護することにした
 本をパチンと閉じると操られている少年の元へと瞬間的に移動する
 そして突如目の前に現れた本を持つ少女に少年と共にいたウルの幹部はかなり驚いていた
 少年を監視しているのであろう幹部を本の角で叩いてのすと虚ろな目の少年日本を翳す
「さてと、結構強力な洗脳のようですが、私の本の解析なら簡単に解けそうですね」
 ニニミミが本の力を使うと、少年の目に生気が戻り、そのまますーっと眠ってしまった
「少し本の中でじっとしていてくださいね。元の世界に返してあげますから」
 次に恐怖によって無理やり従わされている少女の元へ走ると横についていたウルの雑魚二人を蹴り上げて気絶させた
 少女はかなり怯えていて、ニニミミを見て悲鳴を上げていた
「可哀そうに、こんなに怯えて・・・。あなたお父さんとお母さんは?」
「う、うぐぅ、二人共私をかばって。うえええええん!」
 よほどひどい目に遭って来たのか、怯えて泣きじゃくる少女
「そう、辛かったのね。今はお眠りなさい。この子はそうね、あの世界で面倒を見てもらいましょう。あの世界の人々ならきっとこの子も大丈夫」
 眠った少女も本の中に保護するとウルの残党を一掃するため本で居場所を探った
 まだあと数人の幹部らしきウルが残っているようなのだが、その中の一人がかなりの力を持っていることが分かった
「これは骨が折れそうな敵ですね。まずは周りを叩いてこいつに取り掛かりますか」
 ニニミミの本には情報以外に絵も描かれる
 その絵は正確に敵の情報を示してくれるため、どこにいるか、どんな能力を使うのかまで手に取るようにわかる
 そのウルの残党の内のリーダーらしき男以外をすべて本の中に拘束
 それはあまりの速さに行われたことで、リーダーに気づかれることはなかった
 そしてすぐにリーダーの男の背後に現れるニニミミ
「誰だ!」
 男は振り向きざまに自分の能力でニニミミを殺そうと手を伸ばす
 彼の力は掴んだものを拡大縮小する能力で、掴んだものの一部だけを拡大縮小することができた
 つまり人を掴めば、内臓を肥大化させて内部から破壊したり、縮小して機能を停止させたりなど思いのままだ
 そして彼はその能力を使いこなしている
 周囲の空気を掴み、縮小してそこに真空を作り出すことができた
 ニニミミは腕を避けたが、やはり周囲が真空にされてしまう
「真空空間ですか。その程度で私はどうにもなりませんよ」
 もともと精神生命体であるニニミミだからこそこの空間には簡単に耐えることができた
 当然男は驚いたが、ニニミミが能力を使ったことであっけなく本の中に閉じ込められてしまう
「意外なほどあっさりでしたね・・・。それにしても主様、一体どこへ」
 これでまた一つの世界が救われたわけだが、目的の主がいないことにニニミミは少しだけ涙を流した
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

元公務員が異世界転生して辺境の勇者になったけど魔獣が13倍出現するブラック地区だから共生を目指すことにした

まどぎわ
ファンタジー
激務で倒れ、そのまま死んだ役所職員。 生まれ変わった世界は、魔獣に怯える国民を守るために勇者が活躍するファンタジーの世界だった。 前世の記憶を有したままチート状態で勇者になったが、担当する街は魔獣の出現が他よりも遥かに多いブラック地区。これは出現する魔獣が悪いのか、通報してくる街の住人が悪いのか……穏やかに寿命を真っ当するため、仕事はそんなに頑張らない。勇者は今日も、魔獣と、市民と、共生を目指す。

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

仔猫殿下と、はつ江ばあさん

鯨井イルカ
ファンタジー
魔界に召喚されてしまった彼女とシマシマな彼の日常ストーリー 2022年6月9日に完結いたしました。

エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸
ファンタジー
 普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。  海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。  その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。  もう一度もらった命。  啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。  前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。 ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています

処理中です...