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勇者の苦悩6
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レコの力を手に入れてから数日、いまだにこの力を扱いきれていなかった
レコの力がどう言ったものなのかは少し発動すれば理解はできたが、その扱いが難しかった
九つの力の塊を変質させる力
まず能力を発動させると体に九つの金色に光る玉がまとわりついて浮遊し始める
それら一つ一つは自在に変質させて操れるようで、動物の姿に変えたり武器に変えたりと多彩だ
しかし一つ操るだけでもかなりの魔力を失い、二つ目を操ろうとすると魔力不足で卒倒した
そのため常にキーラとリドリリがそばについてその都度フォローする
「くそ、魔力が、ゼェゼェ、全然足りやがらねぇ」
肩で息をしつつ地面に転がって悔しがるアイシス
キーラは濡れタオルを渡してリドリリは水をその横で飲ませる
「あまり根詰めては駄目ですよ。ほら、こちらにおやつを用意しましたのでみなで食べましょう」
リドリリが用意した紅茶とお菓子、疲れた体には最高のエネルギーになるよう考えられている
一時は魔王軍の戦闘隊長で最前線を駆けていたリドリリだが、本来の性格は女性らしく、趣味は料理とお菓子作りだった
そのためか幼いころから作り続けてきたお菓子は鬼ヶ島の達人料理人ソウカと比べても全く引けを取らない
むしろソウカと情報交換をしてお互いに高めあっているため、日々その腕前は上達していった
最近判明したことだが、達人が作る料理にはその料理によってさまざまな効果が出る
例えば体力や魔力を回復させたり、筋力を増強させたり、魔法の威力をあげたりと様々な効果をもたらす
どうやらリドリリのお菓子にもその効果が表れてきているようで、多少だがアイシスの魔力を少しずつ回復させていた
意図してやっているわけではないようだが、ちょうど今のアイシスには向いているお菓子だったのだ
「なんかリドリリのお菓子を食べるとスッと体が軽くなってくるんだよな。やっぱうまいもんってすごいよな」
アイシスも分からないなりに感覚で理解しているようだ
キーラの方はと言うと、夢中になって次から次へとお菓子を口に放り込み、口についた食べかすをリドリリに拭われていた
「さて、回復したことだし続きだな」
「もういいの?」
「ああ、なんだかこの力を手に入れてから回復も早くてな。すぐ元気になるぜ」
心配するキーラだったが、どうやら本当に回復した様子のアイシスを見て、頑張ってとエールを送って再びアイシスの見守りに徹した
それから約一か月の時間が経った
少しずつだがアイシスは金色の光の玉を操れるようになっていて、それぞれの玉を変質、ゆっくりとだがそれぞれをバラバラに動かせるまでに力を馴染ませていた
それに伴ってか魔力量も飛躍的に高まり、世界でも最高峰と言える魔力を手に入れている
自分の成長を確認し、嬉しそうにキーラにこれまでの修行の成果を見せる
「すごいアイシス! 私も見習わなくちゃ!」
これによりキーラもまた気合が入ったのか、リドリリとの戦闘訓練によりいっそう身が入るようになっていた
全ての玉が操れるようになった夜、久しぶりに夢を見た
信楽焼の狸のような置物がぽつんと置いてあり、それを不思議そうに眺めるアイシス
「何だこりゃ? 魔物の像かなんかか? それにしても・・・。なんて卑猥な像なんだよ」
アイシスの視線は像の下半身に向けられており、それには独特なシンボルが刻まれていた
顔を赤くし、手で目を覆うあたり乙女らしい行動を見せる
そんな彼女の足をツンツンと何かがつついた
「ん? なんだ?」
下に視線を移すとそこには前回のレコと同じく巫女服を着た狸耳の女の子がニコニコと笑っていた
「よっ!ですの」
「よ、よぉ」
「わしはポコですの。お主に力を与えるよう言われてますの」
小さな手でアイシスの足をポンポンと叩きフフフと笑うポコ
尻尾をフリフリと振っている様子が可愛らしいとアイシスはほんわかした
「さてアイシス、お主は見事レコの力をものにしたんですの。つまりはこれから先に進む権利を手に入れたんですの」
「これから先?」
「はいですの。レコの力は魔力を高めるために必要なことでしたの。今の魔力ならより受け取るのが難しい力を掴むことができますの!」
どうやら魔力を高めなければ手に入れることすら難しい力もあるらしく、そのためレコの力をしっかりと身につけさせたかったようだ
その結果、アイシスは更なる強化がなされた
「さて、お話はこれくらいにしてわしの力を受け取れですの」
ポコは手を伸ばし、アイシスの手を掴んだ
「いきますの」
ポコの体から金色に輝く狸がポンポコと飛び出し、それが光りの粒子となってアイシスの中へと吸収された
「さぁ目を覚ますですの。大勇者アイシス、期待しているですの!」
ポコが手を振ると、アイシスはそのまま夢の世界から現実へと引き戻された
目を覚ましたアイシスは自分の中に今の黄金狸の力が流れるのを確認し、新しい力にワクワクしていた
レコの力がどう言ったものなのかは少し発動すれば理解はできたが、その扱いが難しかった
九つの力の塊を変質させる力
まず能力を発動させると体に九つの金色に光る玉がまとわりついて浮遊し始める
それら一つ一つは自在に変質させて操れるようで、動物の姿に変えたり武器に変えたりと多彩だ
しかし一つ操るだけでもかなりの魔力を失い、二つ目を操ろうとすると魔力不足で卒倒した
そのため常にキーラとリドリリがそばについてその都度フォローする
「くそ、魔力が、ゼェゼェ、全然足りやがらねぇ」
肩で息をしつつ地面に転がって悔しがるアイシス
キーラは濡れタオルを渡してリドリリは水をその横で飲ませる
「あまり根詰めては駄目ですよ。ほら、こちらにおやつを用意しましたのでみなで食べましょう」
リドリリが用意した紅茶とお菓子、疲れた体には最高のエネルギーになるよう考えられている
一時は魔王軍の戦闘隊長で最前線を駆けていたリドリリだが、本来の性格は女性らしく、趣味は料理とお菓子作りだった
そのためか幼いころから作り続けてきたお菓子は鬼ヶ島の達人料理人ソウカと比べても全く引けを取らない
むしろソウカと情報交換をしてお互いに高めあっているため、日々その腕前は上達していった
最近判明したことだが、達人が作る料理にはその料理によってさまざまな効果が出る
例えば体力や魔力を回復させたり、筋力を増強させたり、魔法の威力をあげたりと様々な効果をもたらす
どうやらリドリリのお菓子にもその効果が表れてきているようで、多少だがアイシスの魔力を少しずつ回復させていた
意図してやっているわけではないようだが、ちょうど今のアイシスには向いているお菓子だったのだ
「なんかリドリリのお菓子を食べるとスッと体が軽くなってくるんだよな。やっぱうまいもんってすごいよな」
アイシスも分からないなりに感覚で理解しているようだ
キーラの方はと言うと、夢中になって次から次へとお菓子を口に放り込み、口についた食べかすをリドリリに拭われていた
「さて、回復したことだし続きだな」
「もういいの?」
「ああ、なんだかこの力を手に入れてから回復も早くてな。すぐ元気になるぜ」
心配するキーラだったが、どうやら本当に回復した様子のアイシスを見て、頑張ってとエールを送って再びアイシスの見守りに徹した
それから約一か月の時間が経った
少しずつだがアイシスは金色の光の玉を操れるようになっていて、それぞれの玉を変質、ゆっくりとだがそれぞれをバラバラに動かせるまでに力を馴染ませていた
それに伴ってか魔力量も飛躍的に高まり、世界でも最高峰と言える魔力を手に入れている
自分の成長を確認し、嬉しそうにキーラにこれまでの修行の成果を見せる
「すごいアイシス! 私も見習わなくちゃ!」
これによりキーラもまた気合が入ったのか、リドリリとの戦闘訓練によりいっそう身が入るようになっていた
全ての玉が操れるようになった夜、久しぶりに夢を見た
信楽焼の狸のような置物がぽつんと置いてあり、それを不思議そうに眺めるアイシス
「何だこりゃ? 魔物の像かなんかか? それにしても・・・。なんて卑猥な像なんだよ」
アイシスの視線は像の下半身に向けられており、それには独特なシンボルが刻まれていた
顔を赤くし、手で目を覆うあたり乙女らしい行動を見せる
そんな彼女の足をツンツンと何かがつついた
「ん? なんだ?」
下に視線を移すとそこには前回のレコと同じく巫女服を着た狸耳の女の子がニコニコと笑っていた
「よっ!ですの」
「よ、よぉ」
「わしはポコですの。お主に力を与えるよう言われてますの」
小さな手でアイシスの足をポンポンと叩きフフフと笑うポコ
尻尾をフリフリと振っている様子が可愛らしいとアイシスはほんわかした
「さてアイシス、お主は見事レコの力をものにしたんですの。つまりはこれから先に進む権利を手に入れたんですの」
「これから先?」
「はいですの。レコの力は魔力を高めるために必要なことでしたの。今の魔力ならより受け取るのが難しい力を掴むことができますの!」
どうやら魔力を高めなければ手に入れることすら難しい力もあるらしく、そのためレコの力をしっかりと身につけさせたかったようだ
その結果、アイシスは更なる強化がなされた
「さて、お話はこれくらいにしてわしの力を受け取れですの」
ポコは手を伸ばし、アイシスの手を掴んだ
「いきますの」
ポコの体から金色に輝く狸がポンポコと飛び出し、それが光りの粒子となってアイシスの中へと吸収された
「さぁ目を覚ますですの。大勇者アイシス、期待しているですの!」
ポコが手を振ると、アイシスはそのまま夢の世界から現実へと引き戻された
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