上 下
497 / 1,022

新世界より6

しおりを挟む
 水は無事流れ始めたのか、村人たちは井戸の周りに集まって私達の帰りを待ってた
 水が出たことで村人たちは口々に感謝の言葉を継げてくれる
 そしてそのまま歓迎会のように私達を食事に招待してくれた
 切羽詰まっていたでしょうに、私達は断ったんだけどどうしてもと引き留められて招待に預かった
 料理は保存食をふんだんに使った野菜料理屋干し肉料理で、特に干し肉料理は干してたぶんうまみが凝縮されててすごくおいしかったわ
 でもこんなに食料を使って大丈夫なのかしら?って思ってたら、どうやら村の若い人たちが村に戻ってきたおかげで食料の確保ができたみたい
 これだけの料理をふるまっても半年以上の備蓄ができたから大丈夫って村長さんが言ってるわ
 それならと私達も遠慮なく食べさせてもらったってわけ
「これ美味しいですね。何のお肉なのでしょう?」
 リィリアちゃんは何かの干し肉をハムハムと噛みながら聞いた
「ああ、それはこの辺りに生息するレッドトードという蛙の肉です」
「なるほど、蛙ですか、干すことでここまで熟成された風味を醸し出すとは、中々侮れませんね」
 蛙かぁ、私も旅をしてた頃は食べたことあるから問題なく食べれてるけど、何やらアスティラちゃんの方は顔が青ざめてる
「す、すみません、私蛙は食べたことが無かったもので・・・。で、でも大丈夫です! 味は鳥肉のようですしすごくおいしいですよ!」
 そう言ってムシャムシャと食べ始めた
「ハハハ、都会の方には蛙肉は少しハードルが高かったですかな? いや失敬、馬鹿にしたわけではないのですが、この辺りには蛙を普通に食べる習慣がありまして、特にこのレッドトードの肉は祝いの日などにふるまわれるのですよ」
 アスティラちゃんはそれを聞いてニコリと微笑んでまた食べ始めた
 一度食べたら気にならなくなったのか、おいしそうに食べてる
 村長さんも嬉しそう
 ご飯を食べ終えるとすっかり日も暮れてて、村長さんが用意してくれた家に泊まることになった
 特に敵と戦ったわけじゃないから疲れては無いけど、ご厚意に甘えさせてもらって就寝したわ

 そして夜も更けて行って、翌朝
 大きな力の流れを察知した私は慌てて起きあがり、外に出た
 すると大きな太陽のような大きく熱い何かが上空に浮かんでいるのが見えた
 それはゆっくりとどこかに落ちているようで、私達は慌ててその熱い何かに向かったとんだ
 天使二人が一気に翼を広げたことで村人たちはかなり驚いていたけど、それは今は気にせずとにかく急ぐ
 あんなものが地面に落ちればこの辺り一帯が酷いことになるのは間違いない
 すぐにアスティラちゃんとリィリアちゃんに結界を張ってもらって、これを破壊したときに飛び散っても大丈夫なように慎重に砕いた
 結構危なかったけどなんとか間に合ったわ
 全くこんなもの落とそうとするなんて、一体どんな馬鹿よ
 そう思って今これが浮かんでいた所の少し上を見上げる
 そこには目が虚ろな少女がフワフワと浮かんでいた
「あんた一体どういうつもり? 大勢が死んでたかもしれないのよ!」
 怒って怒鳴ったけど、少女はまるで何も反応せずにこちらを一瞥すると再びあの巨大な炎の塊を召喚した
「リィリアちゃんアスティラちゃん!」
「「はい!」」
 再び結界を張ってもらうと破壊の力で炎を破壊した
 なんてこと、今の少女の攻撃でわかったんだけど、これただの魔法だわ
 しかも神の力に匹敵するほどの下級魔法
 じゃあ上級魔法を撃たれたら?
 うかうかしていられないわ
「二人とも下がってなさい!」
 これから使う力は周囲にも被害を及ぼすため二人には村に戻ってもらった
 一言言っただけだけど二人は意図を理解して急いで離れてくれる
「行くわよ、概念の破壊!」
 パキンと周囲に音が響き、この辺り一帯の概念が崩れ去った
 私が破壊した概念は魔法
 今私と少女の周囲はまったく魔法が使えない状態
 つまり少女は魔法という補助を失ってそのまま落ちて行った
 相変わらず表情はまったく崩れずそのまま少女は落下していく
 私はその少女をキャッチしてその顔を見た
 どうやら操られているようで目に光がない
「はぁ、しょうがないわね。少し頭が痛いけど我慢しなさい」
 私は少女の頭に手を置くと洗脳という概念を破壊
 これで少女の洗脳は解けたはずだわ
「う、ううん・・・。え?え? ここ、どこ? ええええ私何でこんな空中に! あなた誰!?」
「混乱してるのね可哀そうに。あなた自分の名前は分かる? 洗脳されていたことは? 洗脳前に何をしていたかは覚えてる?」
「え、えっと、えっと、その、名前はラナで、えっとその、あれ? 私確か何かと戦ってたはずなのに」
 とりあえず彼女を落ち着かせるために私は一緒に村に戻った
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ステータス999でカンスト最強転移したけどHP10と最低ダメージ保障1の世界でスローライフが送れません!

矢立まほろ
ファンタジー
 大学を卒業してサラリーマンとして働いていた田口エイタ。  彼は来る日も来る日も仕事仕事仕事と、社蓄人生真っ只中の自分に辟易していた。  そんな時、不慮の事故に巻き込まれてしまう。  目を覚ますとそこはまったく知らない異世界だった。  転生と同時に手に入れた最強のステータス。雑魚敵を圧倒的力で葬りさるその強力さに感動し、近頃流行の『異世界でスローライフ生活』を送れるものと思っていたエイタ。  しかし、そこには大きな罠が隠されていた。  ステータスは最強だが、HP上限はまさかのたった10。  それなのに、どんな攻撃を受けてもダメージの最低保証は1。  どれだけ最強でも、たった十回殴られただけで死ぬ謎のハードモードな世界であることが発覚する。おまけに、自分の命を狙ってくる少女まで現れて――。  それでも最強ステータスを活かして念願のスローライフ生活を送りたいエイタ。  果たして彼は、右も左もわからない異世界で、夢をかなえることができるのか。  可能な限りシリアスを排除した超コメディ異世界転移生活、はじまります。

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

処理中です...