上 下
454 / 1,022

星詠み族の国1

しおりを挟む
 ここは星詠み族の国アリューエル
 古き民が住まう場所で、この地は精霊達によって守られている
 彼ら星詠み族は戦闘能力で言えば人間と変わらない
 たまに強い魔力を持って生まれる人もいるけど、攻撃に使うことはあまりない
 ただ怒らせると怖い種族でもある
 かつて驕り高ぶった人間達がいた
 彼らは星詠み族の未来予知によって世界を手に入れようと画策し、星詠み族の姫を攫ったことでその怒りに触れた
 その人間族がいた国は一夜のうちに滅んだらしい
 というのも、彼らの第三の目は未来予知のためだけに開かれるものじゃない
 恐ろしいのはその目に見られると死を繰り返す幻想を見せられ、心が壊れて本当に死んでしまう点だ
 これは魔法でも防ぎようがない
 開かれれば最後、目を伏せようともどこに逃げようとも相手を捕捉し、死に至らしめる
 それほどに星詠み族の第三の目は強力な力なんだ
 僕も母さんからその話を聞いて震えたものだよ
 でも彼らは精霊と共にある種族だから僕は心配ない。問題はハクラちゃんたちかな
 人間族がかつて犯した罪によって星詠み族は他種族との交流をかなり制限している
 精霊に認められた人、もしくはエルフや妖精と言った精霊に近しい種族しか彼らと交流はできないんだよね
「うう、あの噂って本当なのでしょうか? 精霊に認められていない種族が入ると気が狂って死んじゃうって言う」
「あー確かにそれ系の結界はこの辺りに張ってあるみたいだね」
「ひぃいいい!」
「あのハクラちゃん? 僕が誰だか忘れてない?」
「はい? あ、リディエラ様は精霊、でしたね」
「そうだよ。僕が認めてるのに精霊に認められてないなんてことないんじゃない? これでも僕王女だし」
「あ・・・」
「全くもうハクラは。もう少し物を考えて話しなさいな」
「うう、面目ないです」
 まぁ僕がいるんだ。彼らが国に入れてくれないなんてことはないだろう
 それよりもだよ。黒い男がここに来たなら心配だ
 勇者アイシスと同じかそれ以上の強者。ここの結界を突破できたとしても何ら不思議はない
 そしてその予想は、外れて欲しかった予想は当たってしまった
「結界が破られてる・・・」
 ここら一帯を覆っていた結界の魔力が感じられない 
 すでに男はこの国に入ったとみて間違いない
 僕らは急いで国に入り、状況を確認するため走った

 目に映るのは死屍累々・・・。たくさんの星詠み族が倒れ、その全員が息絶えていた
 戦った形跡もあるものの、見たところ皆一撃で殺されている
 第三の目が開いてる人達がいるってことは男はその攻撃を受けているはず
 それにもかかわらず効いていなかったってことになる
「精霊様、私、このように無残で冷酷無比なことする輩を信じれません」
 ハクラちゃんを見てぎょっとした
 赤い目がさらに赤く光り、静かな怒りを感じる
 クロハさんも同じみたいだ
「うん、止めよう。生き残った星詠み族達を助けなきゃ」
 死体が転がる先に向かう。どうやら山に向かって続いてるみたいだ
 その山はこの世界でもかなり高い山で、その頂上には神殿が築かれている
 男が封印を解こうとしているオロフェニアは十中八九そこに封じられているはず
 僕達は一気に山に頂上まで飛ぶと神殿を見つけた
 その神殿の前に女性の首を掴んで持ち上げている男の姿が見えた
 あれは前に見たことがある。星詠み族の王女
「間に合え!」
 ギュンとスピードを上げ、魔法を発動させて男の背に放った
 不意を突けたからか男はダメージを受け、星詠み族の王女を落として膝をつく
「クロハさん!あの人をお願い!」
 王女をクロハさんに任せ、僕とハクラちゃんは男の前に立った
「ぐ、邪魔が入ったか。しかしもう遅い。封印は解かれた」
 男が両腕を広げたとたん後ろの神殿が真っ黒な闇の炎を吹き出して爆発した
「もう封印を! くそ!」
 男の周りに倒れている人たちはまだ息がある
 クロハさんが全員を助け出すと僕達と男、そしてオロフェニアとの戦闘が始まった
「さぁオロフェニアよ! この世界を滅ぼせ!」
「そうはさせません!」
 黒い炎からオロフェニアが出て来た
 その姿は真っ黒な竜で、目に狂気が見える
「ハクラちゃん、気を付けて! 僕はこいつを!」
「はい!」
 オロフェニアをハクラちゃんとクロハさんに任せると僕は男に向き直った
 恐ろしく強大な竜だけど、あの二人ならきっと大丈夫
「ふん、たかが鬼人に任せるとはな。あの二人、すぐに死ぬぞ」
「それはどうかな!」
 男はかぶっていたフードを外す
 褐色の肌に左右で色の違うオッドアイ、頭にある捻じれた角と高い魔力がこの男が魔族であることを示していた
「この世界の魔族は腑抜けているな。他種族をすべて滅ぼした後はあいつらは俺が正しい魔族として調教してやろう」
「平和に暮らしている彼らに手を出させるわけないでしょ!」
「だったら止めてみろ」
 男は牽制とばかりに闇魔法をこちらに撃ってきた
 この程度どうってことない
 僕は、怒ってるんだ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...