439 / 1,022
精霊の国3
しおりを挟む
意識が混濁している中、まるで夢の中にいるような感覚になっていて、今まで母さんと過ごした日々が映画を見るかのように流れていく
母さんはいつも優しい笑顔で笑っていて、僕を大切に抱きしめてくれた
あの優しい母さんは僕を守って魂を壊された
僕の、せいだ
そう思ったとき目が覚めた
視線を下に向けて母さんを見る
目を開けず、段々と消えていく母さんの手を僕はギュッと握っていた
精霊に死体は残らない。魂があれば死してもそのまままた精霊に転生して記憶を引き継いだまま新しい精霊生を生きることができる
でも、母さんの魂はさっき敵に砕かれてしまった
もう蘇ることはない
僕は悔しくて寂しくて母さんを失ったという喪失感で涙があふれて止まらない
敵はハクラちゃんたちが防いでくれているけど、僕は助けに向かうことができないでいた
その時僕の頭上でバチバチと音がして何かが弾けた
「リディエラちゃん! お姉ちゃん!」
「シルフェイン! おおなんということなのですか!」
そこから現れたのは母さんの妹女神、妖精祖神のエルリウラさんと知らないお兄さんと光り輝くお姉さんだった
「あなたがシルフェインの娘のリディエラですね。私はそうですね、あなたの叔父にあたる神です。名をラシュア、天空の神にして神々のまとめ役をしている者です」
「母さんの、お兄さん?」
「そしてこの子は光の女神イナミリア。彼女は大神の力を受け継ぐ私達の中でも神々を作り出すことに秀でた女神です」
後ろにいた光り輝くお姉さんはわずかに微笑んで僕の頭を撫でた
「やぁ、僕はイナミリア、君との関係は叔母になるのかな? まあ僕は女神で二番目に若いからあんまり叔母さんって呼んでは欲しくないけど。とりあえずシルフェインさんを治すところから始めるとしよう」
イナミリアさんはそういうと手のひらに光を集めた。その光に向かって砕き散った母さんの魂がみるみる集まって一塊になる
「これをこうしてよいしょっと。ほら元通り」
綺麗な虹色の輝きを取り戻した母さんの魂はイナミリアさんの手でゆっくりと、ぽっかりと空いた母さんの胸に戻された
「ふぅ、これでよしっと。まだ安定はしてないから戦いや魔法を使ったりはできないだろうけど、かつて一度死んだことのある女神、とっさに欠片を残すコーティングをしていたのが幸いしたよ。でなければ今頃完全消滅してたはずだからね」
「ありがとうございますイナミリア様!」
「様はいらないかな? 僕って君の叔母さんであるわけだし」
イナミリアさんのおかげで母さんは何とかなりそうだ
目はまだ覚めないけど、これで僕も戦いに行ける!と思った矢先にすでに決着はついていた
ハクラちゃんとクロハさんに抑え込まれた敵は既に手足を切り落とされて無力化されている
その切り落とされた手足がまた異様だった
くっついている間は普通の腕だったのに、地面に落ちたその腕はミイラ化してそのまま砂になって消えてしまった
僕の腕もだ
「ああ、私達はまたなれなかった」
「ああ、人になりたい。人形はもう嫌」
不気味なことに二つの人形は今まで人のように見えていたのに、今は能面のような無表情の人形そのものとなっていた
やがて喋らなくなり、カタカタと震えて人形は動きを止めた
「これは、生き人形・・・」
「生き人形?」
「うん、魂を求める哀れな人形で、大昔に神に近い力を持った天人族が作ったと言われている人形だよ、それが何でこんなところに? 天人族は既に滅んだはずなのに」
とりあえず生き人形についてはラシュア様やエルリウラさんが調べてくれるみたい
僕は眠ったままの母さんを抱え上げると母さんのベッドに寝かせた
「テュネ、母さんのことお願い」
「かしこまりました」
僕はもう精霊の女王だ。それならば今なすべきことをやらなくちゃ
今の騒ぎで傷ついた人々や精霊を癒す。そんな僕に近づいてくるハクラちゃん
「せ、精霊様・・・」
「ありがとうハクラちゃん、おかげで皆無事みたい」
「申し訳ありません。私達がもう少し早く着いていればこのような事態には」
「クロハさんのせいじゃないよ。僕が不甲斐なかったんだ。せっかく力を手にいれたって言うのに、これじゃ情けないよね」
「そんなことはありません!」
ハクラちゃんは僕の手をギュッと握る。痛いくらいに
「精霊様は皆を守ろうと必死でした! そのおかげで私達は敵と相対することができたのです。それにほら、誰も精霊様を攻めたりしません」
顔をあげるとそこには僕を真っ直ぐに見つめる各国の首脳たちがいた
怖い思いをしたであろう人達も僕を笑顔で見ている
「僕は、精霊の女王でいいのかな?」
問題はあった。みんなを傷つけさせてしまった
それでも皆僕を拍手で迎えてくれた
そこに嘘はなく、こうして僕は晴れて精霊の女王となった
母さんはいつも優しい笑顔で笑っていて、僕を大切に抱きしめてくれた
あの優しい母さんは僕を守って魂を壊された
僕の、せいだ
そう思ったとき目が覚めた
視線を下に向けて母さんを見る
目を開けず、段々と消えていく母さんの手を僕はギュッと握っていた
精霊に死体は残らない。魂があれば死してもそのまままた精霊に転生して記憶を引き継いだまま新しい精霊生を生きることができる
でも、母さんの魂はさっき敵に砕かれてしまった
もう蘇ることはない
僕は悔しくて寂しくて母さんを失ったという喪失感で涙があふれて止まらない
敵はハクラちゃんたちが防いでくれているけど、僕は助けに向かうことができないでいた
その時僕の頭上でバチバチと音がして何かが弾けた
「リディエラちゃん! お姉ちゃん!」
「シルフェイン! おおなんということなのですか!」
そこから現れたのは母さんの妹女神、妖精祖神のエルリウラさんと知らないお兄さんと光り輝くお姉さんだった
「あなたがシルフェインの娘のリディエラですね。私はそうですね、あなたの叔父にあたる神です。名をラシュア、天空の神にして神々のまとめ役をしている者です」
「母さんの、お兄さん?」
「そしてこの子は光の女神イナミリア。彼女は大神の力を受け継ぐ私達の中でも神々を作り出すことに秀でた女神です」
後ろにいた光り輝くお姉さんはわずかに微笑んで僕の頭を撫でた
「やぁ、僕はイナミリア、君との関係は叔母になるのかな? まあ僕は女神で二番目に若いからあんまり叔母さんって呼んでは欲しくないけど。とりあえずシルフェインさんを治すところから始めるとしよう」
イナミリアさんはそういうと手のひらに光を集めた。その光に向かって砕き散った母さんの魂がみるみる集まって一塊になる
「これをこうしてよいしょっと。ほら元通り」
綺麗な虹色の輝きを取り戻した母さんの魂はイナミリアさんの手でゆっくりと、ぽっかりと空いた母さんの胸に戻された
「ふぅ、これでよしっと。まだ安定はしてないから戦いや魔法を使ったりはできないだろうけど、かつて一度死んだことのある女神、とっさに欠片を残すコーティングをしていたのが幸いしたよ。でなければ今頃完全消滅してたはずだからね」
「ありがとうございますイナミリア様!」
「様はいらないかな? 僕って君の叔母さんであるわけだし」
イナミリアさんのおかげで母さんは何とかなりそうだ
目はまだ覚めないけど、これで僕も戦いに行ける!と思った矢先にすでに決着はついていた
ハクラちゃんとクロハさんに抑え込まれた敵は既に手足を切り落とされて無力化されている
その切り落とされた手足がまた異様だった
くっついている間は普通の腕だったのに、地面に落ちたその腕はミイラ化してそのまま砂になって消えてしまった
僕の腕もだ
「ああ、私達はまたなれなかった」
「ああ、人になりたい。人形はもう嫌」
不気味なことに二つの人形は今まで人のように見えていたのに、今は能面のような無表情の人形そのものとなっていた
やがて喋らなくなり、カタカタと震えて人形は動きを止めた
「これは、生き人形・・・」
「生き人形?」
「うん、魂を求める哀れな人形で、大昔に神に近い力を持った天人族が作ったと言われている人形だよ、それが何でこんなところに? 天人族は既に滅んだはずなのに」
とりあえず生き人形についてはラシュア様やエルリウラさんが調べてくれるみたい
僕は眠ったままの母さんを抱え上げると母さんのベッドに寝かせた
「テュネ、母さんのことお願い」
「かしこまりました」
僕はもう精霊の女王だ。それならば今なすべきことをやらなくちゃ
今の騒ぎで傷ついた人々や精霊を癒す。そんな僕に近づいてくるハクラちゃん
「せ、精霊様・・・」
「ありがとうハクラちゃん、おかげで皆無事みたい」
「申し訳ありません。私達がもう少し早く着いていればこのような事態には」
「クロハさんのせいじゃないよ。僕が不甲斐なかったんだ。せっかく力を手にいれたって言うのに、これじゃ情けないよね」
「そんなことはありません!」
ハクラちゃんは僕の手をギュッと握る。痛いくらいに
「精霊様は皆を守ろうと必死でした! そのおかげで私達は敵と相対することができたのです。それにほら、誰も精霊様を攻めたりしません」
顔をあげるとそこには僕を真っ直ぐに見つめる各国の首脳たちがいた
怖い思いをしたであろう人達も僕を笑顔で見ている
「僕は、精霊の女王でいいのかな?」
問題はあった。みんなを傷つけさせてしまった
それでも皆僕を拍手で迎えてくれた
そこに嘘はなく、こうして僕は晴れて精霊の女王となった
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
俺と幼女とエクスカリバー
鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。
見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。
最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!?
しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!?
剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
赤毛のアンナ 〜極光の巫女〜
桐乃 藍
ファンタジー
幼馴染の神代アンナと共に異世界に飛ばされた成瀬ユウキ。
彼が命の危機に陥る度に発動する[先読みの力]。
それは、終焉の巫女にしか使えないと伝えられる世界最強の力の一つだった。
世界の終わりとされる約束の日までに世界を救うため、ユウキとアンナの冒険が今、始まる!
※2020年8月17日に完結しました(*´꒳`*)
良かったら、お気に入り登録や感想を下さいませ^ ^
------------------------------------------------------
※各章毎に1枚以上挿絵を用意しています(★マーク)。
表紙も含めたイラストは全てinstagramで知り合ったyuki.yukineko様に依頼し、描いて頂いています。
(私のプロフィール欄のURLより、yuki.yukineko 様のインスタに飛べます。綺麗で素敵なイラストが沢山あるので、そちらの方もご覧になって下さい)
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる