上 下
252 / 1,022

妖怪族の国48後

しおりを挟む
 十三組目はDJらしき格好をした獣人族、犬獣人のヴァースさん(本名不明)。 どうやら本当にDJらしくて、DJヴァースと言う名前で活動しているみたいだね
 デュクデュクと独特なディスクを回す音が聞こえる。そして彼の魂の叫びが始まった
 どうやらDJ兼ラッパーも兼ねているようで、韻のふみ方が素晴らしいとしか言いようがない
 彼のラップは心からのシャウト。人々はそれに共感して盛り上がる
「なんと美しい叫びなのでしょう。人の生きる気力を歌っています」
 テュネが聞き入ってる。どうやら彼女もこのジャンルの音楽は聞いたことがないみたいだ

 十四組目に出てきたのはマジックキャスターズ
 その名の通り魔法使いで構成された合唱と合奏グループ。種族はまちまちで、たくさんの種族が混合していた
 歌はというと、各国各所の童謡や民謡をアレンジして歌ったもので、観客からは懐かしいなど、この曲があんなに素晴らしい曲に!? などと驚きや感嘆の声が上がった

 十五組目のカルテッドヴァルンと言うチームは全員がヴァイオリンを演奏する竜人族の女性で構成されている。優雅な立ち姿に見惚れる人続出
 演奏はと言うと、竜人族の住む火山地帯、そこの壮大な大自然をイメージしているみたいで、ちゃんとその情景が浮かんで来るかのような演奏だった

 次は十六組目のセレブレティックカルメン
 人間族の王族や貴族の音楽家たちが集まった情熱的なダンスとミュージックが有名なチームで、音楽をすることに命を懸けているという真面目なグループだ
 王貴族と言っても身分の高さを鼻にかけることもなく、分け隔てなく様々な場所に音楽を届けているらしい
 そのおかげなのか、音楽の精霊ミュゼは彼らのことを気に入っていて、加護も授けているそうだ
 彼女の加護は音楽的センスの向上
 絶対音感はもちろんのこと、チューニングの不要(勝手にチューニングが合ってくれる)、綺麗に音が重なった時の心への響きが増加など、音楽に関する恩恵が多大だ
 王貴族的な偉大感もありながらもどこか親しみやすくて耳に残る心地よさ
 これにはテュネも聞き入っているようだった
 よく見ると舞台袖からミュゼが覗いていて、うんうんとしきりに、そして満足げにうなずいている
 盛大な拍手の後にエコーズさんが出てきた
「さて! 三公演目が終わり集計を開始します! こちらも激戦と言った感じですが、セトダイショウ様いかがでしょうか?」
「うむ、それぞれの努力が垣間見える素晴らしい音楽でござった。拙者も何やら奏でたくなったでござるよ」
「そうですか、ありがとうございます! ではシガラキヒメ様はどうでしたか?」
 エコーズさん、セトダイショウさんがぽかんとしてるよ。ちゃんと話聞いてあげようよ
「そうですね。去年出場されていた方々はさらにその技術が向上されていて、日々研鑽を重ねていたのが分かります。それはそうとエコーズ、貴女準備はいいの?」
「はっ! そうでした! わたくし出場者として登録してるんでした! 司会は私に変わり、妹のハウリが担当いたしますのであしからず!」
 大慌てでエコーズさんは幕に引っ込み、代わりにエコーズさんそっくりだけどおとなしそうな少女が出てきた
 双子の妹らしい
 その少女の目がカッと見開かれる
「ハロー! ハウリちゃんでっすよ! ここからはハウリちゃんが実況するでっす!」
 あ、おとなしそうに見えて性格は一緒なんだ。でもエコーズさんも参加するのかぁ。声可愛いから楽しみ
「点数が続々出てまいりまっすよ! まずはクールビートでっす! 点数はドンと出ました! 五十六点でっす! ハウリちゃんの大好きな歌を歌ってくれたから大満足でっすよ!」
 うん、ホントにお姉ちゃんまんまの性格だ
「続いてゼルセベル! 五十七点! これは高得点でっすね! さすが魔王の認めた音楽家たちと言ったところでっしょうか!」
 うんうん、魔族の人達も顔が誇らしげだ
「ジャンジャカいくでっす! DJヴァース! 得点は五十二点! みんなの心に響くいい音色でしたが惜しくも敗退となってしまいました!」
「続きましてはマジックキャスターズ! 魔法を使っての演奏もあり、目でも楽しませてくれました。得点は五十四点でこちらも敗退となりました」
「続いて今年で三回目の出場となったセレブレティックカルメン! 情熱的なダンスで観客を魅了していましたが、果たして結果は! 五十四点! おしいぃ!」
 ハウリさんの怒涛の結果発表が終わり、結果ゼルセベル、魔族のチームがこのブロックの勝者となった
 うんうん、魔族と世界の友好としてもいい感じだね
 僕も応援したいけど、僕らは出場するからライバルだ。負けられないよ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わし七十歳定年退職者、十七歳冒険者と魂だけが入れ替わる ~17⇔70は地球でも異世界でも最強です~

天宮暁
ファンタジー
東京郊外で定年後の穏やかな生活を送る元会社員・桜塚猛(さくらづかたける)、70歳。 辺境の街サヴォンに暮らす万年D級冒険者ロイド・クレメンス、17歳。 冒険者ランク昇格をかけて遺跡の奥に踏み込んだロイドは、東京・桜塚家で目を覚ます。 一方、何事もなく眠りについたはずの桜塚猛は、冒険者の街サヴォンの宿屋で目を覚ました。 目覚めた二人は、自分の姿を見て驚愕する。ロイドはまったく見覚えのない老人の身体に、桜塚は若く精悍な冒険者の身体に変わっていたのだ。 何の接点もなかったはずの二人の意識が、世界を跨いで入れ替わってしまったのだ! 七十歳が十七歳に、十七歳が七十歳に―― いきなり常識の通じない「異世界」に放り出された二人の冒険が、今始まる! ※ 異世界、地球側並行で話が進みます。  完結まで毎日更新の予定です。  面白そう!と思ってもらえましたら、ご応援くださいませ。

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸
ファンタジー
 普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。  海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。  その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。  もう一度もらった命。  啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。  前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。 ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...