上 下
247 / 1,022

妖怪族の国45

しおりを挟む
 最後はガラクタ祭なんだけど、これは明日開催だからこの日はセトカちゃんの家に招待された
 セトダイショウさんやその奥さんのセトヒメさんがもてなしてくれて、特製の料理をごちそうになった
 まずは前菜の小松菜のおひたし。良い塩梅あんばいで、口の中がさっぱりとして風味豊か
 次に竜魚の白焼き
 ウナギみたいな魚の魔物で、なんとブレスも吐いてくるらしい
 脂がよく乗ってて、皮がパリッとしてる
 骨はサクッとした後ホロホロと溶けるようで食感がいいね
 他には鮭皮の唐揚げや鮭身のほぐし茶漬けなどなど。大変美味しくいただけました
 この料理、全部セトカちゃんが作ったもので、彼女の趣味は新しい料理に挑戦することらしい。良いことだと思います
「精霊様はこの里の子供たちがどうやって生まれるか知っておりますかな?」
 突然セトダイショウさんがそう聞いてきた
「えっと、大切に使われた道具が・・・。あれ? それだとひとりでに生まれることになるね。じゃぁセトカちゃんはどうやって」
「それはですな、拙者たちのような夫婦の体をわけあって生まれるのでござるよ」
 詳しい説明を聞くに、九十九族の愛し合う者どうしが自分の体の一部ずつをわけあって重ねるとそれが生命を得て子供になるらしい
 しかもちゃんと成長して大きくなる
 セトカちゃんは生まれてもう少しで百年になるとのこと
「つまり拙者は父ちゃんと母ちゃんの愛の結晶と言うわけでござるよ」
「これセトカ、父様母様と呼びなさいといつも言っているでしょう」
 セトカちゃんがしまったという顔をしてる。それにしてもこの里の女性付喪神はなぜこうも人間に近い姿をしているのだろう
 顔はどう見ても人間で、人間が食器や道具を体に着ているようにしか見えない
 うん、世界七不思議に加えておこう
「さて、もうこんな時間でござる。風呂の用意をさせます故、少しお待ちください」
 セトダイショウさんに言われて僕たちはお風呂をいただくことにした
 お風呂は五右衛門風呂で、二人で入れる広さ
 僕とクノエちゃんが一番に入って、そのあとはテュネたちが一人ずつ順番に入って行った
 それで気づいたんだけど、クノエちゃんって着やせするタイプなのね。結構、あるんだよね。僕にないものが・・・
 いいもん、僕だって成長期だからそのうち大きくなるもん
「いいお湯だったね~」
 濡れ髪を布で拭きながらクノエちゃんの狐火で乾かす
 あ、乾かしてるのはクノエちゃんだけだよ。僕たちの髪は濡れないからね
 だって体と同じエレメント体だもん。でもお風呂が気持ちいいと言うのは感じることが出来るから便利な体だねー
「お布団を用意したでござる。ささ、精霊様、こちらへどうぞです!」
 布団は各部屋に用意されたんだけど、なぜか僕の布団だけセトカちゃんの真横に用意されている
 うん、セトカちゃんと寝ればいいってことね
「ぬふふ、まさか精霊様と一緒に寝れる日が来るなんて夢のようでござるよ」
 セトカちゃん、嬉しそうでよかった
 テュネは仕方ないと思ったのか、ため息をついて用意された部屋へと戻って行った
 君はいつも僕と寝てるじゃないか
「さぁ精霊様。夜は冷えるでござる。拙者と温めあうでござるよ」
「ちょ、セトカちゃん? 何か目が怖、ひぃ! 手つきがいやらしいんだけど! ちょ、セトカちゃ、セトカさん!?」
 セトカさんは僕の体中を触りながら満足した表情で涎をたらしながら寝てしまった
 僕はと言うと、くすぐられた後のような疲労間の中眠りについた

 翌朝、僕のお腹の上に涎をたらして寝ているセトカちゃんを起こすのに苦労した
 でもその寝顔は天使みたいでほっこりしたよ。いやぁ眼福眼福
 そしてこの日の早朝のことなんだけど、クノエちゃんが急遽お母さんのタマモさんに呼ばれて帰っちゃった
 なんでもどうしてもクノエちゃんが今後種族をまとめ上げるために必要なお勉強があるみたいなんだよね
 まぁまた会えるし、ちょっとだけお別れだ
「おはようござりまする精霊様!」
 今日も今日とてセトカちゃんは元気さを爆発させている
「いよいよ本日はガラクタ祭にござる! 拙者この日のために毎日練習していたでござるよ」
 楽器を奏でるように自分の体を鳴らすガラクタ祭
 セトダイショウさんや幹部の人達は審査員をやるらしい
 セトカちゃんは参加者。飛び入りも大歓迎らしいから僕らも出てみよう
 九十九族以外は楽器を使って奏でてもいいらしいから、テュネはハープ、エンシュは意外なことにバイオリン、フーレンはフルート、アスラムは和太鼓だ。和太鼓!? アスラム和太鼓出来るの!? かっこいいね!
 ちなみに僕は縦笛ね。仕方ないじゃないか、これしかできないんだもん
「ではいよいよ乗り込むでござる! 歴戦の猛者も集うこの祭典! 今年こそは優勝するでござるよ!」
 前回の優勝者はコツボちゃんというセトカちゃんの幼馴染で、この里の幹部の娘さんだそうだ
 その卓越した演奏技術でセトカちゃん以外の追随を許さなかったという。きっと手ごわい相手となるだろうね
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...