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邪竜さん聖竜になる3

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 俺たちは既に満身創痍だった
 相手は俺と同じく竜なんだが、俺より格上な上に俺の苦手な聖属性まで備えてると来やがる
 順調だった旅路
 しかしそう甘くはなかった
 邪竜であるガンドレよりもはるかに強く、知恵のないただただ暴れるだけの竜
 それが立ちはだかったのだ
 実力差は明らかで、セツは深い傷を負い動けない
 ムラサメもガンドレも体中傷だらけで動きが鈍っていた
 とにかく俺を盾に二人を逃がさねえと。そんなことを考えているとムラサメが斬りかかりに行った
「ばか! やめろ!」
 傷だらけの体で無謀にもその竜の胸目がけて本体である刀の切っ先を突き出すが、あっさりと止められ刀身を砕かれてしまった
「ムラサメ!」
「う・・・あ、私、あ、あぁ・・・」
 ムラサメがその本体を叩き折られたことで消滅し始める
「嘘だろ! くそ!待ってろ、今治療を」
「もう、だめ、私は・・・。お願い、セツを連れて、逃げ、て」
 途切れ途切れに弱弱しくそんな言葉を吐くムラサメは透けてきている
「早く女王様に見せてやるからしっかりしろ! 絶対、俺が助けてやる!」
 俺は最大限にブレスを対している竜に向かって吹き付けるとセツとムラサメを抱えて飛び上がった
 目くらまし位にはなるだろうよ
 そんな甘い考えを一気に打ち消すかのように一瞬にして回り込まれた
 くそ! 急がねぇとムラサメが!
 ムラサメは手の中でどんどん薄くなってきている。仕方ねぇ、少し荒療治だが
 ムラサメの折れた刀身をつなぎ合わせて俺はブレスを弱めに吐いた
 刀身を溶かしてつなげるためだ
「グァっ! あああああ!」
 痛みで悲鳴を上げるムラサメ、しかし刀はうまく引っ付いた
 それと同時に薄くなっていたからだが少しだけ濃くなった。ひとまずは成功だ
 何とか繋ぎ止めたが危険なことには変わりねぇ
 だってのにあの竜は通してくれねぇしな。絶体絶命、か
 思い起こせば誰かのために戦いたい日が来るなど思ってもみなかった
 守りたいものができることなど考えてもみなかった
 だが、俺の腕の中で気を失っている精霊二人、俺のことを怖がることなく接してくれた二人
 俺はこいつらを、助けたい!
 その時、俺の体から何か温かいものが沸き上がって来た
 それは俺に力を与えてくれている。これなら、いける!
「少し待っててくれ、あいつをぶっ倒して連れて帰るからな」
 二人を樹の下に寝かせると二人を守るように前に立った
 ドクドクと脈打つ心臓、体中の細胞が活性化していくのがわかる。力が溢れる
「待たせたなクソやろうが!」
 俺は一気に詰め寄ると相手の竜を引き倒した
 もがいているが離すわけがねぇ
 グッと手に力を込めて馬乗りになり口からブレスをはいた
 さっきとは全く違う威力に驚いたがそれでも吹き続ける
「グガァアアアアアアアアア!」
 相手は悲鳴を上げ始め体の一部が炭化する
 まだだ、まだ気を抜くな
 数分間に渡り高威力のブレスをはき続けた
 相手の竜はボロボロ、もはや立っているのがやっとだ
 俺はなぜか先の方が白くなっている手で拳を握りしめて竜を思いっきり殴りぬいた
 拳には光が輝いていてほのかに温かい
 そこで俺は気づいた。この光は聖属性の力、邪竜のはずの俺が持つことすらできないはずの力だ
「ウオオオラァ!!」
 振りぬいた拳は正確に竜の頭を砕きつぶした
「はぁ、はぁ、はぁ」
 俺は息を整えて二人に駆け寄ると、二人とも段々と薄くなっているのが分かった
 存在が消えかかっているのだ
「死ぬな! 死ぬんじゃねぇ!」
 俺は聖なる力を使えるようになったことでヒーリングができるようになっていた
 早速使ってみると、体内にある魔力はかなり消費したが、なんと二人を治療出来たのだ
 セツの胸から腹に走った竜に寄る爪痕は綺麗にふさがり、ムラサメのいびつになった刀身はその形を戻した
 俺は、一体どうしちまったんだ?
 それに何だこの手と足は・・・
 自分の手足を見ると、手首から先、ひざから下が白くなっていた
 翼もうっすらと白くなっている
 まだ気を失っている二人を介抱しつつ、自分の体の変化した個所を確認してみるが、白くなった以外に特に変化はないみたいだ
 聖属性の攻撃? 今まで俺には使えなかったはずだ。なのになぜ?
 疑問は尽きなかったが考えても仕方ねぇ
 パワーアップしたと思えばいいんだ
 俺はそう自分を納得させて二人の回復を待った
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