上 下
460 / 487

竜人の国14

しおりを挟む
 着替えを終えた
 正直、こんな大勢の前でその、粗相をしてしまうっていうのは本当に恥ずかしい
 でもこれは戦いの勲章と割り切って最後の試合に臨もう
「九階層・・・」
 降りて来る九階層から異様な圧力がこっちに向かって飛んでくる
 立ってるのもやっとの巨大な圧力
 やっぱりそうなのね・・・
 彼はクロが召喚するレベルの大英雄クラス
 本当に強い人
 愛憎のフィオナちゃんと同程度かそれ以上
 あの時のフィオナちゃんはオワリのせいで異常な強さになってたけど、私もあの時は強い力を得ていた
 だからなんとか戦えたけど、今は自分の実力だけで戦わないといけない
「よくここまで来たな。それなりの強者なのだろう。全力で来い。でなければ死ぬぞ」
「ええ、そうさせてもらいます」
 私はいきなり全ての力を体に流した
 さっきの出コツは掴んだ
 魔力も気力も仙力も精霊力も、それら全部を混ぜて合わせて
「ハァアアアアアア!!」
 スーパーミアさん誕生!
 力が内側からどんどん溢れて来る
「ほぉ、戦いで成長するのか。面白い。少し本気を出そう」
 あれ? ハルフさんの姿がぶれて
 ぽきゅっ
 首が変な音をたてて、私は突然上下が分からなくなった
 あれ? 声も出ない。呼吸も、できない?
 痛くて、苦しいのに、もがくこともできない
「ミア! ミアァアアアアアア!!」
 フィオナちゃんの声が聞こえるけど、そっちを向くこともできなかった
「ふん、まさか一撃とは・・・。期待外れにもほどがある。もはや生き残ったとしても生涯動くことも叶うまい。ここは一思いに、その命を絶ってやろう」
 まずい、ハルフさんが迫って来てるのに、私は何もできない
 いや、出来ないなんてことはないはず
 そう。私は人じゃない。この身は精霊なんだから
「ふ、ぐぅうううう! アアアアアアア!!」
 痛みが引いていく
 体が精霊体に変わったから動けるようになる
「これで物理攻撃は効きません。いざ!」
「精霊か。しかし俺はかつて悪精霊を消したこともあるぞ? こうやってだな」
「あ」
 ハルフさんがぶれるのしか見えない
 気づくと手がなくなってる
 すぐに再生させて次の攻撃を受ける
「おお、対応し始めるか」
「三回も見ればそれなりに」
 でも手が少し欠けてる
 ふふふん、分かった。ハルフさんは気力を一瞬だけ爆発的に高めてて、それを足や手に集中させて移動したり攻撃したりしてる
 なら同じように
 次の拳が見えたからそこを合わせて
「おお、素晴らしい!」
 拳に少しヒビが入ったけど、再生させて撃ち合う
「この俺とまともに撃ち合えるのはトガツメ以来だな」
「彼女と戦ったことがあるんですか?」
「ああ、あれは駄目だ。向上心がない」
「向上心?」
「あれは強すぎるがゆえにさらに強くなろうという意志がない」
「強すぎる?」
「知らんのか? あれは覚醒者と呼ばれる化け物だ。俺のような大英雄だろうとあいつにとっては、ありのようなもんだ」
「あの人、そこまで強いんですね・・・。だったらあの時助けてくれればブツブツ」
「はははっ! あれは助力こそはすれど世界を救うなんてことはもうしない。強くなりすぎたんだよ。お前もそうならないよう気を付けろ。退屈らしいぞ、最強と言うのは。まああいつは今子育てという喜びを知ってそっちに熱中しているようだがな」
「アハハ、確かに」
 撃ち合いが拮抗してる
 私の拳もいっさい拳が壊れなくなってきた
「高まってるな!」
「高まってますよ!」
 でもこれ、ハルフさんの方が気力は圧倒的に上なのよね
 何せ私は全部使ってやっと互角って感じなんだから
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

処理中です...