猫になったから気ままに暮らしたい

帝国十二覇人4

　帝国の地下研究室にて
　そこには帝国十二覇人が一人である、聖女サンディエナ・ミナンシェが、まるで昆虫標本のように釘でベッドに止められていた
　サンディエナの目には生気が感じられず、辛うじて呼吸のために腹部が上下していなければ死んでいると思われるだろう
　サンディエナは妖精族の女性で、聖なる妖精魔法の使い手
　死んでいなければどんな傷でも癒すという回復魔法を使い、その優しさと大きな母性から母なる聖女とも呼ばれているが、本人に子供はいない
　そんな彼女は現在白衣を着た女性の手によって何かを脳に埋め込まれていた
「やはり脳に直接に限る。アリュエナのような脱走者を出さないために」
　白衣の女性はニタリと笑いながらサンディエナの脳をいじくる
　グチグチと生々しい音が響き、時折サンディエナの体がビクビクと痙攣する
「お前たちに意志など必要ない。ただ僕の思う通りに動いていればいいんだ。お前たちは、僕の栄養分に過ぎないんだから」
　女性の名はプロフェッサー
　以前の体を捨て、新しく女性の死体に乗り移ったナニカ
　プロフェッサーはサンディエナの頭を縫い治すとその傷跡に手を翳す
　すると傷口は綺麗に消えた
「っち、本当なら手術なんて必要ないんだ。本来の僕の力が、戻りさえすれば」
　完全に意志を消されたサンディエナから釘を引き抜くと、彼女に命じる
「ほら立て羽虫。お前の役割は何だ？」
「はい、改造兵士の、変化進化のため、の、回復魔法、の、応用、です」
　サンディエナは目をクルクルと回し、視点が定まっていない
「なんだ、脳の一部が削れてたか。まあいい、使い捨て程度だ」
　うまく歩けなくなったのか、サンディエナは足を引きずり、ゾンビのように歩く
「おい速くしろ。次の十二覇人の改造進化に映る」
　他の部屋にも帝国十二覇人が手術待ちをしているらしく、サンディエナは虚ろで焦点の定まらない目で見、生ける屍の歩みでプロフェッサーの後ろをついて歩いた