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第十七章 キャンプ

VSティアマト②

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「《風の付与ウインド・エンチャント》」

 ドラゴンの咆哮が轟く中、リィカは風のエンチャントを唱え、その剣に風が渦巻く。それを横目で見ながら、ユーリもエンチャントを唱えた。

「《光の付与ライト・エンチャント》」

 ユーリの剣が、光に輝く。

 エンチャントはアレクもバルも当然使う。剣の腕は、二人の方が完全に上だ。

 それでも、リィカとユーリが剣を持ったのは、多彩なエンチャントを活用できるからだ。魔法を使い慣れているからか、単なる"剣への付与効果"ではないエンチャントの使い方をするなら、二人の方が合っている。

 ドラゴンが、上空から一直線に突っ込んできた。その前足の爪が、突然長く伸びる。

「「…………!」」

 目を見開いた四人だが、咄嗟に避けられないリィカをアレクが、ユーリをバルが掴んでその爪を躱す。

 躱されたドラゴンは、すぐさまその爪を繰り出す。先ほどの《太陽爆発ソーラー・フレア》が脅威だったのか、その対象はユーリだ。
 が、バルがすぐさまそれを受け止めた。剣と爪が、ガッチリと組み合う。

「ぐっ……」

 わずかに呻いたバルは、すぐ気付いた。背中の翼が、大きく動いた。

「マジ……か……」

 突風がバルを襲う。組み合っている剣に十分力をかけられない。力負けするかと思われたとき、リィカが動いた。

「いけっ!」

 風のエンチャントのかかった剣を、ふるった。離れた場所から、風がムチのように伸びて、ドラゴンの片足に引っかかる。
 リィカはそこからさらに魔力を流しながら、ドラゴン自身が起こしている風すら取り込み、風のムチを強化していく。

「ギャアァァッ!」

 リィカが、風のムチを引いた。ドラゴンの足に傷をつけながら、さらにそのバランスを崩す。その瞬間を、残ったユーリとアレクは見逃さない。

「伸びてっ!」

 ユーリの光のエンチャントが、真っ直ぐ一直線に伸びる。そしてそれは、確実にドラゴンの羽の根元へと突き刺さる。

 同時に、アレクが駆けた。効果の切れかかっている《風の付与ウインド・エンチャント》を解除し、新たにエンチャントを唱える。

「《火の付与フレイム・エンチャント》!」

 剣に火が宿る。そのままアレクは剣を上段から振り下ろした。剣技は発動させない。ただ魔剣の鋭さを生かしたいなら、剣技は必要ない。

「はあっ!」

 そしてアレクの剣は、ユーリが根元へダメージを与えた羽の一つを切り落とした。

「ギャアアァァァアアァァッ!?」

 ドラゴンが悲鳴を上げる。同時に、バルと組み合わせていた爪の力が緩んだ。その瞬間、バルは一気に力を入れて、押し返す。

「ギャンッ」

 ドラゴンは、その力に逆らわずに後ろに下がろうとしたのだろう。だが、リィカが風のムチで捕まえたままの片足が、それの邪魔をした。

 バランスを崩したドラゴンの背後に、バルが回る。そして、エンチャントを唱えた。

「《水の付与アクア・エンチャント》!」

 バルはよく《土の付与アース・エンチャント》に水の魔力付与をする手を使うが、今はそれを行わず、純粋に切れ味の鋭い《水の付与アクア・エンチャント》を選択した。

 魔力付与までしようとすると、ごく僅かであってもタイムラグが生じる。このタイミングで、そのタイムラグは攻撃の瞬間を逃してしまうことになる。

 少々攻撃力が下がったとしても、バルの持つ剣は魔剣だ。アレクの持つ魔剣のように鋭さを増すような効果はなくとも、普通の剣なんかよりはよほど高い攻撃力を有している。

「ギャアアアァァァッ!」

 だが、ドラゴンの側も狙いが読めていたのだろう、そう簡単に攻撃を食らいはしなかった。バルの狙ってきた翼を動かし、攻撃を阻害しようとする。

「ちっ!」
「ギャアアッ!」

 邪魔されつつも、バルの攻撃は何とか通った。だが浅い。切り落とすには至らない。追撃しようとしたが、爪の攻撃を繰り出されて、バルは仕方なく後ろに下がる。

 だが、ずっと片足を抑えていたリィカが、動いた。

「いけぇっ!」

 片足に巻き付いていたムチを、足から外した。そしてふるわれたムチは、翼に当たる瞬間に、細く鋭い刃になっていた。それが、根元に当たり、切り落とす……かと思われた瞬間だった。

「ギャアァァァアアァッ!」

 ドラゴンの口から、凄まじい水流が吐き出され……リィカに直撃した。
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