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第十七章 キャンプ

Bランク

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 リィカは二十発の凝縮魔法を放つ。それぞれ一撃で魔物を倒しつつ、周囲にいる兵士たちの様子にも気を配る。

 放っておいても自分たちで気をつけているのかもしれないが、気になってしまうのだ。疲労で戦えなくなる前に下がって回復してほしい。けれど、どうも無理している人が多い気がする。

「リィカ嬢、どうされましたか」

 合間に話しかけてきたのは、つい先ほど来たばかりの魔法師団員だ。名前は知らない。
 魔法師団だというだけで、レイズクルスのことを思い浮かべて緊張したが、この彼から横柄な感じは受けず、むしろ礼儀正しいように感じた。

「……その、無理せずに下がって欲しいと思ったんです」

 飾らずに素直に言ってしまっても問題ないだろうと思って、それを口にする。すると、魔法師団員は一瞬黙った後に、困ったように言った。

「一番先にリィカ嬢の魔力が尽きる可能性が高いので、下がるわけにはいかないのです」
「……え」

 その言葉にリィカは一瞬呆けて、ハッとして凝縮魔法を生み出し、放つ。そして答えた。

「まだまだ余裕です。この魔法、そんなに魔力を使ってるわけじゃないので」
「……は?」

 今度は魔法師団員が呆ける番だった。それを見つつ、リィカはさらに言った。

「なので多分、わたしの魔力が尽きるより前に、皆様の方に限界が来ちゃうと思うんです。この状況でわたし一人になると、後ろに魔物を通してしまう気がするので、まだ余裕があるうちに休んで欲しいんです」

 そしてさらに魔法を放つ。
 その様子を見ながら、魔法師団員はリィカの言葉に嘘がないと見て取ったらしい。「なるほど」と頷く。

「分かりました。では適当に交代して休みつつ、戦うようにしていきます」
「はい、お願いします」

 そしてさらに魔法を放とうとしたところで、異変を感じて一瞬動きが止まる。だが、動揺を押し隠して魔法を放った。

(この魔力の強さ、Bランク……?)

 今襲ってきている魔物は、Cランクばかりだ。それすら、森の奥の方で次から次へと生まれているのを感じて、途切れる様子がない。

 このままここで魔物を倒しているだけでは、キリがない。余裕があるとはいっても、限界はある。魔物の発生源をつぶさなければ、意味がない。
 そのためにも、早いところ自分たち以外の人たちには脱出して欲しいし、今戦っている兵士たちも脱出のための体力は残しておいて欲しい。

 Cランクだけでも数が多くて厄介だというのに、今その発生源らしい場所から感じた魔力は、明らかにその上のBランクだ。まだそんなに数はいないようだが、嫌な予感がしてしまう。

 Cランクばかりだったところに、Bランクが現れた。ということは、今度はBランクばかりになり、最終的にAランクばかりが襲ってくるのではないか。もしそうなれば、リィカも周囲を気遣う余裕がなくなってくる。

 その時、耳元でリィンと音がして、同時にアレクの声が聞こえた。

『脱出を早くするように伝えた。みんなはまだ大丈夫か?』

 リィカが感じたように、アレクも感じたのだろう。むしろ、アレクの方がリィカよりももっと具体的に危機を感じているのかもしれない。

「まだ平気だよ」
『おれもまだ問題ねぇ』
『僕もまあ何とか、というところですかね』

 ユーリの返答が一番危なそうに聞こえる。やはり魔力量の関係か。とはいっても、今すぐどうにかなることはない、とリィカは判断する。

 風の手紙エア・レターを切る。今は皆が脱出するまで、ここで魔物を倒すことを考えるだけだ。

「リィカ!」

 その瞬間、背後から聞こえた声に驚いて振り向く……いや、振り向こうとして、咄嗟に体を横にずらす。間一髪、自分のいた場所が剣で攻撃されたのが見えて、リィカはヒヤッとした。

「レンデル、なに……」

 先ほど自分の名前を呼んだのは、レンデルだ。後方にいると思ったのに、なぜこんなところにいるのか。
 そう思って、すぐ気付いた。レンデルならば剣を使うはずがないのだ。

「お前たち、何をしているっ!?」
「リィカ嬢、こちらはいいので、魔物をっ!」

 側にいた騎士団員や魔法師団員に言われて、リィカは横目で彼らを見つつ、魔法は魔物に放つ。

(ほんとに何で、こんなところに?)

 そこにナイジェルとその取り巻きたちがいた。リィカを後方から攻撃してきたのは、その取り巻きの一人。

 そして、ナイジェルが魔法詠唱をしていることに、リィカは気付いた。
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