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第十七章 キャンプ
戦いの様子:バルとアレク
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数が多い。それが、バルの偽りのない感想だ。
四方から魔物が襲ってきていることを察したとき、バルはその場を動かなかった。移動するなら、他の三人の方が早い。だったら自分が残った方が面倒がない。
それを口にしたわけでもないのに、アレクもユーリもリィカも、バルに確認することなくこの場を離れた時には、少し笑ってしまった。何も言わなくても分かってくれる、などというのは幻想だと思っているが、今の自分たちの関係はそれに近い気がしている。
「【犬狼遠震撃】!」
土の、縦に振り下ろす剣技を放ち、十数体もの魔物に命中して倒れる。元々複数の魔物に対して攻撃可能なこの剣技だが、十以上もの相手に放とうとすると、逆に一撃辺りの威力が落ちる。
それでもCランクの魔物を倒せているのは、バルの実力の証明でもある。だが、バルは剣から聞こえたピシッという音に、眉を寄せた。
(そろそろ限界か)
何せ加減などしていられない。ほとんど全力で放っているのだ。この普通の剣が、そうそう保ってくれるはずもない。
(ま、しょうがねぇか)
出し惜しみできる状況ではない。自分が倒れてしまえば、あっという間に瓦解する。見られたくない、と言っていられる場合ではなかった。
「【鯨波鬨声破】!」
今度は、水の縦に振り下ろす剣技を唱える。再び十数体の魔物を倒すが、ここまでだった。ビシッという音とともに、刀身が砕け落ちる。
「バルムート様!」
「問題ねぇよ」
近くにいた騎士団員の一人が、その剣を見て悲鳴のようにバルの名を呼ぶが、チラとも見る事なく、バルはアイテムボックスに手を触れる。
そしてその瞬間、バルの手には抜き身の剣が握られていた。
「頼むな、フォルテュード」
応えるように、鍔の青い宝玉が光った。
※ ※ ※
「【百舌衝鳴閃】!」
一番遠い場所までの移動をあっという間に終えたアレクは、やはりバルと同じく縦に振り下ろす剣技を繰り出す。
「魔剣を使わずに済ませるのは、無理だな」
早々にその事実にアレクも気付く。そんなことを気にしていられる余裕はない。生徒と教師が脱出するまで、一体も後ろに通さずに倒し続けなければならないのだ。
そこまで考えて、唐突に言い忘れていたことあったことに気付いた。チラッと横を見れば、そこにいるのは魔法師団員だ。大丈夫だろうかと脳裏をよぎったが、ここに師団長派閥の団員はいないだろう。であれば問題ないはずだ。
「悪いが、ヒューズに伝言頼んでいいか」
「……え? は、はいっ!」
驚いたように肩をビクつかせた魔法師団員に、アレクは告げる。
「この場には俺たち四人だけが残る。護衛たちも全員、生徒や教師と一緒に脱出するよう伝えてくれ」
「そ、そういうわけには……!」
「俺たちだけの方が自由に動ける」
淡々と言い切れば、魔法師団員は反論しようとしてできなかったのか、悔しそうな表情を見せた後に一礼して去っていく。
それを見送る余裕などはなく、アレクはさらに剣技を繰り出した。
「【隼一閃】!」
風の横凪ぎの剣技。三日月型の弧を描く剣技は、その大きさは通常の倍以上あった。複数の魔物に命中し、さらにそれだけでは終わらずに、後ろにいた魔物まで巻き込んで倒していき、ぽっかり中央が空いた。
だが、空いた中央も、すぐ魔物に埋め尽くされる。
それを確認すると同時に、剣がボロッと崩れ落ちた。アレクは口の端をあげて、刀身の壊れた剣を魔物の群れに投げつける。そして、アイテムボックスに触れた。
「力を貸してくれ、アクートゥス」
『言われるまでもない』
抜き身の剣を手に持ち、久しぶりに感じる脳裏に響く声に、アレクの口元ははっきりと笑みを浮かべたのだった。
四方から魔物が襲ってきていることを察したとき、バルはその場を動かなかった。移動するなら、他の三人の方が早い。だったら自分が残った方が面倒がない。
それを口にしたわけでもないのに、アレクもユーリもリィカも、バルに確認することなくこの場を離れた時には、少し笑ってしまった。何も言わなくても分かってくれる、などというのは幻想だと思っているが、今の自分たちの関係はそれに近い気がしている。
「【犬狼遠震撃】!」
土の、縦に振り下ろす剣技を放ち、十数体もの魔物に命中して倒れる。元々複数の魔物に対して攻撃可能なこの剣技だが、十以上もの相手に放とうとすると、逆に一撃辺りの威力が落ちる。
それでもCランクの魔物を倒せているのは、バルの実力の証明でもある。だが、バルは剣から聞こえたピシッという音に、眉を寄せた。
(そろそろ限界か)
何せ加減などしていられない。ほとんど全力で放っているのだ。この普通の剣が、そうそう保ってくれるはずもない。
(ま、しょうがねぇか)
出し惜しみできる状況ではない。自分が倒れてしまえば、あっという間に瓦解する。見られたくない、と言っていられる場合ではなかった。
「【鯨波鬨声破】!」
今度は、水の縦に振り下ろす剣技を唱える。再び十数体の魔物を倒すが、ここまでだった。ビシッという音とともに、刀身が砕け落ちる。
「バルムート様!」
「問題ねぇよ」
近くにいた騎士団員の一人が、その剣を見て悲鳴のようにバルの名を呼ぶが、チラとも見る事なく、バルはアイテムボックスに手を触れる。
そしてその瞬間、バルの手には抜き身の剣が握られていた。
「頼むな、フォルテュード」
応えるように、鍔の青い宝玉が光った。
※ ※ ※
「【百舌衝鳴閃】!」
一番遠い場所までの移動をあっという間に終えたアレクは、やはりバルと同じく縦に振り下ろす剣技を繰り出す。
「魔剣を使わずに済ませるのは、無理だな」
早々にその事実にアレクも気付く。そんなことを気にしていられる余裕はない。生徒と教師が脱出するまで、一体も後ろに通さずに倒し続けなければならないのだ。
そこまで考えて、唐突に言い忘れていたことあったことに気付いた。チラッと横を見れば、そこにいるのは魔法師団員だ。大丈夫だろうかと脳裏をよぎったが、ここに師団長派閥の団員はいないだろう。であれば問題ないはずだ。
「悪いが、ヒューズに伝言頼んでいいか」
「……え? は、はいっ!」
驚いたように肩をビクつかせた魔法師団員に、アレクは告げる。
「この場には俺たち四人だけが残る。護衛たちも全員、生徒や教師と一緒に脱出するよう伝えてくれ」
「そ、そういうわけには……!」
「俺たちだけの方が自由に動ける」
淡々と言い切れば、魔法師団員は反論しようとしてできなかったのか、悔しそうな表情を見せた後に一礼して去っていく。
それを見送る余裕などはなく、アレクはさらに剣技を繰り出した。
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だが、空いた中央も、すぐ魔物に埋め尽くされる。
それを確認すると同時に、剣がボロッと崩れ落ちた。アレクは口の端をあげて、刀身の壊れた剣を魔物の群れに投げつける。そして、アイテムボックスに触れた。
「力を貸してくれ、アクートゥス」
『言われるまでもない』
抜き身の剣を手に持ち、久しぶりに感じる脳裏に響く声に、アレクの口元ははっきりと笑みを浮かべたのだった。
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