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第十六章 三年目の始まり
マンティコアの研究結果
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アレクに連れられてたどり着いた場所は、王都の門にほど近い場所だった。
リィカは、そこにある飾り気のない建物……というより、倉庫と言った方が近い建物を見て、首を傾げる。
「ここで何をしてるの?」
マンティコアを調べた説明を受けるという話だったが、なぜこんなところに連れてこられたのかが分からない。
王都の門近くというが、栄えている場所とは離れていて、こんな所に来たのは初めてだ。
「俺も詳しくは知らないんだが、ここには色々な方面で研究している人たちがいるらしい。そいつらが、すぐ外に出られるこの場所を希望した、と聞いた」
「ふーん……?」
説明を聞いてもよく分からない。
まあいいかと思いながらさらに進むと、建物の入り口付近に、一人の騎士が立っているのが見えた。見覚えがある。
「ヒューズ、どうしたんだ?」
そう声を掛けたのはアレクだ。
騎士団の副団長であるヒューズだ。リィカも旅立つ前に会って、旅に必要なことを色々教えてもらっている。
そのヒューズは、アレクに答えて敬礼した。
「皆様方をお待ちしていたんです。研究者たちは何かと暴走しがちなので、誰か仲介役が必要なんですよ」
「……暴走?」
不思議そうなアレクに合わせて、リィカも首を傾げていた。
※ ※ ※
「おおーっ、君かっ!? 君だなっ!? あれは一体なんだ? 傷口は焼かれているが、炎ではない。一直線に貫いている傷は《火炎光線》に似ているが、あれは違う。何をしたらあのような傷になるのだっ!?」
「あ、あの……?」
建物に入るなり、リィカは一人の男性に詰め寄られた。髪も髭もボサボサで、着ている服もヨレヨレ。目がギラギラしていることだけは分かる。
困ってアレクに助けを求めてみたが、アレクもバルと共にそれどころではなかった。
「首を断ったのはお前さんか? 胴体の方か? まあどっちでもよい。惚れ惚れしたぞ、あの切り傷。真っ直ぐスパッとシャキッとサクッと、あんな綺麗なものはなかなか拝めん」
「待てっ、何を言う! あの傷はズバッとジャキンとザクッとという表現の方がふさわしいだろうっ!」
「貴様こそ何を言う! 何も分かっておらぬのはそちらではないかっ!」
何の挨拶もなく話しかけてきたと思ったら、よく分からない言い争いを始めた研究者を前に、アレクもバルも困惑顔だ。一人詰め寄られていないのはユーリだが、こちらも困惑顔だ。
「はいはい、そこまで」
ヒューズがパンパンと手を叩いて、研究者たちを止める。すると、研究者たちはなぜか驚いた顔をした。
「ヒューズ様、いつの間にそこに?」
「来たのならそうと言って下さいよ」
「いくら副騎士団長とは言っても、入るときに無断で入るのはどうかと思いますよ」
「……………」
一緒に入ってきたんだけど、とリィカは思ったが、口に出すのはやめた。
ヒューズは先頭に立っていたんだから、気付かない方がおかしい。が、研究者たちは本気でヒューズがいたことに気付いていなかったらしい。
チラリとリィカはヒューズの顔を見て、見たことを後悔した。満面の笑みなのに、ものすごく怖い。
「では殿下方、奥へ参りましょうか。このように目も頭も不自由な者たちですが、研究だけはしっかりしておりますので」
華麗に研究者たちを無視して、しかししっかり相手を非難しながら、ヒューズは建物の奥へと向かった。
「おおー、そうだったそうだった」
「こっちに来て、あの惚れ惚れする傷の解説を頼む」
「本当にあれは興味深い。研究が楽しくてたまらん」
ヒューズに言われたことなど何も気にしていない様子で、同じく奥へと向かう研究者たちに、リィカたちは何となく顔を見合わせてから、その後を追いかけたのだった。
※ ※ ※
結論から言えば、あのマンティコアはやはり普通ではなかったらしい。
普通のマンティコアが分からないのでは、と思ったリィカだったが、過去の資料は色々あるらしく、そこから読み解くに、やはり違う部分が多いとのこと。
一つ、体毛が通常よりも長い。
一つ、皮膚の弾力性が高い。
一つ、喉元に不自然な器官がある。下手すれば呼吸すら阻害されかねないが、その器官を避けて呼吸できるように工夫されている。
「これを作った者は、素晴らしい天才だーっ!」
感激したように叫んでいる研究者たちは、やはり自分が楽しんでいるだけなのだろう。それよりも、彼らがあっさりと「作る」と言ったことが、問題だった。
「何者かによって、人為的に"作られた"魔物だと?」
「むろんっ!」
アレクの険しい表情も何のその、研究者は元気に肯定した。
「自然発生的に、ここまで変わることはあり得ん! どれか一つであれば、"進化"していると考えてもいいがな!」
「変わりすぎてるからな! 自然な流れじゃここまで一気には変わらん!」
無駄に元気が良すぎるものの、実際にマンティコアを示しながら、研究者たちがそれぞれに説明してくれた。その内容から考えられる可能性は、一つだ。
「ヒューズ、少し話を……」
「それよりも! あの傷の説明を頼む!」
言いかけたアレクの言葉は、研究者たちによって遮られた。
魔法の傷がどうだ剣の切れ味がどうだとなんだと、口々に騒ぎ始めて詰め寄られて、アレクの足が一歩下がった。
※ ※ ※
そして、リィカは今王宮にいた。アレクはもちろん、バルとユーリも一緒である。
あの後は大変だった。思い出すだけで疲れてくる。
マンティコアの説明が終わった途端に絡み始めた研究員たちを、時々物理的な暴力が混ざりつつもヒューズが引き離し、こうして王宮に招待されたのだ。
「皆様方、お疲れ様でした。それから申し訳ありませんでした。彼らに言い含めておいたのですが、全く意味がありませんでしたね。今後は何かあっても会わせないようにいたしますので、ご容赦下さいませ」
その謝罪にリィカたちは四人揃って、似たような引きつり笑いをした。
リィカは結局雷の魔法のことを話してしまった。それで終わるはずがなく、そこからさらに根掘り葉掘り聞かれて、答えられずに泣きたくなった段階で、ヒューズの暴力が発動した。
だが、殴られても叩かれても怯まない彼らは最強だった、とリィカは場違いにもそう思ったのだった。
「ですが、彼らのように魔物の研究を行う者たちは、とても貴重です。剣や魔法を強くしていくだけではない。魔物のことを知れば、倒すのもより容易になる。そのための研究を、日夜行ってくれているのですから」
「……一応、それは分かる。分かるが、あいつらは分かっているのか、それ」
アレクは疲れたように首肯しつつも、疑問を口にした。
言いたいことは分かる。彼らの研究は貴重だろう。弱点が分かれば、それだけ倒すのも楽になるし、被害も少なくなる。
だが彼らの様子を見ていると、人のためになる研究ではなく、ただ自らが楽しんでいるだけにしか見えない。
「まあ、そこはそれです。しっかり成果は出してくれていますから」
フイッと視線を逸らせながら言ったヒューズの態度が、アレクの疑問の答えを雄弁に語っていた。
やれやれ、とアレクはため息をついて、気を取り直した。とりあえず研究者たちのことはいい。色々問題はあるが、研究面においての能力は少なくとも本物だ。本当の問題は、別件だった。
「ヒューズ、父上とミラー団長に話をしたいので、連絡を頼む。悪いが、お前は遠慮してくれ。ミラー団長が必要と思えば、そちらから話をするように言う」
「かしこまりました」
ヒューズはまるでそう言われるのを分かっていたかのように、ただ頭を下げたのだった。
※ ※ ※
「魔王の、兄……?」
そう時を置くことなく、国王の執務室に通されたリィカたちは、国王とすでにいたミラー団長にカストルのことを伝えた。
ちなみに、ミラー団長とは騎士団の団長であり、バルの父親でもある男の事である。
そして、アレクが説明を行うと、国王が愕然として、ミラー団長は眉をひそめたのだ。
「黙っていて申し訳ありません。カストルたちがどこで何をするつもりなのか、情報が全くなかったので、伝えることを躊躇いました」
アレクは丁寧に謝罪をしつつ、言葉を続ける。
「ですが今回の件、どこまで魔族が関わっているかは不明ですが、全く無関係ということもないと思います。その点を踏まえて、捕らえた男の尋問なりを行って頂ければと思います」
どうしても頭をよぎるのが、モントルビアの王都で戦った、強化された魔物だ。となると、自然に意識は魔族、ひいてはカストルへと向かう。
彼らの情報は全くない。だが、黙っているのは良くないと判断して、アレクは伝える人間を限定して話をしたのだ。
今、国王はアレクが話をしている間に、驚きから立ち直っていた。
「そうか、分かった。……尋問はまだまだこれからだ。とりあえず本人は、自らの天才的頭脳を妬んだ奴らによって奴隷に落とされた、と話しているが」
「研究者たちの話からだと、天才的頭脳ってのも、あながち間違いじゃなさそうですね」
ミラー団長の言葉に、国王はなんとも鬱陶しそうな顔をした。
「間違った方向に、それを伸ばしてほしくないんじゃがな」
反論の余地もないことを口にして、改めて国王はリィカたち四人を見回した。
「情報、感謝する。今後の取り調べで、何か分かり次第教える。それと、魔王の兄の件は、どこまで伝えるかはこれから考える故、まだ当分は他言無用で頼む。……まあ、言われるまでもないであろうが」
ここまで四人は、その情報を誰にも漏らさなかったのだ。そんな素振りすら見せずにいた。わざわざ他言無用と伝える必要性すらないのかもしれないが、それでも念のため、というところだろうか。
そんなことをリィカは思いつつ、黙って頭を下げたのだった。
※ ※ ※
そして時はすすみ、二ヶ月後。
――キャンプが行われる。
ーーーーーー
これで第十六章が終わります。
最初は、この後に間章としてモントルビア王国編を入れようかと思ったんですが、書いてみたら何か違ったので、次はこのまま十七章のキャンプ編に入って、その後に間章を入れます。
今、十八章を書き始めたところです。そこが終わったら、いよいよラストに向けての話になっていくので、十九章か二十章か、そのくらいで完結するんじゃないかなという気がします(曖昧ですいません)。ちなみに、その後に番外編を入れる予定です。
リィカは、そこにある飾り気のない建物……というより、倉庫と言った方が近い建物を見て、首を傾げる。
「ここで何をしてるの?」
マンティコアを調べた説明を受けるという話だったが、なぜこんなところに連れてこられたのかが分からない。
王都の門近くというが、栄えている場所とは離れていて、こんな所に来たのは初めてだ。
「俺も詳しくは知らないんだが、ここには色々な方面で研究している人たちがいるらしい。そいつらが、すぐ外に出られるこの場所を希望した、と聞いた」
「ふーん……?」
説明を聞いてもよく分からない。
まあいいかと思いながらさらに進むと、建物の入り口付近に、一人の騎士が立っているのが見えた。見覚えがある。
「ヒューズ、どうしたんだ?」
そう声を掛けたのはアレクだ。
騎士団の副団長であるヒューズだ。リィカも旅立つ前に会って、旅に必要なことを色々教えてもらっている。
そのヒューズは、アレクに答えて敬礼した。
「皆様方をお待ちしていたんです。研究者たちは何かと暴走しがちなので、誰か仲介役が必要なんですよ」
「……暴走?」
不思議そうなアレクに合わせて、リィカも首を傾げていた。
※ ※ ※
「おおーっ、君かっ!? 君だなっ!? あれは一体なんだ? 傷口は焼かれているが、炎ではない。一直線に貫いている傷は《火炎光線》に似ているが、あれは違う。何をしたらあのような傷になるのだっ!?」
「あ、あの……?」
建物に入るなり、リィカは一人の男性に詰め寄られた。髪も髭もボサボサで、着ている服もヨレヨレ。目がギラギラしていることだけは分かる。
困ってアレクに助けを求めてみたが、アレクもバルと共にそれどころではなかった。
「首を断ったのはお前さんか? 胴体の方か? まあどっちでもよい。惚れ惚れしたぞ、あの切り傷。真っ直ぐスパッとシャキッとサクッと、あんな綺麗なものはなかなか拝めん」
「待てっ、何を言う! あの傷はズバッとジャキンとザクッとという表現の方がふさわしいだろうっ!」
「貴様こそ何を言う! 何も分かっておらぬのはそちらではないかっ!」
何の挨拶もなく話しかけてきたと思ったら、よく分からない言い争いを始めた研究者を前に、アレクもバルも困惑顔だ。一人詰め寄られていないのはユーリだが、こちらも困惑顔だ。
「はいはい、そこまで」
ヒューズがパンパンと手を叩いて、研究者たちを止める。すると、研究者たちはなぜか驚いた顔をした。
「ヒューズ様、いつの間にそこに?」
「来たのならそうと言って下さいよ」
「いくら副騎士団長とは言っても、入るときに無断で入るのはどうかと思いますよ」
「……………」
一緒に入ってきたんだけど、とリィカは思ったが、口に出すのはやめた。
ヒューズは先頭に立っていたんだから、気付かない方がおかしい。が、研究者たちは本気でヒューズがいたことに気付いていなかったらしい。
チラリとリィカはヒューズの顔を見て、見たことを後悔した。満面の笑みなのに、ものすごく怖い。
「では殿下方、奥へ参りましょうか。このように目も頭も不自由な者たちですが、研究だけはしっかりしておりますので」
華麗に研究者たちを無視して、しかししっかり相手を非難しながら、ヒューズは建物の奥へと向かった。
「おおー、そうだったそうだった」
「こっちに来て、あの惚れ惚れする傷の解説を頼む」
「本当にあれは興味深い。研究が楽しくてたまらん」
ヒューズに言われたことなど何も気にしていない様子で、同じく奥へと向かう研究者たちに、リィカたちは何となく顔を見合わせてから、その後を追いかけたのだった。
※ ※ ※
結論から言えば、あのマンティコアはやはり普通ではなかったらしい。
普通のマンティコアが分からないのでは、と思ったリィカだったが、過去の資料は色々あるらしく、そこから読み解くに、やはり違う部分が多いとのこと。
一つ、体毛が通常よりも長い。
一つ、皮膚の弾力性が高い。
一つ、喉元に不自然な器官がある。下手すれば呼吸すら阻害されかねないが、その器官を避けて呼吸できるように工夫されている。
「これを作った者は、素晴らしい天才だーっ!」
感激したように叫んでいる研究者たちは、やはり自分が楽しんでいるだけなのだろう。それよりも、彼らがあっさりと「作る」と言ったことが、問題だった。
「何者かによって、人為的に"作られた"魔物だと?」
「むろんっ!」
アレクの険しい表情も何のその、研究者は元気に肯定した。
「自然発生的に、ここまで変わることはあり得ん! どれか一つであれば、"進化"していると考えてもいいがな!」
「変わりすぎてるからな! 自然な流れじゃここまで一気には変わらん!」
無駄に元気が良すぎるものの、実際にマンティコアを示しながら、研究者たちがそれぞれに説明してくれた。その内容から考えられる可能性は、一つだ。
「ヒューズ、少し話を……」
「それよりも! あの傷の説明を頼む!」
言いかけたアレクの言葉は、研究者たちによって遮られた。
魔法の傷がどうだ剣の切れ味がどうだとなんだと、口々に騒ぎ始めて詰め寄られて、アレクの足が一歩下がった。
※ ※ ※
そして、リィカは今王宮にいた。アレクはもちろん、バルとユーリも一緒である。
あの後は大変だった。思い出すだけで疲れてくる。
マンティコアの説明が終わった途端に絡み始めた研究員たちを、時々物理的な暴力が混ざりつつもヒューズが引き離し、こうして王宮に招待されたのだ。
「皆様方、お疲れ様でした。それから申し訳ありませんでした。彼らに言い含めておいたのですが、全く意味がありませんでしたね。今後は何かあっても会わせないようにいたしますので、ご容赦下さいませ」
その謝罪にリィカたちは四人揃って、似たような引きつり笑いをした。
リィカは結局雷の魔法のことを話してしまった。それで終わるはずがなく、そこからさらに根掘り葉掘り聞かれて、答えられずに泣きたくなった段階で、ヒューズの暴力が発動した。
だが、殴られても叩かれても怯まない彼らは最強だった、とリィカは場違いにもそう思ったのだった。
「ですが、彼らのように魔物の研究を行う者たちは、とても貴重です。剣や魔法を強くしていくだけではない。魔物のことを知れば、倒すのもより容易になる。そのための研究を、日夜行ってくれているのですから」
「……一応、それは分かる。分かるが、あいつらは分かっているのか、それ」
アレクは疲れたように首肯しつつも、疑問を口にした。
言いたいことは分かる。彼らの研究は貴重だろう。弱点が分かれば、それだけ倒すのも楽になるし、被害も少なくなる。
だが彼らの様子を見ていると、人のためになる研究ではなく、ただ自らが楽しんでいるだけにしか見えない。
「まあ、そこはそれです。しっかり成果は出してくれていますから」
フイッと視線を逸らせながら言ったヒューズの態度が、アレクの疑問の答えを雄弁に語っていた。
やれやれ、とアレクはため息をついて、気を取り直した。とりあえず研究者たちのことはいい。色々問題はあるが、研究面においての能力は少なくとも本物だ。本当の問題は、別件だった。
「ヒューズ、父上とミラー団長に話をしたいので、連絡を頼む。悪いが、お前は遠慮してくれ。ミラー団長が必要と思えば、そちらから話をするように言う」
「かしこまりました」
ヒューズはまるでそう言われるのを分かっていたかのように、ただ頭を下げたのだった。
※ ※ ※
「魔王の、兄……?」
そう時を置くことなく、国王の執務室に通されたリィカたちは、国王とすでにいたミラー団長にカストルのことを伝えた。
ちなみに、ミラー団長とは騎士団の団長であり、バルの父親でもある男の事である。
そして、アレクが説明を行うと、国王が愕然として、ミラー団長は眉をひそめたのだ。
「黙っていて申し訳ありません。カストルたちがどこで何をするつもりなのか、情報が全くなかったので、伝えることを躊躇いました」
アレクは丁寧に謝罪をしつつ、言葉を続ける。
「ですが今回の件、どこまで魔族が関わっているかは不明ですが、全く無関係ということもないと思います。その点を踏まえて、捕らえた男の尋問なりを行って頂ければと思います」
どうしても頭をよぎるのが、モントルビアの王都で戦った、強化された魔物だ。となると、自然に意識は魔族、ひいてはカストルへと向かう。
彼らの情報は全くない。だが、黙っているのは良くないと判断して、アレクは伝える人間を限定して話をしたのだ。
今、国王はアレクが話をしている間に、驚きから立ち直っていた。
「そうか、分かった。……尋問はまだまだこれからだ。とりあえず本人は、自らの天才的頭脳を妬んだ奴らによって奴隷に落とされた、と話しているが」
「研究者たちの話からだと、天才的頭脳ってのも、あながち間違いじゃなさそうですね」
ミラー団長の言葉に、国王はなんとも鬱陶しそうな顔をした。
「間違った方向に、それを伸ばしてほしくないんじゃがな」
反論の余地もないことを口にして、改めて国王はリィカたち四人を見回した。
「情報、感謝する。今後の取り調べで、何か分かり次第教える。それと、魔王の兄の件は、どこまで伝えるかはこれから考える故、まだ当分は他言無用で頼む。……まあ、言われるまでもないであろうが」
ここまで四人は、その情報を誰にも漏らさなかったのだ。そんな素振りすら見せずにいた。わざわざ他言無用と伝える必要性すらないのかもしれないが、それでも念のため、というところだろうか。
そんなことをリィカは思いつつ、黙って頭を下げたのだった。
※ ※ ※
そして時はすすみ、二ヶ月後。
――キャンプが行われる。
ーーーーーー
これで第十六章が終わります。
最初は、この後に間章としてモントルビア王国編を入れようかと思ったんですが、書いてみたら何か違ったので、次はこのまま十七章のキャンプ編に入って、その後に間章を入れます。
今、十八章を書き始めたところです。そこが終わったら、いよいよラストに向けての話になっていくので、十九章か二十章か、そのくらいで完結するんじゃないかなという気がします(曖昧ですいません)。ちなみに、その後に番外編を入れる予定です。
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