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第十三章 魔国への道

樹林の中の様子

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「……やっぱり襲ってこないね」
「そうだな……」

 暁斗とバルが、しみじみ語った。

 樹林の中に入ったのが、朝。
 木々に遮られて空が見えにくいが、所々から漏れ出る日差しを見る限りでは、すでに昼時だろう。
 結構な時間がたったものの、洞窟は見つかっていない。

 樹林の中をほとんど迷子状態でうろうろしているのだが、そうしているうちにある事に気付いた。

 魔物とは結構な頻度で遭遇する。
 今のところ、最低ランクでCランクの魔物だ。Bランクが一番多く、Aランクとも何回か遭遇した。

 しかし、Cランクの魔物はこちらを見るやいなや襲ってくるのだが、Bランク以上だと興味なさそうに素通りされて、襲ってこないこともある。

「この森の中で、ある意味穏やかに暮らしてるのかな? だから、何かなければ別にわざわざ襲う必要もない、みたいな?」

「だが、魔王誕生で魔物もだいぶ活発になっているだろう? 影響受けないなんてあるのか?」

 リィカが推測を述べれば、アレクは疑問を呈した。

 活発というか、凶暴化という方が正しいかも知れないが、今まで以上に好戦的になっているのだ。
 今までに遭遇した野生のBランクの魔物は砂漠で出会ったバシリスクだけだが、それとてかなり普段よりも遭遇率が高い、という話だった。

 ここの魔物だけ、影響もなく穏やかに過ごすなどあるのだろうか。ましては、北の魔国に近くなっているのだ。

「いいじゃないか、理由は何でも。戦わずに済むなら、それに越したことはない」
「タイキさんの言う通りですよ。別に僕たちはここの魔物を駆逐しに来たわけじゃないんですから」
「……まあ、そうだけどな」

 アレクが足を止める。その視線の先にいるのはAランクの魔物、パズズだ。ライオンの頭と腕、ワシの脚、背中に4枚の鳥の翼がある魔物だが、チラッと見ただけで通り過ぎていく。

「それよりも休憩しないか。この状況なら、少しくらいゆっくりできるだろう」

 泰基がチラッとリィカを見ながら言えば、アレクも頷いた。口に出しては何も言わないが、明らかに疲労が見えている。

「果物もたくさんもらったしな。食べるか」

 失笑が漏れる。
 バナスパティのお土産は、もう少し量を考えてくれれば素直に有り難いと思えるのに、食べきれるんだろうかと考えてしまうと、笑うしかなかった。


※ ※ ※


 果物を食べて休憩後、再び樹林の中を散策する。
 代わり映えがしない……というわけではない。木々の密集具合が違うだけ、という違いでしかないが。

 一応、印をつけながら歩いているし、同じ所を歩いているということはないはずだが、洞窟らしいものは見つからない。

 魔物は穏やかだ。
 Aランクの魔物、ヒドラに遭遇したのだが、まるで興味なさそうに眠りこけている。刺激しないようにして、その場を離れた。

「話じゃ、帰ってこないか逃げ帰ってくるかの二択だと言っていたんだけどな」

 最終防衛線の砦でバジェットから聞いた話を、アレクは思い返す。一攫千金を求めて森に入った冒険者は、大体そのどちらかだという話を聞いたのだ。

「Aランクの魔物だって、倒せば結構な金になりますよ。一攫千金を求めたのなら、わざわざ見逃しはしないでしょう」
「それもそうか」

 魔物が襲ってこなくても、こっちから襲えば当然魔物だって反撃してくるだろう。穏やかなのは、自分たちも戦おうとしていないからか。

「これだと、ただの森の中での散歩だね」

 リィカが辺りを見回している。リィカからしたら、有り難い状況だ。自らが戦えない状況で、無理に戦いたいとは思えない。

 そんな感じで、時々襲ってくるCランクの魔物を倒しつつ前に進むこと、しばし。
 急にアレクが立ち止まった。

「アレク、どうしたの?」

 隣にいたリィカが聞くが、アレクは頭を押さえて反応しない。

「アレク?」
「……こっちだ」
「え? え、アレク!?」

 急に早足で歩き出したアレクを、リィカが慌てて後を追う。その後ろで、暁斗と泰基、バル、ユーリも顔を見合わせた後、後を追った。

 そして、一行の目の前に、大きく口を開けたような洞窟があったのだった。


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