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第十三章 魔国への道

泰基VSフロストック③

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「ヒョッヒョッ、いやー今のは肝が冷えたわい」
「そうかよ」

 笑うフロストックに、泰基は悪態をつく。
 あれで決めきれなかったのは、泰基としては痛い。あのような奇襲は、最初だから効果がある。二度目はああも上手くはいかないだろう。

「じゃが、謎解きは終了したぞい。要するに、その剣の効果じゃな。効果時間は、そう長くはなさそうじゃが、厄介そうな能力じゃ」
「…………」

 泰基は黙して語らない。だが、その通りだ。
 魔剣デフェンシオの効果。それは、任意の相手を一人指定して、およそ十秒間の間、どんな攻撃からも身を守る、というものだ。

 《結界バリア》と違うのは、結界など何もないので、剣も魔法も制約を受けない。言ってみれば、その十秒間は相手の攻撃は一切受けず、自分は自由に攻撃できる、無敵状態になる。

 ただし、一度その効果を発動した後、次に使えるのはおよそ三十秒後だ。普通にしていれば短いクールタイムだが、一秒ごとに戦況が変わるような戦いの中では、果てしなく長い時間だ。

 泰基は、魔剣デフェンシオの元となった魔石に触れていた時の事を思い出す。
 あの時、自分が抱いていた思い。

 凪沙を守れなかった。死なせてしまった。母親の夢に苦しむ暁斗に何もしてやれない。守ってあげられない。
 守りたかった。大切な人たちを、守る力が欲しかったのだ。

 その思いが、きっと魔石に染みついたのだろう。剣という、敵に攻撃するための武器なのに、守るという真逆の思いが染みついた。
 それらが合わさった結果が、魔剣デフェンシオの能力なのだ。

 泰基は立ち上がって剣を構えた。
 守るための能力がついたせいなのか、攻撃力はそこまで高くない。普通の剣よりは高いが、暁斗の聖剣グラムやバルの魔剣フォルテュードには遠く及ばない。

 だが、だからなんだ。
 自分がすることは、勝つことだけだ。

 相変わらず、足元はつるつるだ。立ったはいいが、まともには動けない。さきほどのような攻撃は、おそらくもう通じないだろう。

(――それならば、いっそのこと、接近戦をやめるか)

 相手が魔法使いだから接近戦の方が有利だと思ったが、このフィールドでは有利には働かない。それなら、無理に接近戦をすることもない。

 泰基は、生活魔法の《アクア》の要領で、靴の下に水を出現させる。その水は寒さですぐに凍りつき、泰基の足元を固めた。
 この場から動けなくなってしまったが、滑って攻撃できないよりはずっとマシだ。

「《氷柱アイシクル》!」

 泰基は魔法を唱えた。水の中級魔法だ。先ほどまでのお返しと言わんばかりに、フロストックの足元から氷柱が出現する。

「ぬおっ!?」

 フロストック自身は氷の床でも何と言うこともなく動いているが、これにはバランスを崩す。
 泰基はすかさず次の魔法を使った。

「《水鉄砲アクアガン》!」
「なめるでないわ!」

 フロストックのその一喝で、《水鉄砲アクアガン》は凍りついて下に落ちる。

「ワッシを相手に、水や氷で攻めてくるとは、良い度胸をしておるな」
「……どっちでも、多分大して変わらないと思うんだよな」

 泰基の持つ属性は水と光の二つだ。水は確かに凍らされる可能性が高いし、氷はあちらの方が専門だ。
 けれど、光魔法で攻撃したとしても、先ほど光の剣技を凍り付かせたことから考えれば、どちらを使っても結果は変わらないだろう。

 こんなのを相手にするなら、火の属性が欲しかったと思う。

 もしかして、ユーリがフロストックの相手を務めていたら、火事場の馬鹿力で火魔法を使えるようになったんじゃないだろうか。
 考えても意味のないことが、泰基の頭をよぎった。


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