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第十三章 魔国への道

三つの結界発動

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「暁斗!」

 泰基は、氷の塊を躱しながら叫んだ。
 ダランは人間だ。そして、仲良くなった相手だ。そんな相手と、一対一で戦えるはずがない。早くどうにかしなければ。

「ヒョッヒョッヒョッヒョッ」

 氷の塊を放った老人の笑い声が、すぐ近くから聞こえる。
 フロストックとは、確か四天王の一人だと言われていた相手だ。

 舌打ちをしたくなるのを押さえる。まずは、暁斗の元に行くことが優先だ。

「済まぬが、お主の相手はワッシが務める。年寄り同士、仲良くしようじゃないかの」
「俺はまだ四十一だぞ。年寄り扱いするな」

 言い返して距離を取る。
 近づけば、あの結界に囚われる。そういうわけにはいかない。距離を保ったまま、暁斗の所へ向かおうとした時、違和感が駆け抜けた。

「……………!」

 足が冷たい。
 足元を見れば、地面に氷づけにされている。

「ヒョッヒョッヒョッ。捕まえたぞ。<決闘場開場デュエルフィールド・オープン>」

 黒い透明の囲いが出現し、広がった。


※ ※ ※


 ユーリは目を見開いた。
 氷煙の中から現れたのは、ウォーハンマーを持ったクサントスだ。

「《結界バリア》!」

 何とか魔法が間に合った。ウォーハンマーが《結界バリア》で防がれる。
 が、クサントスの口の端が上がったのが見えた。
 同時に、ユーリの体が動かなくなる。

「<決闘場開場デュエルフィールド・オープン>」

 しまった、と思った時には遅かった。
 黒い囲みが広がった。


※ ※ ※


 アレクとバルは、後方にステップする。
 目の前で攻撃を仕掛けてきたのは、ヤクシャとヤクシニーと呼ばれていた相手。四天王と呼ばれる存在だと聞いていた相手。
 その二体が、同時にアレクとバルに攻撃してきたのだ。

 四人が向かい合う。

 ヤクシャもヤクシニーも、何も武器を持っていない。両の拳を握り、構えている。
 見覚えがあった。モントルビアの最南端の村で初めて遭遇した魔族、ポールとパールの構えとよく似ている。

「……アレク、タイキさんとユーリが」

 その言葉で、二人が魔族の結界に囚われたことを知る。
 アレクは僅かに表情を歪めるが、すぐに目の前の相手に意識を戻す。

「あんたたちは、四天王としては二人で一人の勘定という話だったな。一対一になれない以上、あの結界を警戒する必要もないということだな」

 アレクが魔族二体に話しかける。どう反応するかと思ったら、ヤクシャもヤクシニーも面白そうな表情をした。

「まあ、そう思うよなー」
「そうじゃないのよねぇ」

 ヤクシャの右手とヤクシニーの左手が合わさる。
 同時に、アレクとバルの体が動かなくなる。

「「<決闘場開場デュエルフィールド・オープン>」」

 魔族二体の声が重なる。
 同時に黒い囲みが出現。アレクとバル、魔族二体を囲んで広がった。


※ ※ ※


「みんなっ!?」

 リィカが叫ぶ。
 あれよあれよという間に、自分を残してみんなが結界に囚われた。

「ごめんね。リィカ一人仲間はずれみたいになっちゃって」
「ジャダーカがリィカリィカつぶやきながら、魔石を壊しまくっててさ。怖いんだよ」
「あいつの機嫌損ねたくないから、リィカだけは放置しようって決めたのよ」

 リィカはギリッと歯を噛みしめる。
 自分一人が取り残された理由……というか原因は分かったが、だからといってこの状況を受け入れられるかと言われれば、絶対に無理だ。

「リィカ! 頼む、暁斗を!」

 泰基の叫び声に、暁斗に視線を向ける。
 真っ青な顔で、立ち尽くしている。

「任せて。だから、泰基は自分のことに集中して」
「ああ」

 ホッとした泰基の声を聞きながら、リィカは足を前に進める。暁斗を閉じ込めている結界に手を触れる。
 そんなリィカを、ダランが小馬鹿にするように笑った。

「何する気なの、リィカ」
「決まってるでしょ、壊すのよ。暁斗に、人とは戦わせない」

 鋭く言い返した。


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