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第十三章 魔国への道

地下道

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 地下道の中はヒンヤリしていた。
 明かりも等間隔にある。薄暗い程度の明かりでしかないが、歩く分には問題なかった。

 地下道の道も高さも二メートルくらいあるから、一番体の大きいバルも何も問題なく歩くことが出来ている。

 ユーリが通路の壁に手を置いた。

「すごいですね、これ土なんですね。それが崩れもせずに……」
「ほんとだ。土だ。でも、たぶん……」

 同じように触れたリィカもつぶやく。
 土に魔力を感じる気がして、その流れを探る。そして、魔力の流れてきている先に目を向けた。

「やっぱり魔石だ。この魔石には土の魔力が込められてる。それで、この土の壁を維持してるんだよ」

 どれどれとユーリがのぞき込んだ。
 確かに魔石だ。

「つまり、過去にこの通路を作った人は、魔道具作りみたいなことをしていたんでしょうか」
「道具まで作ってたかはともかく、魔力付与はできてたって事だよね」

 地下道の先を歩きながら、魔石が等間隔に埋め込まれていることに気付く。
 同時に別の疑問も沸く。

「魔力付与した魔石って、いつまで持つのかな?」

 作られたのがいつか分からないが、埋められた魔石の魔力がいつまでも持つものなのだろうか。

「さっきの扉に聖剣を刺したでしょ? その時に、魔力付与がされるような仕組みになってるんだって」

 暁斗の解説にへぇ、と声が漏れる。
 どうやっているのやら。すごい仕組みだ。

「この通路はかなり長いみたい。ただ魔物は出ないから、急いで進んで問題ないって。途中でいくつかさっきと似たような扉があって、そこから地上に出られるとも言ってる。変わってなければ、そこにオアシスがあるはずだって」

 暁斗の解説がさらに続く。
 暁斗がそういった説明をするのは珍しいが、ただ聖剣が言ったことを諳んじているだけだろう。
 オアシス、の言葉に一行が微妙な顔をしたのは、イビーを思い出したせいか。

 道がかなり長いことは、事前にルードリックからも聞いている。
 帝都ルベニアがあるのは、ルバドール帝国の南側だ。当然北に抜けようと思えば、距離が長い。

 アレクは少し考える様子を見せた。

「タイキさん、剣はどうだ? 使いこなせそうか?」
「ああ、まあまだ何となく、といった感じだが」

 新しく剣を手に入れた泰基に質問する。どんな能力があるのか、どうやって使うのか、それさえ分かっていないのだ。
 そして、剣を手に入れたと言えば、リィカとユーリもだ。

「とりあえず上に出られるところでは出るとして、時間を決めて剣の練習をする時間を取るか? それ以外は、最低限休んで移動するようにしてはどうだろうか」

 ここに来るまで、歩いて移動するときは無理はしないようにしていた。
 旅の始めの頃は、泰基にあまり体力がなかったし、たった一人の女性であるリィカの負担も考えて、そこまで無理に進もうとはしなかった。

 そこには、当然魔物との戦いもあるし夜番もあったから、無理してもしょうがない、という考えがあった。
 だが、魔物が出ないのであれば、少々の無理もきく。

「どうやって時間を決めるんですか?」
「あ」

 ユーリのツッコミに、アレクが間抜けな声を出した。
 ここは地下道。当然、陽は入らない。つまりは、時間が分からないのだ。

「大丈夫だ」

 泰基がアイテムボックスから何かを取り出した。

「剣の練習をして、そのままそこで休んだ方がいいだろ。俺が時間を見ておくから」

 取り出したのは、日本から持ち込んでいた腕時計だ。一応持ってきていたのだが、ここまでの旅の間、ほぼ出番はなかった。

 ちなみに、この世界も一日の長さが大体二十四時間であることは確認している。
 召喚されて数日程度確認しただけなのでズレはあるだろうが、まったく何も時間の目安がないよりはマシだろう。

 アナログ式のシンプルな時計で日付なんかもないから、分かるのは本当に時刻だけ。
 ちなみに時計が指し示している時間は、十時だ。この十時が午前十時とするならば、まあそのくらいの時間だろうか、と思えなくもない。

 アレクやバル、ユーリが興味深そうに腕時計をのぞき込みつつ、一行は先へと急いだ。


※ ※ ※


「扉だ」

 先頭を歩くアレクが、嬉しそうな声を出した。

 長いと言われていた通路は、本当に長かった。
 およそ一ヶ月。
 途中にいくつかあった扉から外に出はしたが、それでもほとんど景色の変わらない地下道をひたすら進むのだ。
 一人だったら、間違いなく途中で精神が病んでいた自信がある。

「あの扉で、通路終わりなんだよね?」
「うん。そうみたい」

 リィカも暁斗も、似たり寄ったり。
 ついでに言えば、バルもユーリも、泰基も、ホッとした顔をしている。

 扉の前に立ち、暁斗がその窪みに聖剣を差し込む。
 ギィッと音を立てて、扉が開いた。

「外に出るとき、気をつけろよ」

 アレクがそう注意したのは、途中で外に出たときに眩しさで目をやられたからだ。燦々と太陽が照っていたから、なおさらまずかった。

 暁斗が頷いて、薄目で扉から外に出る。
 気配で周囲に誰もいないことは確認済みだ。

 時間は日中であるとは思ったが、明るさはそこまででもない。幸いにも曇りのようだ。
 それでも全員の目が明るさに慣れるのには、少し時間を要した。

 そして、目が慣れて周囲を見渡す。

「何もないね」

 リィカがつぶやいた。
 まさにその通りで、周囲には荒野が広がるばかり。
 元々こういう場所なのか。――それとも、魔族に滅ぼされてこうなってしまったのか。

「みんな」

 アレクが呼びかける。

「ここから先の情報は、ほとんどない。いよいよ魔族の勢力圏内だ。気を引き締めていくぞ」

 全員が一斉に頷く。
 そして、北に向かって歩き出した。

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