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第十二章 帝都ルベニア

約束の内容は?

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一行を先導しているのは暁斗だ。
雨を降らしているというゾウの居場所を知っているのは、暁斗の持つ聖剣なのだから、それも当然だろう。

街と街を結ぶ道からは逸れている。
トラヴィスは若干顔を引き攣らせていた。砂漠を旅するときに、決められた道を外れるのは死を意味する。

目印も何もなく、砂で視界が悪い。彷徨ううちに水がなくなれば、それで終わりだ。
仮に水が何とかなったとしても、食べ物がない。

だから、決して道は外れるなと言われるのだが、暁斗は全く気にする事なく道なき道を進み、一行も当たり前のようにその後に続いている。

(どうか何も起きませんように)

そう願いながら、トラヴィスは進む方角のチェックだけは怠らなかった。


※ ※ ※


暁斗の持つ聖剣グラムは、雨を降らすゾウと何か約束をした。
水の問題の解決を引き受けたのは、いわばその約束を果たすためのついでに等しい。

「どんな約束なんだ?」
「……うーん。教えてくれないんだ。行って必要があれば教えるってだけ」

アレクの質問は尤もだが、暁斗もその答えを知っているわけではない。
秘密主義の聖剣は、何でもかんでも教えてくれるわけじゃないのだ。

「ただ、その話になるとすっごい不機嫌そうになる。そのゾウに対して怒ってるみたい」
「怒ってる?」

何だそれは。
怒りながらも、それでも約束を果たそうというのは、一体どういう関係なんだろうか。

「根本的な疑問なのですが、その聖剣の約束とやらと、今回の水の問題。全く別の事柄とかじゃないですよね?」

ユーリの疑問に暁斗は首を傾げつつ、その左手が聖剣の柄に触れる。

「……同じだって。その約束を果たせば、水の問題も解決するって言ってる」
「そうであるなら、構いませんが」

どうも聖剣グラムには謎が多い。

勇者が持って魔王を倒すための剣、という認識でしかなかったのに、普通に暁斗と会話が成立しているらしいところとか、過去の話とか、あちこちに知り合いがいたりだとか、一体どうなっているんだと思う。

「つまり、聖剣はなぜ雨が降らないのか、その原因を知っているということか」
「……あ、そっか、そうだね」

アレクの言葉に暁斗はやっと気付いたとばかりに頷いた。

今は野営中だ。
明日にはそのゾウの元に到着するらしい。

到着してどうなるのか、そこからどうすればいいのか。話し合いを始めたのだが、情報がほとんどない。
具体的に決めようにも、何か知っているらしい聖剣が何も教えてくれないでは、何も決めようがないのだ。
つまり、現状決められる事はこれだけだ。

「現場に到着したら、聖剣任せか。後は、状況に応じて臨機応変に対応だな。アキト、何かあればすぐ言えよ」
「うん」

ほぼ何も決まってないに等しいが、これはもうどうしようもない。
後は、唯一聖剣とコミュニケーションをとれる暁斗頼みだ。それが微妙に不安を感じる一行なのだが、これもどうすることもできない。

話し合いはこれで終わりとして、明日に備えてそれぞれ休むのだった。


※ ※ ※


そして、次の日。
一行の目の前に現れたのは、虹色に光る直径三メートルほどの半円形のドーム。そして、その中に横たわっているゾウのような姿だった。


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