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第十二章 帝都ルベニア
リィカの成長と失敗
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砂漠の旅は、想像以上に過酷だった。
こまめに水分をとるように、注意をされている。
トラヴィスたちルバドール帝国側の人間は、全員が水属性持ちだ。
そして、勇者一行側で水魔法を使えないのは、アレクとユーリのみ。
魔法で十分水を補充できるので、節約する必要もなかった。
砂漠の旅にあたり、一番大切なのは水。
次いで、毒持ちの魔物が多いため、治療のできる神官の存在だ。
ルバドール帝国側に神官がいない理由は、勇者一行の中に二人光属性持ちがいるという情報があったから、それを当てにして、あえてメンバーに加えなかったらしい。
夜になると、一気に気温が下がる。
涼しい、という程度の気温なのだが、昼との気温差がありすぎて、はっきり言って寒い。
聖地で用意してもらった秋物の服が役に立った。
移動初日、リィカと泰基が少し体調を崩した。
リィカはラクダに酔った。泰基は砂漠の強い日差しで気分が悪くなった。しかし、二人とも次の日には治って、それ以降体調を崩すことはなかった。
※ ※ ※
リィカが右手を前に出すと、小さな魔法の球が発射され、魔物に命中する。
Dランクの魔物、蠍だ。
その小さな球が五発発射され、五体いた蠍を倒す。
それを見て、リィカは満足そうに頷いた。
「だんだん慣れてきたかも」
ジャダーカとの戦いの時はまだ練習段階だった、凝縮魔法の複数発射。
あの時は火・水・風・土の各属性一つずつ出すのが精一杯だったが、その出せる数が増えて、操れるようになってきた。
今は各属性二個ずつ、計八個を出せるようになった。
無限に出せる、なんてことはないだろうが、出せるところまで出して操れるようになりたい。
そう考えると、このラクダでの移動は都合が良かった。
馬車と違って中にいるわけではないから、当然魔物との戦闘に参加することになる。
魔法の練習相手には、事欠かなかった。
もう一つ慣れてきたのは、魔力を読んで相手の位置を探ることだ。
気配を読むアレクたちに比べると範囲は狭いが、できるようになってきたおかげで、相手の姿が見えなくても、魔法を放つことができるようになった。
今のところ、旅の仲間たちは別として、魔力を読んで区別がつくのは人間か魔物かというだけだが、それだけ区別がつけば、とりあえず問題なかった。
「よぉし! もっといないかなぁ」
ルンルン気分で、リィカは辺りの魔力を探り、敵(という名の魔法をぶつける相手)を探し始めた。
が、その直後、砂から何かが飛び出した。
「リィカ!」
「え?」
アレクの厳しい声と同時に、その手が何かにぶつかり、弾ける。
「リィカ、魔力で魔物を探せるようになったからって油断するな。ランクの低い魔物は、それほど魔力をもっていないんだ。油断していると、足下をすくわれるぞ」
リィカは目をパチパチさせる。
見えたのは、砂と同じ色をした、小さな羽の付いた蛇。
Eランクの魔物、ヤクルスだ。
アルカトル王国の王都アルールの近くの森にも生息している魔物だが、あの森では木の枝と色を同化させて、枝から矢のように飛びかかってきた。
だというのに、この砂漠にいるヤクルスは砂漠の砂に色を同化させて、砂の中から飛びかかってくる。
ついでに、森にいたヤクルスはただ飛びかかって体当たりしてくるだけだったが、砂漠のヤクルスは毒を持っていて、噛み付いて毒を流し込んでくる。
攻撃力も防御力も低いのは同じだが、毒がある分、砂漠のヤクルスの方が厄介だ。
「……ごめんなさい」
理解すると、シュンとなってリィカは謝った。
アレクが言ったように、一番ランクの低いEランクの魔物の持つ魔力は少ない。だから、その魔力をリィカは読み損なったのだ。
「いいよ、今後は気をつけよう。な?」
後ろからアレクの手がリィカの頭をポンポン撫でる。
その優しい言葉と手に、リィカは黙って頷いたのだった。
こまめに水分をとるように、注意をされている。
トラヴィスたちルバドール帝国側の人間は、全員が水属性持ちだ。
そして、勇者一行側で水魔法を使えないのは、アレクとユーリのみ。
魔法で十分水を補充できるので、節約する必要もなかった。
砂漠の旅にあたり、一番大切なのは水。
次いで、毒持ちの魔物が多いため、治療のできる神官の存在だ。
ルバドール帝国側に神官がいない理由は、勇者一行の中に二人光属性持ちがいるという情報があったから、それを当てにして、あえてメンバーに加えなかったらしい。
夜になると、一気に気温が下がる。
涼しい、という程度の気温なのだが、昼との気温差がありすぎて、はっきり言って寒い。
聖地で用意してもらった秋物の服が役に立った。
移動初日、リィカと泰基が少し体調を崩した。
リィカはラクダに酔った。泰基は砂漠の強い日差しで気分が悪くなった。しかし、二人とも次の日には治って、それ以降体調を崩すことはなかった。
※ ※ ※
リィカが右手を前に出すと、小さな魔法の球が発射され、魔物に命中する。
Dランクの魔物、蠍だ。
その小さな球が五発発射され、五体いた蠍を倒す。
それを見て、リィカは満足そうに頷いた。
「だんだん慣れてきたかも」
ジャダーカとの戦いの時はまだ練習段階だった、凝縮魔法の複数発射。
あの時は火・水・風・土の各属性一つずつ出すのが精一杯だったが、その出せる数が増えて、操れるようになってきた。
今は各属性二個ずつ、計八個を出せるようになった。
無限に出せる、なんてことはないだろうが、出せるところまで出して操れるようになりたい。
そう考えると、このラクダでの移動は都合が良かった。
馬車と違って中にいるわけではないから、当然魔物との戦闘に参加することになる。
魔法の練習相手には、事欠かなかった。
もう一つ慣れてきたのは、魔力を読んで相手の位置を探ることだ。
気配を読むアレクたちに比べると範囲は狭いが、できるようになってきたおかげで、相手の姿が見えなくても、魔法を放つことができるようになった。
今のところ、旅の仲間たちは別として、魔力を読んで区別がつくのは人間か魔物かというだけだが、それだけ区別がつけば、とりあえず問題なかった。
「よぉし! もっといないかなぁ」
ルンルン気分で、リィカは辺りの魔力を探り、敵(という名の魔法をぶつける相手)を探し始めた。
が、その直後、砂から何かが飛び出した。
「リィカ!」
「え?」
アレクの厳しい声と同時に、その手が何かにぶつかり、弾ける。
「リィカ、魔力で魔物を探せるようになったからって油断するな。ランクの低い魔物は、それほど魔力をもっていないんだ。油断していると、足下をすくわれるぞ」
リィカは目をパチパチさせる。
見えたのは、砂と同じ色をした、小さな羽の付いた蛇。
Eランクの魔物、ヤクルスだ。
アルカトル王国の王都アルールの近くの森にも生息している魔物だが、あの森では木の枝と色を同化させて、枝から矢のように飛びかかってきた。
だというのに、この砂漠にいるヤクルスは砂漠の砂に色を同化させて、砂の中から飛びかかってくる。
ついでに、森にいたヤクルスはただ飛びかかって体当たりしてくるだけだったが、砂漠のヤクルスは毒を持っていて、噛み付いて毒を流し込んでくる。
攻撃力も防御力も低いのは同じだが、毒がある分、砂漠のヤクルスの方が厄介だ。
「……ごめんなさい」
理解すると、シュンとなってリィカは謝った。
アレクが言ったように、一番ランクの低いEランクの魔物の持つ魔力は少ない。だから、その魔力をリィカは読み損なったのだ。
「いいよ、今後は気をつけよう。な?」
後ろからアレクの手がリィカの頭をポンポン撫でる。
その優しい言葉と手に、リィカは黙って頷いたのだった。
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