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第十一章 四天王ジャダーカ

ヒドラとの戦い

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「「《火の付与フレイム・エンチャント》!」」

ヒドラを前に、アレクと暁斗は同時にエンチャントを唱える。
その様子を見て、ルベルトスは不思議そうにしていた。

「あの、一体何を……」
「ヒドラと同じく、再生する首を持つ魔物と戦ったことがあったんですよ。その魔物は、切ったあとに火で焼くと、首が再生しなかったんです」

ルベルトスの疑問に答えたのは、泰基だった。
相手が皇子だからか、泰基の言葉も心持ち丁寧だ。

「まさか、そんなことが……!」

驚くルベルトスに、泰基は苦笑する。

「ヒドラが同じかどうか分かるのは、これからですけねど」

言って、ヒドラを注視する。
ユグドラシルの島で戦ったキリムと同じく、火しか効果がないなら、自分のできることは、相手を牽制するだけだ。

味方の動きと敵の動き。
それらをしっかり見定める必要があった。


※ ※ ※


アレクは、暁斗と同時にヒドラに斬りかかる。
すると、ヒドラが、何かに怯んだように、僅かに後退する様子を見せた。

(――行ける!)

後退しようとするのを許さず、さらに踏み込む。

ザンッ、と剣を振るう。
斬ったところが、燃え上がる。

「ギィヤアアアアァァァァァァァァァ!!」

ヒドラが叫んだ。
先ほど後退しかけていたのが、長く首を伸ばし、威嚇しているようだ。
その声は怒りに彩られていた。

「再生、しないね」
「ああ」

様子を見ていた暁斗の言葉にアレクは一言返事をして、またヒドラに斬りかかる。
その後を暁斗も続いた。


アレクが一本の首に狙いを定めて、斬りかかる。
その横から、違う首がアレクに大きく口を開けて向かってきた。

「《輪光リング・ライト》!」

唱えられた魔法が横から来た首に命中し、そのできた隙に、アレクは狙い違わず切り落とす。

「ユーリ、助かった!」
「フォローは任せて!」

その答えを聞いて、アレクはまた別の首に狙いを定める。
そう、任せて大丈夫だ。
他は、後衛がたたき落としてくれるから。


※ ※ ※


八本の首を落とすのに、そんなに時間は掛からなかった。
キリムとは違って、自ら焼けた首を噛みちぎって、焼けた面をなくして再生させる、という手を使ってこなかったのもある。

残ったのは、本体と、他の首より一回り大きい首のみ。

「止めを!」
「感謝する!」

アレクの叫びに、ルベルトスも叫んで返す。
ルベルトスの右手に、光の剣が現れた。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

気合いを入れて叫ぶと、その光の剣が長く伸びる。

ヒドラの巨体をその一太刀で断ち切れるほどにまで長くなると、ルベルトスはヒドラに向かって駆け出した。
剣の重さを感じている様子は、まるでない。

「ギィヤアアアアァァァァァァァァァ!!」

ヒドラが叫び、残った首が炎を吐く。
ルドルトスは、それをジャンプして躱した。

「くらえっ!!」

そのまま剣を振り下ろす。

「ギィヤッ!!」

ヒドラがその口の牙で、剣を受け止めた。
だが、一瞬だった。

「ギィッ!?」

光の剣は、その牙すら切り裂く。

――ザンッ!

まさに音を立てて、ヒドラを切り裂いたのだった。

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