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第一章 魔王の誕生と、旅立ちまでのそれぞれ
3.リィカ③ー入学式の前に
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「どこ行けばいいの……?」
男性を黙って見送ってる場合じゃなかった、と慌てて校舎に入ったものの、行くべき教室が分からない。
門の所にいた案内の人には、中に入ればすぐ分かる、と言われたけれど、案内の看板があるわけじゃないし、全く分からない。
もう一度戻って聞こうかな、どうしようかな、と思った所で、またも誰かに声を掛けられた。
「ん……? 君は誰だ? 平民か」
外で声をかけてくれた男性もイケメンだったけど、こっちもイケメンだ。
こっちは非常に分かりやすく、貴族だ。
明るい金髪に、群青色の目。
どこか漫画にも出てきそうな王子様っぽいイメージがある。
怖い感じはしないけれど、相手が貴族だというだけで、身がすくむ思いがする。
「ここは貴族用の校舎だ。平民が一人で入るのはやめた方がいい」
「――あっ……!」
言われて、思い出した。
校舎は、貴族用と平民用の二つがあるのだ。
貴族用の校舎は、生徒の人数が多いということもあるのだろうが、大きいし、そして豪奢だ。当然、目に付きやすい。
わたしは、何も考えずに、目に付いた校舎に入ってしまったのだ。
そこまで気付けば、平民用の校舎に向かうだけなのだが、目の前にいる王子様っぽい男性をどうするべきか。
何を言えばいいのか。
小さな村育ちのわたしより、日本で育った凪沙の方が知識があるかも、とその記憶を探ってみたけど、この場面に役立ちそうな記憶は見つからない。
「じ、実は、迷ってしまいまして……、その……すいません!!」
「おい?」
大きく頭を下げて、叫ぶように謝罪の言葉を口にして、そのまま走り出した。
驚いたような声が聞こえたけれど、構わず走った。
※ ※ ※
一度外に出れば、平民用の校舎はすぐ分かった。
貴族用のそれに比べれば、小さくて質素だけど、だからといってボロいわけではない。
清潔に保たれているのがよく分かる。
校舎に入れば、教室もすぐ分かった。
中に入って、適当に席に座る。
思い出すのは、先ほどのこと。
――どうしよう。逃げ出して来ちゃった。
二度も連続で貴族に話しかけられて、気持ちが一杯一杯だった。言い訳すればそうなるが、相手からしたら、気分が良いものではなかっただろう。
教室内を見れば、いるのは十名くらいだ。
この中から、わたしを見つけ出すなんて、簡単だ。
――無礼者! とか言われて、処刑なんかされちゃったら、どうしよう。
始まってもいない学園生活だが、すでにお先真っ暗だった。
男性を黙って見送ってる場合じゃなかった、と慌てて校舎に入ったものの、行くべき教室が分からない。
門の所にいた案内の人には、中に入ればすぐ分かる、と言われたけれど、案内の看板があるわけじゃないし、全く分からない。
もう一度戻って聞こうかな、どうしようかな、と思った所で、またも誰かに声を掛けられた。
「ん……? 君は誰だ? 平民か」
外で声をかけてくれた男性もイケメンだったけど、こっちもイケメンだ。
こっちは非常に分かりやすく、貴族だ。
明るい金髪に、群青色の目。
どこか漫画にも出てきそうな王子様っぽいイメージがある。
怖い感じはしないけれど、相手が貴族だというだけで、身がすくむ思いがする。
「ここは貴族用の校舎だ。平民が一人で入るのはやめた方がいい」
「――あっ……!」
言われて、思い出した。
校舎は、貴族用と平民用の二つがあるのだ。
貴族用の校舎は、生徒の人数が多いということもあるのだろうが、大きいし、そして豪奢だ。当然、目に付きやすい。
わたしは、何も考えずに、目に付いた校舎に入ってしまったのだ。
そこまで気付けば、平民用の校舎に向かうだけなのだが、目の前にいる王子様っぽい男性をどうするべきか。
何を言えばいいのか。
小さな村育ちのわたしより、日本で育った凪沙の方が知識があるかも、とその記憶を探ってみたけど、この場面に役立ちそうな記憶は見つからない。
「じ、実は、迷ってしまいまして……、その……すいません!!」
「おい?」
大きく頭を下げて、叫ぶように謝罪の言葉を口にして、そのまま走り出した。
驚いたような声が聞こえたけれど、構わず走った。
※ ※ ※
一度外に出れば、平民用の校舎はすぐ分かった。
貴族用のそれに比べれば、小さくて質素だけど、だからといってボロいわけではない。
清潔に保たれているのがよく分かる。
校舎に入れば、教室もすぐ分かった。
中に入って、適当に席に座る。
思い出すのは、先ほどのこと。
――どうしよう。逃げ出して来ちゃった。
二度も連続で貴族に話しかけられて、気持ちが一杯一杯だった。言い訳すればそうなるが、相手からしたら、気分が良いものではなかっただろう。
教室内を見れば、いるのは十名くらいだ。
この中から、わたしを見つけ出すなんて、簡単だ。
――無礼者! とか言われて、処刑なんかされちゃったら、どうしよう。
始まってもいない学園生活だが、すでにお先真っ暗だった。
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