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第九章 聖地イエルザム
老人の秘密
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老人が消えてしまった床を呆然と眺めたアレクは、やがてリィカに視線を向けた。
「――まだ生きているってどういうことだ?」
同じ疑問を泰基も暁斗も持ったのだろう。
視線が集まるのを感じながら、リィカは説明を始めた。
老人を見てまず感じたのは、魔物の気配だ。だが、やはり何かチグハグな感じがする。
アレクと戦っている老人の、魔力の流れを探る。
そして、まず分かったのが、老人の魔力の一部が、老人から出て行って、別の場所に流れている、ということだ。
(――どういうこと?)
魔力が勝手に体の外に出るなどあり得ない。しかも、出て行った魔力は、方向性を持っている。
さらに探る。
すると、さらに不思議なことが分かった。魔力が、心臓部から湧き出ている。
普通、魔力は体のどこという事もなく、全身を漂っているものだ。
魔族が使っている全身の強化は、漂っているだけの魔力を全身に巡らせる事でできているのだろう。
リィカも一度やってみたことがあるのだが、結論としては人間には無理だ、という事が分かっただけだ。
技術的にできなくはない。
だが、魔力が圧倒的に足りない。全身に均等に魔力を行き渡らせようと思えば、魔力がひどく薄くなる。これでは、強化の意味はほとんどない。
それに、強化だけで魔力を使ってしまうので、普通に魔法を使うこともできない。
魔族の豊富な魔力量があって初めて成立する、全身強化の技術なのだ。
この老人の場合、漂っているはずの魔力が、明らかに心臓部から出ている。
この感じは明らかに魔物だ。魔物の持つ魔力は、体の内にある魔石から出ている。
(――魔石?)
つまり、その心臓部に魔石があると言うことか。
(でも、元々は人間、なんだよね?)
元は人間の体に魔石があるという事は、やはり不死なのか。不死となって蘇ったということか。
だが、やはり違和感がある。
さらに、その心臓部だけに集中してみる。
確かに、魔物っぽい魔石がある感じがする。
――ドクン
何かがその魔石を包み込むように波打った。
(……えっ!?)
さらに、集中する。
――ドクンドクン
まるで、その音が聞こえるかのようだ。
(心臓が、動いてる……?)
その可能性を思い付いたが、それの意味するところをすぐには気付かなかった。
けれど、アレクが目に入った。がら空きになった体に、剣を打ち込もうとしている。
それを見て、リィカは目を見開いた。そう、心臓が動いていると言うことは。
「――アレク! その人、まだ生きてる!」
アレクの動きが止まる。
そのアレクに、老人が攻撃を仕掛けたが、リィカは冷静だった。
「《火炎光線》!」
容赦なく心臓に魔法を放ったが、躱された。
そのまま逃げるように老人はいなくなる。
だが、間違いなく心臓が急所なのだと分かっただけでも、まずまずの成果だろう。不死なら、心臓も何も関係ないのだから。
※ ※ ※
リィカの説明を聞き終えた一同の中で、最初に言ったのは暁斗だった。
「でも、百年前の話だよね? なんでまだ生きてるの?」
すでに百年前には老人だった人だ。普通に考えて生きているはずがない。
だが、聞かれた所で、リィカにも分からない。あくまで、あの老人を見て分かったことを説明しただけだ。
暁斗の質問を皮切りに、アレクと泰基も質問してきた。
「なぜ、人間の中に魔石があるんだ?」
「魔力が外に出て、どこかに向かってる? どういうことだ? どこに向かってるんだ?」
「――わたしもそこまで分かんないよ」
聞かれても分からない事を次々聞かれて、リィカがついには不機嫌になれば、ようやく質問がやんだ。
「――まだ生きているってどういうことだ?」
同じ疑問を泰基も暁斗も持ったのだろう。
視線が集まるのを感じながら、リィカは説明を始めた。
老人を見てまず感じたのは、魔物の気配だ。だが、やはり何かチグハグな感じがする。
アレクと戦っている老人の、魔力の流れを探る。
そして、まず分かったのが、老人の魔力の一部が、老人から出て行って、別の場所に流れている、ということだ。
(――どういうこと?)
魔力が勝手に体の外に出るなどあり得ない。しかも、出て行った魔力は、方向性を持っている。
さらに探る。
すると、さらに不思議なことが分かった。魔力が、心臓部から湧き出ている。
普通、魔力は体のどこという事もなく、全身を漂っているものだ。
魔族が使っている全身の強化は、漂っているだけの魔力を全身に巡らせる事でできているのだろう。
リィカも一度やってみたことがあるのだが、結論としては人間には無理だ、という事が分かっただけだ。
技術的にできなくはない。
だが、魔力が圧倒的に足りない。全身に均等に魔力を行き渡らせようと思えば、魔力がひどく薄くなる。これでは、強化の意味はほとんどない。
それに、強化だけで魔力を使ってしまうので、普通に魔法を使うこともできない。
魔族の豊富な魔力量があって初めて成立する、全身強化の技術なのだ。
この老人の場合、漂っているはずの魔力が、明らかに心臓部から出ている。
この感じは明らかに魔物だ。魔物の持つ魔力は、体の内にある魔石から出ている。
(――魔石?)
つまり、その心臓部に魔石があると言うことか。
(でも、元々は人間、なんだよね?)
元は人間の体に魔石があるという事は、やはり不死なのか。不死となって蘇ったということか。
だが、やはり違和感がある。
さらに、その心臓部だけに集中してみる。
確かに、魔物っぽい魔石がある感じがする。
――ドクン
何かがその魔石を包み込むように波打った。
(……えっ!?)
さらに、集中する。
――ドクンドクン
まるで、その音が聞こえるかのようだ。
(心臓が、動いてる……?)
その可能性を思い付いたが、それの意味するところをすぐには気付かなかった。
けれど、アレクが目に入った。がら空きになった体に、剣を打ち込もうとしている。
それを見て、リィカは目を見開いた。そう、心臓が動いていると言うことは。
「――アレク! その人、まだ生きてる!」
アレクの動きが止まる。
そのアレクに、老人が攻撃を仕掛けたが、リィカは冷静だった。
「《火炎光線》!」
容赦なく心臓に魔法を放ったが、躱された。
そのまま逃げるように老人はいなくなる。
だが、間違いなく心臓が急所なのだと分かっただけでも、まずまずの成果だろう。不死なら、心臓も何も関係ないのだから。
※ ※ ※
リィカの説明を聞き終えた一同の中で、最初に言ったのは暁斗だった。
「でも、百年前の話だよね? なんでまだ生きてるの?」
すでに百年前には老人だった人だ。普通に考えて生きているはずがない。
だが、聞かれた所で、リィカにも分からない。あくまで、あの老人を見て分かったことを説明しただけだ。
暁斗の質問を皮切りに、アレクと泰基も質問してきた。
「なぜ、人間の中に魔石があるんだ?」
「魔力が外に出て、どこかに向かってる? どういうことだ? どこに向かってるんだ?」
「――わたしもそこまで分かんないよ」
聞かれても分からない事を次々聞かれて、リィカがついには不機嫌になれば、ようやく質問がやんだ。
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