上 下
194 / 612
第六章 王都テルフレイラ

ユーリVSアルテミ①

しおりを挟む
「《流星群メテオ・シャワー》!」
アルテミが土の上級魔法を唱えた。

「《結界バリア》!」
ユーリの《結界バリア》がそれを防ぐ。揺るぎもしない。

「――くっ!」
アルテミが悔しそうな表情を見せるが、ユーリは表情を崩さない。

「言っておきますが、僕はリィカの《水蒸気爆発スチームバースト》を防ぎきったこともありますよ。この程度で破れると思われる方が不愉快です。確かにリィカの魔法は強力ですが、僕も後れを取っているつもりはありません」

それどころか、相手を挑発するかのように、言葉を投げかける。
アルテミの顔が歪むのが分かり、ユーリは面白そうに口の端を上げた。

「魔法を光一種類しか使えないのを、ライマーさん、と仰るんですか? あの方に馬鹿にされた事がありましたね。けれどね、数が多ければいい、というものでもないですよ?」
ユーリは右手を上に掲げる。

「《太陽柱サンピラー》!」

光の中級魔法。上から太陽の光が鋭い柱のように降り注ぎ、アルテミを焼き尽くそうとする。

「きゃああぁぁぁぁぁぁぁ!! ――こ、の……《暴風ハリケーン》!」

悲鳴を上げつつも唱えた魔法が、ユーリの《太陽柱サンピラー》をかき消す。そのまま、ユーリにも魔法が届こうとするが、その前に張られたままの《結界バリア》が、それを防いだ。

「お前……!」
「なかなかの威力でしょう? 相手が一人の場合、上級魔法よりも中級魔法の方が良いかもしれませんよ?」

何せ、対一人用の上級魔法というのは存在しない。上級魔法は、すべて広範囲への魔法だ。
一人と対戦するには、無駄が多いのだ。

あちこちダメージを負ったせいか、形相が凄まじいことになっているアルテミに睨まれながらも、ユーリは平然とアドバイスめいたことまで言った。
それがさらに、アルテミを激怒させている事にも、もちろん気付いている。


これからも、こんな戦いをしなければならないなら、ゆっくりしていられない。
今は何とか互角でも、このままいけば、リィカはどんどん強くなる。そして、それに自分は付いていけない。

それは予感だった。
いずれ、自分はこの旅に必要なくなる。リィカの足下にも及ばなくなる。

でも、認めるつもりはなかった。それはプライドが許さない。
リィカが現れるまで、自分と魔法で競う相手はいなかった。そして、明らかに才能はリィカが上だった。

それを認めた上で、ユーリは思う。
絶対に付いていく。追い抜かしてみせる、と。

こんな理不尽な戦いであっても、無駄にするわけにはいかない。
自分の成長のために、相手にも実力以上の実力を出してもらう。


リィカと同じ分野では競えない。

アルテミにはああ言ったが、リィカの場合、多彩な魔法を扱えるのも武器の一つだ。
自分は光魔法だけ。

だからこそ、リィカとは違う、自分だけの武器もあるはずだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 衝撃で前世の記憶がよみがえったよ! 推しのしあわせを応援するため、推しとBLゲームの主人公をくっつけようと頑張るたび、推しが物凄くふきげんになるのです……! ゲームには全く登場しなかったもふもふ獣人と、騎士見習いの少年の、両片想いな、いちゃらぶもふもふなお話です。

皇女はグリフィン騎士団員になり、憧れの騎士に愛される

ゆきりん(安室 雪)
ファンタジー
「皇女はグリフィンになりたくて騎士になります!?」から題名を変更しました。 皇女として産まれたアリアは、7歳の時にお忍びで行った城下のお祭りで『お楽しみタマゴ』と言う、殆どはヒヨコだがたまにグリフィンや竜が孵るタマゴを買い、兄サイノスとタマゴが孵るのを楽しみにしていた。 そんなある日、とうとうアリアのタマゴにヒビが入り!? 皇女アリアが何故かグリフィン騎士になってしまう!? 37話から16歳のアリアになります。 王族のイザコザや騎士としての成長・恋愛を書いていきます。

転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった後、異世界に転生した高校生、鬼島迅。 そんな彼が生まれ落ちた家は、貴族。 しかし、その家の住人たちは国内でも随一、乱暴者というイメージが染みついている家。 世間のその様なイメージは……あながち間違ってはいない。 そんな一家でも、迅……イシュドはある意味で狂った存在。 そしてイシュドは先々代当主、イシュドにとってひい爺ちゃんにあたる人物に目を付けられ、立派な暴君戦士への道を歩み始める。 「イシュド、学園に通ってくれねぇか」 「へ?」 そんなある日、父親であるアルバから予想外の頼み事をされた。 ※主人公は一先ず五十後半の話で暴れます。

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二 その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。 侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。 裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。 そこで先天性スキル、糸を手に入れた。 だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。 「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」 少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。

俺のタマゴ

さつきのいろどり
ミステリー
朝起きると正体不明の大きなタマゴがあった!主人公、二岾改(ふたやま かい)は、そのタマゴを温めてみる事にしたが、そのタマゴの正体は?!平凡だった改の日常に、タマゴの中身が波乱を呼ぶ!! ※確認してから公開していますが、誤字脱字等、あるかも知れません。発見してもフルスルーでお願いします(汗)

トカゲ(本当は神竜)を召喚した聖獣使い、竜の背中で開拓ライフ~無能と言われ追放されたので、空の上に建国します~

水都 蓮(みなとれん)
ファンタジー
 本作品の書籍版の四巻と水月とーこ先生によるコミックスの一巻が6/19(水)に発売となります!!  それにともない、現在公開中のエピソードも非公開となります。  貧乏貴族家の長男レヴィンは《聖獣使い》である。  しかし、儀式でトカゲの卵を召喚したことから、レヴィンは国王の怒りを買い、執拗な暴力の末に国外に追放されてしまうのであった。  おまけに幼馴染みのアリアと公爵家長子アーガスの婚姻が発表されたことで、レヴィンは全てを失ってしまうのであった。  国を追われ森を彷徨うレヴィンであったが、そこで自分が授かったトカゲがただのトカゲでなく、伝説の神竜族の姫であることを知る。  エルフィと名付けられた神竜の子は、あっという間に成長し、レヴィンを巨大な竜の眠る遺跡へと導いた。  その竜は背中に都市を乗せた、空飛ぶ竜大陸とも言うべき存在であった。  エルフィは、レヴィンに都市を復興させて一緒に住もうと提案する。  幼馴染みも目的も故郷も失ったレヴィンはそれを了承し、竜の背中に移住することを決意した。  そんな未知の大陸での開拓を手伝うのは、レヴィンが契約した《聖獣》、そして、ブラック国家やギルドに使い潰されたり、追放されたりしたチート持ちであった。  レヴィンは彼らに衣食住を与えたり、スキルのデメリットを解決するための聖獣をパートナーに付けたりしながら、竜大陸への移住プランを提案していく。  やがて、レヴィンが空中に築いた国家は手が付けられないほどに繁栄し、周辺国家の注目を集めていく。  一方、仲間達は、レヴィンに人生を変えられたことから、何故か彼をママと崇められるようになるのであった。

手切れ金代わりに渡されたトカゲの卵、実はドラゴンだった件 追放された雑用係は竜騎士となる

草乃葉オウル
ファンタジー
上級ギルド『黒の雷霆』の雑用係ユート・ドライグ。 彼はある日、貴族から依頼された希少な魔獣の卵を探すパーティの荷物持ちをしていた。 そんな中、パーティは目当ての卵を見つけるのだが、ユートにはそれが依頼された卵ではなく、どこにでもいる最弱魔獣イワトカゲの卵に思えてならなかった。 卵をよく調べることを提案するユートだったが、彼を見下していたギルドマスターは提案を却下し、詳しく調査することなく卵を提出してしまう。 その結果、貴族は激怒。焦ったギルドマスターによってすべての責任を押し付けられたユートは、突き返された卵と共にギルドから追放されてしまう。 しかし、改めて卵を観察してみると、その特徴がイワトカゲの卵ともわずかに違うことがわかった。 新種かもしれないと思い卵を温めるユート。そして、生まれてきたのは……最強の魔獣ドラゴンだった! ロックと名付けられたドラゴンはすくすくと成長し、ユートにとって最強で最高の相棒になっていく。 その後、新たなギルド、新たな仲間にも恵まれ、やがて彼は『竜騎士』としてその名を世界に轟かせることになる。 一方、ユートを追放した『黒の雷霆』はすべての面倒事を請け負っていた貴重な人材を失い、転げ落ちるようにその名声を失っていく……。 =====================  アルファポリス様から書籍化しています!  ★★★★第1〜3巻好評発売中!★★★★ =====================

処理中です...