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第六章 王都テルフレイラ
後悔
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食欲はなかったが何とか食べた。
エレインに夜休むのに、このまま医務室でもいいと言われたが、リィカは与えられた部屋で休むことにした。
そうしたらウォルターに鍵を渡された。
「部屋に鍵を付けた。それはその鍵だ。他に鍵はないから、誰かが開けて入ることはない。……信じて欲しい」
「……はい、ありがとうございます」
頷く以外にリィカにできることはなかった。
※ ※ ※
アレクとリィカは、二人で廊下を歩いていた。部屋に行くリィカをアレクが送っていた。
二人の間に会話はなかった。
無言のまま部屋に着く。
「ありがとう、アレク」
そこで初めてリィカが口を開いた。
「ああ。きちんと鍵かけろよ。鍵かかったことを確認したら、俺は行くから」
「大丈夫だよ。過保護だなぁ」
中にリィカが入ると、カチャンと音がする。アレクがドアノブを動かしてみたが、確かに鍵はかかっていた。
「お休み、リィカ」
「……お休み」
中から小さく返事が聞こえた。
アレクは一つ息をついて視線を横に向ける。
バルがそこにいた。後ろから黙って付いてきていたのは気付いていたが。
顎でしゃくられて、部屋の前から離れて一緒に歩く。
「……どうしたんだよ?」
「エレインさんがリィカに知られず、話をしたいんだそうだ」
「……そうか」
意外、ではなかった。
リィカは強い。それはアレクも疑っていない。
確かに震えてはいた。怖がっていた。けれど、それだけだ。泣きもせず、相手を責めもせずにいられるものなのだろうか。
モルタナでのことを考える。
あの時も怖がっていた。ここにいるのは嫌だからと、無理を押して旅立とうと考えていた。一人は怖いからと、自分に付き添ってほしいと言っていた。
それなのに、今回は何もない。
それが逆に心配になる。
「それからアレク、お前のこともだ」
「……俺?」
続けられたバルの言葉は、何を言いたいのか予想もできなかった。
「……あんま思い詰めんなよ。お前は何でもできる超人じゃねぇんだ。全て予測して、何からも守るなんざ無理な話だ」
何を言っているのか、アレクはすぐに理解した。リィカを正気に戻した時に、自分が話していたことだろう。
「……俺のことはいいんだよ」
「よくねぇよ。はっきり言ってやろうか? 今のお前の顔、お前と冒険者ギルドで初めて会った時の顔とそっくりだ」
初めて冒険者ギルドで会った時。それは、アレクの兄が毒を盛られたすぐ後。
アレクの一番辛かった時期だ。
「……俺、リィカに大丈夫だと言ったんだぞ。それなのに、これだ」
「本当に絶対大丈夫とは、お前も思ってなかっただろ」
「だから! だから守りたかったんだよ!」
アレクが激昂した。バルも気持ちは分かる。それでも。
「もう起こったことは消せねぇよ。とりあえず、その顔強引にでも止めろ。これからのことを考えろ」
「何だよ、これからの事って」
言って、すぐに気づく。
「……リィカを旅から外すってことか?」
「それも考えなくもねぇが、代わりがいねぇ。リィカなしじゃきつい。それにリィカがいねぇと、アキトも心配だしな」
母さんみたいだと、リィカにしがみついていた暁斗を思い出す。
「……このパーティー、問題だらけだな」
「全くだな。実力だけは間違いなくあっけどな」
アレクの言葉に、バルはニコリともせずに同意した。
「だが、魔王討伐なんぞ、実力がなきゃ意味がねぇ。誰も旅から外せねぇよ。で、今一番問題なのはリィカだろ。起こったこと悔やんでんじゃねぇ。これからどうしていけばいいかを考えるぞ」
「……分かった」
今リィカは一人で何を思っているのだろうか。アレクはリィカの部屋の方を一瞬振り向いた。手を握りしめて、無理矢理に後悔を頭から閉め出した。
エレインに夜休むのに、このまま医務室でもいいと言われたが、リィカは与えられた部屋で休むことにした。
そうしたらウォルターに鍵を渡された。
「部屋に鍵を付けた。それはその鍵だ。他に鍵はないから、誰かが開けて入ることはない。……信じて欲しい」
「……はい、ありがとうございます」
頷く以外にリィカにできることはなかった。
※ ※ ※
アレクとリィカは、二人で廊下を歩いていた。部屋に行くリィカをアレクが送っていた。
二人の間に会話はなかった。
無言のまま部屋に着く。
「ありがとう、アレク」
そこで初めてリィカが口を開いた。
「ああ。きちんと鍵かけろよ。鍵かかったことを確認したら、俺は行くから」
「大丈夫だよ。過保護だなぁ」
中にリィカが入ると、カチャンと音がする。アレクがドアノブを動かしてみたが、確かに鍵はかかっていた。
「お休み、リィカ」
「……お休み」
中から小さく返事が聞こえた。
アレクは一つ息をついて視線を横に向ける。
バルがそこにいた。後ろから黙って付いてきていたのは気付いていたが。
顎でしゃくられて、部屋の前から離れて一緒に歩く。
「……どうしたんだよ?」
「エレインさんがリィカに知られず、話をしたいんだそうだ」
「……そうか」
意外、ではなかった。
リィカは強い。それはアレクも疑っていない。
確かに震えてはいた。怖がっていた。けれど、それだけだ。泣きもせず、相手を責めもせずにいられるものなのだろうか。
モルタナでのことを考える。
あの時も怖がっていた。ここにいるのは嫌だからと、無理を押して旅立とうと考えていた。一人は怖いからと、自分に付き添ってほしいと言っていた。
それなのに、今回は何もない。
それが逆に心配になる。
「それからアレク、お前のこともだ」
「……俺?」
続けられたバルの言葉は、何を言いたいのか予想もできなかった。
「……あんま思い詰めんなよ。お前は何でもできる超人じゃねぇんだ。全て予測して、何からも守るなんざ無理な話だ」
何を言っているのか、アレクはすぐに理解した。リィカを正気に戻した時に、自分が話していたことだろう。
「……俺のことはいいんだよ」
「よくねぇよ。はっきり言ってやろうか? 今のお前の顔、お前と冒険者ギルドで初めて会った時の顔とそっくりだ」
初めて冒険者ギルドで会った時。それは、アレクの兄が毒を盛られたすぐ後。
アレクの一番辛かった時期だ。
「……俺、リィカに大丈夫だと言ったんだぞ。それなのに、これだ」
「本当に絶対大丈夫とは、お前も思ってなかっただろ」
「だから! だから守りたかったんだよ!」
アレクが激昂した。バルも気持ちは分かる。それでも。
「もう起こったことは消せねぇよ。とりあえず、その顔強引にでも止めろ。これからのことを考えろ」
「何だよ、これからの事って」
言って、すぐに気づく。
「……リィカを旅から外すってことか?」
「それも考えなくもねぇが、代わりがいねぇ。リィカなしじゃきつい。それにリィカがいねぇと、アキトも心配だしな」
母さんみたいだと、リィカにしがみついていた暁斗を思い出す。
「……このパーティー、問題だらけだな」
「全くだな。実力だけは間違いなくあっけどな」
アレクの言葉に、バルはニコリともせずに同意した。
「だが、魔王討伐なんぞ、実力がなきゃ意味がねぇ。誰も旅から外せねぇよ。で、今一番問題なのはリィカだろ。起こったこと悔やんでんじゃねぇ。これからどうしていけばいいかを考えるぞ」
「……分かった」
今リィカは一人で何を思っているのだろうか。アレクはリィカの部屋の方を一瞬振り向いた。手を握りしめて、無理矢理に後悔を頭から閉め出した。
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