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第四章 モントルビアの王宮

VSカークス①

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リィカは、暁斗、泰基と共にカークスに向かい合っていた。


三つの首のうち、真ん中の首が炎を吐く。
「《水塊アクアブロック》!」
いけそうだと判断し、リィカは水の中級魔法を放つ。
予想通り、相殺した。

「中級魔法で相殺できるんだ!」
「……言っとくが、俺は無理だぞ」
明るく言う暁斗だが、泰基は釘を刺しておく。

剣も魔法も使える泰基だが、器用貧乏になっている事を自覚もしている。
リィカほどの魔法の威力はない。


「俺と暁斗で前に出るから、リィカはフォロー頼む。いいな?」
「「了解!」」
泰基の指示に二人が頷く。

左右に分かれて、暁斗と泰基がカークスに向かっていく。
「…………!」
右と左、それぞれの顔が向かってくる暁斗と泰基を目掛けて炎を吐く。

しかし、リィカは魔力の流れでそれを読んでいた。
「《水波紋アクアリング》!」
水の輪を作り出す、水の中級魔法。本来なら一つの輪を作る魔法だが、それを二つ作り、左右それぞれに打ち出し、相殺する。

が、その瞬間、中央の顔がニヤッと笑った。
魔法を打ち出したばかりのリィカに、炎が吐かれる。

「「リィカ!?」」
攻撃をやめてしまった暁斗と泰基に、冷静なリィカの声が届いた。

「――平気。防御間に合った。それより攻撃やめないで!」
リィカは、下手な《防御シールド》を唱えるより、攻撃魔法の方が早いと判断。水の中級魔法《氷柱アイシクル》を自分の前に出現させて、攻撃を防いでいた。

(三つの首が連携して攻撃を仕掛けるなんて、厄介)
攻撃を再開した暁斗と泰基を見る。
カークスが、近づく二人を追い払おうと無茶苦茶に腕を振り回した。
暁斗が、それを超えた。

剣を振るい……しかし、出現した炎の壁に阻まれた。
「あの、卵の時にも出た……!」
「炎を吐くだけじゃないのか!」
暁斗が驚き、泰基が毒づく。
三つの顔の連係攻撃に加え、防御までしてくるとなると、かなり面倒だ。

「《水波紋アクアリング》!」
リィカは、今度は一つの輪を、できるだけ鋭くして打ち出す。
炎の壁を切り裂けるように。そう思ったが、ぶつかった辺りが軽く爆発を起こしただけで、炎の壁を破ることはできなかった。

炎の壁が消える。
瞬間炎が吐かれて、躱し、あるいは防御する。
暁斗と泰基が詰めた距離は、結局また離された。

「――どうすればいいの?」
暁斗が泰基に聞く。

「壁と炎を吐くのは、おそらく同時にはできないんだろう。炎を吐くために壁が消えた瞬間に攻撃を入れる」
「難しくない?」
「炎が吐かれたとき、後ろじゃなく前に躱せ。懐に入ってしまえば、炎は届かない」
「分かった。やってみる」
暁斗が頷き、泰基がリィカを振り返ると、リィカも頷いた。

「自分のことくらい守れるから。わたしが攻撃されても、止まらないでね!」
「……努力する」
「………………」
泰基が何とも頼りない返事をして、暁斗は眉をハの字にして、情けない顔をした。

「ちゃんとやってね!」
心配してもらえるのは悪い気分じゃないが、今はそんな場合ではない。

「――攻撃、来るよ!」
リィカの警告に、二人の表情が一瞬で変わる。
炎を躱し、さらに前に出る。
同時に左右から剣を振り、……やはり現れた炎の壁に阻まれる。

「……ちぇっ……!」
「……駄目か」
二人がぼやくが、すぐに集中する。
カークスの左右の顔の口に、炎が点る。
壁が消えるのと炎が吐かれるのは、同時だった。

「《水波紋アクアリング》!」
再び、リィカの二つの《水波紋アクアリング》が炸裂。炎を消し去る。
暁斗と泰基はそのまま前進する。

「【旗魚剣尖破きぎょけんせんは】!」
泰基が、水の突き技の剣技をカークスに放つ。

しかし、その瞬間。
「グワァ!!」
残ったもう一つ、中央の頭が、同じく剣技を放とうとしていた暁斗に向けて、炎を吐いた。
リィカが一瞬遅れて気付くが、間に合わない。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
躱せなかった暁斗が、まともに炎の攻撃を受けてしまう。

「暁斗!?」
カークスに剣技を命中させた泰基だが、それを見て動きを止めてしまった。
それをカークスは見逃さなかった。

「――泰基! 避けて!」
リィカの声にハッとしたが、遅かった。
カークスの大きな手に、泰基の体はわしづかみにされた。
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