118 / 619
第四章 モントルビアの王宮
王太子との対決
しおりを挟む
「アレクシス殿、すまなかった」
ジェラードが頭を下げた。
「いや。――なぜここに?」
「この敷地内に連れてこられたと判明したので、伝えたかったんだ。その前に見つけているとは思わなかったが」
ここで、間にルイス公爵が割って入ってきた。
「話は後にしよう、ジェラード。アレクシス殿、我が家へご招待させて頂く」
アレクはリィカを見る。
「リィカ。ルイス公爵は信頼できる。受けてもいいか?」
「……なんで、わたしに確認するの?」
「色々大変な思いをしたのは、お前だ。だから、お前が嫌なら受けない」
リィカは、くしゃっと笑った。
「いいよ。アレクが信頼している人なら、安心できる」
「……ありがとう」
自分を信じてくれているからこその言葉は、何よりも嬉しい。
「公爵、ご招待、受けさせて頂きます」
ルイス公爵は頷くと、馬車へと案内する。
「急いで来たもので、馬車が小さいのです。この人数ですと、手狭になってしまいますが、ご了承下さい」
一行に向かって言うルイス公爵に、ベネット公爵が喚いた。
「貴様、待て! その小娘は置いていけ! どうせ普段から遊んでいるのだから、一晩くらい良かろう!」
「皆様方、どうかお気にならさず。私が話を致します。ジェラード、勇者様方を先に馬車へご案内しろ」
不安そうな様子を見せるリィカを見ながら、ルイス公爵は指示を出す。
一行が従おうとしたところで、馬車の音が聞こえて、ジェラードが舌打ちした。
「……王太子の馬車だな」
その言葉に、リィカが体を小さくして、怖がっているのが分かった。
「……知っているのか、リィカ?」
アレクがつぶやく。
今回の首謀者は、王太子だ。リィカの反応は、明らかにそれを知っている。
馬車が止まり、出てきたのはやはり王太子だった。
ジェラードを見て、不機嫌そうな顔をする。
「なぜ、貴様がここにいる。――ん? お前はアレクシスか? ……って、何だと!?」
アレクが抱えているリィカを見て、王太子がカッと叫んだ。
「なぜその小娘がいる!? 閉じ込めたのでなかったのか、ベネット!」
「も、申し訳ありません。その……」
ベネット公爵が慌てて謝るが、王太子はヒートアップしていく。
「今宵を楽しみにしていたのだぞ! 勇者を誑かした女が、私が犯したときにどんな顔をするか、期待していたのだ! それを、ここまで準備をしたというに、これはどういうことだ!」
「……………そ、その……」
「もうよい!」
王太子は、頭を下げるベネット公爵を切り捨てると、アレクに向かってくる。
「アレクシス、今夜一晩、その小娘は私がもらう。明日の貴様らの出発時には返してやるから、安心するが良い」
リィカがアレクにしがみつく。震えるリィカを抱きしめながら、王太子が伸ばしてきた手を躱す。
「お断りします。彼女は大切な仲間です。お渡しするわけにはいきません」
アレクがきっぱりと断る。だが、それは王太子に火に油を注ぐだけだった。
「この! 王子とは名ばかりの、子爵家の娘の子供ごときが私に逆らうか! 今すぐ土下座して、その小娘を差し出せ!!」
アレクが舌打ちし、それでも再度断ろうと口を開きかける。
「そんなの、お断りだ」
口を挟んできたのは、暁斗だった。
「王太子だか何だか知らないけど、さっさといなくなってよ。アレクも、リィカも、オレの大切な仲間だ。これ以上バカにするのは許さないよ」
暁斗は、本気で怒っていた。
最悪、実力行使も辞さない。そのつもりで、聖剣の柄に手をかける。
「…………………ヒッ!?」
王太子は、悲鳴を上げる。先ほどまでの傲慢さが嘘のようだ。
それでも最後のプライドとばかりに、何とか言い返す。
「……私は、この国の、王太子だぞ。いくら、勇者だからといって……私に手を出せば、どうなるか……」
「知らない。この国がどうなろうと、オレには関係ない。オレが引き受けたのは、魔王討伐だ。ここにいるのは、そのための最高のメンバーだ。――さっさと消えて」
「こ、この私に、そんな口を利いたこと、後悔、させてやる……!」
叫びながら、王太子は馬車に向かって走る。
そのまま走り去っていくのを見て、暁斗がヘナヘナとその場に座り込んだ。
「…………疲れたぁ。良かった」
「せっかく決まっていたのに、それじゃ台無しだぞ、アキト」
「そんな事言われたって、力抜けたんだもん。しょうがないじゃん」
ふくれっ面をする暁斗に、泰基が近寄って、頭をぐしゃぐしゃ撫でる。
「頑張ったじゃないか、暁斗。良くやったよ」
「――うん」
泰基に撫でられた頭を押さえて、暁斗は笑った。
ジェラードが頭を下げた。
「いや。――なぜここに?」
「この敷地内に連れてこられたと判明したので、伝えたかったんだ。その前に見つけているとは思わなかったが」
ここで、間にルイス公爵が割って入ってきた。
「話は後にしよう、ジェラード。アレクシス殿、我が家へご招待させて頂く」
アレクはリィカを見る。
「リィカ。ルイス公爵は信頼できる。受けてもいいか?」
「……なんで、わたしに確認するの?」
「色々大変な思いをしたのは、お前だ。だから、お前が嫌なら受けない」
リィカは、くしゃっと笑った。
「いいよ。アレクが信頼している人なら、安心できる」
「……ありがとう」
自分を信じてくれているからこその言葉は、何よりも嬉しい。
「公爵、ご招待、受けさせて頂きます」
ルイス公爵は頷くと、馬車へと案内する。
「急いで来たもので、馬車が小さいのです。この人数ですと、手狭になってしまいますが、ご了承下さい」
一行に向かって言うルイス公爵に、ベネット公爵が喚いた。
「貴様、待て! その小娘は置いていけ! どうせ普段から遊んでいるのだから、一晩くらい良かろう!」
「皆様方、どうかお気にならさず。私が話を致します。ジェラード、勇者様方を先に馬車へご案内しろ」
不安そうな様子を見せるリィカを見ながら、ルイス公爵は指示を出す。
一行が従おうとしたところで、馬車の音が聞こえて、ジェラードが舌打ちした。
「……王太子の馬車だな」
その言葉に、リィカが体を小さくして、怖がっているのが分かった。
「……知っているのか、リィカ?」
アレクがつぶやく。
今回の首謀者は、王太子だ。リィカの反応は、明らかにそれを知っている。
馬車が止まり、出てきたのはやはり王太子だった。
ジェラードを見て、不機嫌そうな顔をする。
「なぜ、貴様がここにいる。――ん? お前はアレクシスか? ……って、何だと!?」
アレクが抱えているリィカを見て、王太子がカッと叫んだ。
「なぜその小娘がいる!? 閉じ込めたのでなかったのか、ベネット!」
「も、申し訳ありません。その……」
ベネット公爵が慌てて謝るが、王太子はヒートアップしていく。
「今宵を楽しみにしていたのだぞ! 勇者を誑かした女が、私が犯したときにどんな顔をするか、期待していたのだ! それを、ここまで準備をしたというに、これはどういうことだ!」
「……………そ、その……」
「もうよい!」
王太子は、頭を下げるベネット公爵を切り捨てると、アレクに向かってくる。
「アレクシス、今夜一晩、その小娘は私がもらう。明日の貴様らの出発時には返してやるから、安心するが良い」
リィカがアレクにしがみつく。震えるリィカを抱きしめながら、王太子が伸ばしてきた手を躱す。
「お断りします。彼女は大切な仲間です。お渡しするわけにはいきません」
アレクがきっぱりと断る。だが、それは王太子に火に油を注ぐだけだった。
「この! 王子とは名ばかりの、子爵家の娘の子供ごときが私に逆らうか! 今すぐ土下座して、その小娘を差し出せ!!」
アレクが舌打ちし、それでも再度断ろうと口を開きかける。
「そんなの、お断りだ」
口を挟んできたのは、暁斗だった。
「王太子だか何だか知らないけど、さっさといなくなってよ。アレクも、リィカも、オレの大切な仲間だ。これ以上バカにするのは許さないよ」
暁斗は、本気で怒っていた。
最悪、実力行使も辞さない。そのつもりで、聖剣の柄に手をかける。
「…………………ヒッ!?」
王太子は、悲鳴を上げる。先ほどまでの傲慢さが嘘のようだ。
それでも最後のプライドとばかりに、何とか言い返す。
「……私は、この国の、王太子だぞ。いくら、勇者だからといって……私に手を出せば、どうなるか……」
「知らない。この国がどうなろうと、オレには関係ない。オレが引き受けたのは、魔王討伐だ。ここにいるのは、そのための最高のメンバーだ。――さっさと消えて」
「こ、この私に、そんな口を利いたこと、後悔、させてやる……!」
叫びながら、王太子は馬車に向かって走る。
そのまま走り去っていくのを見て、暁斗がヘナヘナとその場に座り込んだ。
「…………疲れたぁ。良かった」
「せっかく決まっていたのに、それじゃ台無しだぞ、アキト」
「そんな事言われたって、力抜けたんだもん。しょうがないじゃん」
ふくれっ面をする暁斗に、泰基が近寄って、頭をぐしゃぐしゃ撫でる。
「頑張ったじゃないか、暁斗。良くやったよ」
「――うん」
泰基に撫でられた頭を押さえて、暁斗は笑った。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】底辺冒険者の相続 〜昔、助けたお爺さんが、実はS級冒険者で、その遺言で七つの伝説級最強アイテムを相続しました〜
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
試験雇用中の冒険者パーティー【ブレイブソード】のリーダーに呼び出されたウィルは、クビを宣言されてしまう。その理由は同じ三ヶ月の試験雇用を受けていたコナーを雇うと決めたからだった。
ウィルは冒険者になって一年と一ヶ月、対してコナーは冒険者になって一ヶ月のド新人である。納得の出来ないウィルはコナーと一対一の決闘を申し込む。
その後、なんやかんやとあって、ウィルはシェフィールドの町を出て、実家の農家を継ぐ為に乗り合い馬車に乗ることになった。道中、魔物と遭遇するも、なんやかんやとあって、無事に生まれ故郷のサークス村に到着した。
無事に到着した村で農家として、再出発しようと考えるウィルの前に、両親は半年前にウィル宛てに届いた一通の手紙を渡してきた。
手紙内容は数年前にウィルが落とし物を探すのを手伝った、お爺さんが亡くなったことを知らせるものだった。そして、そのお爺さんの遺言でウィルに渡したい物があるから屋敷があるアポンタインの町に来て欲しいというものだった。
屋敷に到着したウィルだったが、彼はそこでお爺さんがS級冒険者だったことを知らされる。そんな驚く彼の前に、伝説級最強アイテムが次々と並べられていく。
【聖龍剣・死喰】【邪龍剣・命喰】【無限収納袋】【透明マント】【神速ブーツ】【賢者の壺】【神眼の指輪】
だが、ウィルはもう冒険者を辞めるつもりでいた。そんな彼の前に、お爺さんの孫娘であり、S級冒険者であるアシュリーが現れ、遺産の相続を放棄するように要求してきた。
奥様は聖女♡
メカ喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
追放された付与術士、別の職業に就く
志位斗 茂家波
ファンタジー
「…‥‥レーラ。君はもう、このパーティから出て行ってくれないか?」
……その一言で、私、付与術士のレーラは冒険者パーティから追放された。
けれども、別にそういう事はどうでもいい。なぜならば、別の就職先なら用意してあるもの。
とは言え、これで明暗が分かれるとは……人生とは不思議である。
たまにやる短編。今回は流行りの追放系を取り入れて見ました。作者の他作品のキャラも出す予定デス。
作者の連載作品「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」より、一部出していますので、興味があればそちらもどうぞ。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる