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第四章 モントルビアの王宮

王太子との対決

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「アレクシス殿、すまなかった」
ジェラードが頭を下げた。

「いや。――なぜここに?」
「この敷地内に連れてこられたと判明したので、伝えたかったんだ。その前に見つけているとは思わなかったが」
ここで、間にルイス公爵が割って入ってきた。

「話は後にしよう、ジェラード。アレクシス殿、我が家へご招待させて頂く」
アレクはリィカを見る。

「リィカ。ルイス公爵は信頼できる。受けてもいいか?」
「……なんで、わたしに確認するの?」
「色々大変な思いをしたのは、お前だ。だから、お前が嫌なら受けない」
リィカは、くしゃっと笑った。

「いいよ。アレクが信頼している人なら、安心できる」
「……ありがとう」
自分を信じてくれているからこその言葉は、何よりも嬉しい。

「公爵、ご招待、受けさせて頂きます」
ルイス公爵は頷くと、馬車へと案内する。

「急いで来たもので、馬車が小さいのです。この人数ですと、手狭になってしまいますが、ご了承下さい」
一行に向かって言うルイス公爵に、ベネット公爵が喚いた。

「貴様、待て! その小娘は置いていけ! どうせ普段から遊んでいるのだから、一晩くらい良かろう!」
「皆様方、どうかお気にならさず。私が話を致します。ジェラード、勇者様方を先に馬車へご案内しろ」

不安そうな様子を見せるリィカを見ながら、ルイス公爵は指示を出す。
一行が従おうとしたところで、馬車の音が聞こえて、ジェラードが舌打ちした。

「……王太子の馬車だな」
その言葉に、リィカが体を小さくして、怖がっているのが分かった。
「……知っているのか、リィカ?」
アレクがつぶやく。

今回の首謀者は、王太子だ。リィカの反応は、明らかにそれを知っている。
馬車が止まり、出てきたのはやはり王太子だった。
ジェラードを見て、不機嫌そうな顔をする。

「なぜ、貴様がここにいる。――ん? お前はアレクシスか? ……って、何だと!?」
アレクが抱えているリィカを見て、王太子がカッと叫んだ。

「なぜその小娘がいる!? 閉じ込めたのでなかったのか、ベネット!」
「も、申し訳ありません。その……」
ベネット公爵が慌てて謝るが、王太子はヒートアップしていく。

「今宵を楽しみにしていたのだぞ! 勇者を誑かした女が、私が犯したときにどんな顔をするか、期待していたのだ! それを、ここまで準備をしたというに、これはどういうことだ!」
「……………そ、その……」
「もうよい!」
王太子は、頭を下げるベネット公爵を切り捨てると、アレクに向かってくる。

「アレクシス、今夜一晩、その小娘は私がもらう。明日の貴様らの出発時には返してやるから、安心するが良い」
リィカがアレクにしがみつく。震えるリィカを抱きしめながら、王太子が伸ばしてきた手を躱す。

「お断りします。彼女は大切な仲間です。お渡しするわけにはいきません」
アレクがきっぱりと断る。だが、それは王太子に火に油を注ぐだけだった。

「この! 王子とは名ばかりの、子爵家の娘の子供ごときが私に逆らうか! 今すぐ土下座して、その小娘を差し出せ!!」
アレクが舌打ちし、それでも再度断ろうと口を開きかける。

「そんなの、お断りだ」
口を挟んできたのは、暁斗だった。
「王太子だか何だか知らないけど、さっさといなくなってよ。アレクも、リィカも、オレの大切な仲間だ。これ以上バカにするのは許さないよ」
暁斗は、本気で怒っていた。
最悪、実力行使も辞さない。そのつもりで、聖剣の柄に手をかける。

「…………………ヒッ!?」
王太子は、悲鳴を上げる。先ほどまでの傲慢さが嘘のようだ。
それでも最後のプライドとばかりに、何とか言い返す。

「……私は、この国の、王太子だぞ。いくら、勇者だからといって……私に手を出せば、どうなるか……」
「知らない。この国がどうなろうと、オレには関係ない。オレが引き受けたのは、魔王討伐だ。ここにいるのは、そのための最高のメンバーだ。――さっさと消えて」
「こ、この私に、そんな口を利いたこと、後悔、させてやる……!」

叫びながら、王太子は馬車に向かって走る。
そのまま走り去っていくのを見て、暁斗がヘナヘナとその場に座り込んだ。

「…………疲れたぁ。良かった」
「せっかく決まっていたのに、それじゃ台無しだぞ、アキト」
「そんな事言われたって、力抜けたんだもん。しょうがないじゃん」
ふくれっ面をする暁斗に、泰基が近寄って、頭をぐしゃぐしゃ撫でる。

「頑張ったじゃないか、暁斗。良くやったよ」
「――うん」
泰基に撫でられた頭を押さえて、暁斗は笑った。
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