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第四章 モントルビアの王宮
ベネット公爵邸へ
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魔法師団の見学から戻ると、いくつかの国の大使が面会を望んでいる、ということで、そちらの対応に入った。
その後、アレクたちがベネット公爵邸へ移動したのは、完全に夜になってからだった。
荷物も全部持ってきているので、まずは部屋へどうぞ、と通されたら個室だった。
確かに、五人一緒にしろ、と改めては言わなかったが、それをいいことに個室にしたベネット公爵に腹が立つ。
暁斗は、荷物だけ置いたらさっさと泰基の部屋に行き、泰基はその暁斗を伴って、アレクの部屋に向かう。
止めようとする兵士もいたが、気にしていられなかった。
※ ※ ※
「陛下、王太子殿下。勇者たちは、我が家に移りました」
「うむ、ご苦労。しかし、魔法師団には興味をしめさなかったか」
「……は。申し訳ありません」
ベネット公爵が頭を下げる。
その顔は、苦々しかった。
「慰み者の女が魔法使いとして役に立っているとも思えませんのに、よほどのお気に入りなのか。晩餐でも、女はいらないと父親に言われました」
「何、心配はいらないだろう、ベネット公爵。あの程度の女、すぐに忘れるだろうさ。気にせず、夜には最高の女を送り込めば問題ない」
嘲笑するように言ったのは、王太子、クライドだ。
「大体あいつら、あの女を無視して馬車に乗り込んだんだろう? その程度ってことさ」
ベネット公爵も、同じようにあざ笑う。
「平民などを我が家の馬車に乗せるつもりはございません。乗せようとしたのなら、無礼者として捕らえたまでですが」
「クライド。その小娘も、場所を移したのだったな?」
国王の問いに、王太子が頷く。
「ええ、父上。ベネット公爵が場所を貸してくれました。敷地の外れのボロ小屋に閉じ込めてあります」
「ふむ。――それで、ルイス公爵が何やら嗅ぎ回っていた、という話だが」
国王は自らその名を出しながら、顔をしかめる。
自分の弟ではあるが、自分より優秀で、弟を次期国王に、と求める声も多かった。
王位継承争いになることを嫌った当時の国王、つまり自分の父が、弟をルイス公爵家に婿に出す事にしたのだが、それも不満だった。
なぜ公爵家なのか。もっと下の貴族家に婿入りさせていれば、今もなお、口出しされるようなことはなかったはずなのだ。
「何を考えているのか、捕らえた小娘を気にしているようですな。小娘を移す際、攪乱いたしましたので、移動先は見つかっていないはずです」
ベネット公爵の言葉に、国王の口先が上がる。
どんな事でも、弟を出し抜けたというのは気分がいい。
「クライド、後は好きに遊べ。ただし、明日の勇者の出発時には、元いた場所に戻すから、忘れるでないぞ」
「はい、父上。承知しております。――くっくっく。勇者たちのいる屋敷を眺めながら犯されるあの女は、どんな顔をするのか。楽しみだ。」
クライドの顔は、醜く欲望で歪んでいた。
しかし、勇者たちの近くにリィカを連れてきたこと。
それが、最大の失敗になることを彼らが知るのは、もう少しだけ先のこと。
※ ※ ※
「アレクの部屋、何か狭いね」
暁斗の感想の通りに、確かに狭い。一国の王子を泊める部屋とは思えない。
先に来ていたバルとユーリも頷く。
「おれん所のほうが、まだ広い」
「僕の所も、もう少し広いですよ」
「……………まあ別にいいんだけどな」
アレクは、すでに諦めているようだ。
普通であれば、バルとユーリの方が部屋が広いなど、あり得ないが、それがベネット公爵の、というか、この国の基準なんだろう。
「それよりも、だ」
アレクが手にしているのは、一枚の紙。
王宮を出る前にもたらされた、ジェラードからの連絡。
『夕刻、リィカ嬢が牢から出されるのを確認。だが、攪乱されて移動先の確定ができず。これから全力で探す』
その内容を読んだ時、全員の顔から血の気が引いた。
最悪の状況だからだ。
「……晩餐に出ないわけにはいかない。だがその後、俺とバルは屋敷を抜け出してリィカを探す。何か聞かれたら、適当にごまかしてくれ」
「二人でか? 全員で探した方がいいんじゃないか?」
泰基の言葉に、アレクは首を横に振る。
「いや、どこにいるか分からないんだ。気配を読める俺たちだけでいい。完全にここを無人にして、ベネット公爵に何か嗅ぎつけられても面倒だ」
その言葉に反応したのは、暁斗だった。
「待ってよ。だったらオレも探す。オレも気配よめるよ。リィカのこと、探せるから」
「しかしな、アキト……」
「いや、暁斗も連れてってくれないか。大人しく待つなんてできない奴だから」
アレクは渋るが、泰基の言葉にしょうがないと頷いた。
「分かった、アキト。でも、冷静にな。一人で暴走するなよ」
「……うっ……! 気をつけます……」
暁斗の返答は、何とも自信なさげだった。
その後、アレクたちがベネット公爵邸へ移動したのは、完全に夜になってからだった。
荷物も全部持ってきているので、まずは部屋へどうぞ、と通されたら個室だった。
確かに、五人一緒にしろ、と改めては言わなかったが、それをいいことに個室にしたベネット公爵に腹が立つ。
暁斗は、荷物だけ置いたらさっさと泰基の部屋に行き、泰基はその暁斗を伴って、アレクの部屋に向かう。
止めようとする兵士もいたが、気にしていられなかった。
※ ※ ※
「陛下、王太子殿下。勇者たちは、我が家に移りました」
「うむ、ご苦労。しかし、魔法師団には興味をしめさなかったか」
「……は。申し訳ありません」
ベネット公爵が頭を下げる。
その顔は、苦々しかった。
「慰み者の女が魔法使いとして役に立っているとも思えませんのに、よほどのお気に入りなのか。晩餐でも、女はいらないと父親に言われました」
「何、心配はいらないだろう、ベネット公爵。あの程度の女、すぐに忘れるだろうさ。気にせず、夜には最高の女を送り込めば問題ない」
嘲笑するように言ったのは、王太子、クライドだ。
「大体あいつら、あの女を無視して馬車に乗り込んだんだろう? その程度ってことさ」
ベネット公爵も、同じようにあざ笑う。
「平民などを我が家の馬車に乗せるつもりはございません。乗せようとしたのなら、無礼者として捕らえたまでですが」
「クライド。その小娘も、場所を移したのだったな?」
国王の問いに、王太子が頷く。
「ええ、父上。ベネット公爵が場所を貸してくれました。敷地の外れのボロ小屋に閉じ込めてあります」
「ふむ。――それで、ルイス公爵が何やら嗅ぎ回っていた、という話だが」
国王は自らその名を出しながら、顔をしかめる。
自分の弟ではあるが、自分より優秀で、弟を次期国王に、と求める声も多かった。
王位継承争いになることを嫌った当時の国王、つまり自分の父が、弟をルイス公爵家に婿に出す事にしたのだが、それも不満だった。
なぜ公爵家なのか。もっと下の貴族家に婿入りさせていれば、今もなお、口出しされるようなことはなかったはずなのだ。
「何を考えているのか、捕らえた小娘を気にしているようですな。小娘を移す際、攪乱いたしましたので、移動先は見つかっていないはずです」
ベネット公爵の言葉に、国王の口先が上がる。
どんな事でも、弟を出し抜けたというのは気分がいい。
「クライド、後は好きに遊べ。ただし、明日の勇者の出発時には、元いた場所に戻すから、忘れるでないぞ」
「はい、父上。承知しております。――くっくっく。勇者たちのいる屋敷を眺めながら犯されるあの女は、どんな顔をするのか。楽しみだ。」
クライドの顔は、醜く欲望で歪んでいた。
しかし、勇者たちの近くにリィカを連れてきたこと。
それが、最大の失敗になることを彼らが知るのは、もう少しだけ先のこと。
※ ※ ※
「アレクの部屋、何か狭いね」
暁斗の感想の通りに、確かに狭い。一国の王子を泊める部屋とは思えない。
先に来ていたバルとユーリも頷く。
「おれん所のほうが、まだ広い」
「僕の所も、もう少し広いですよ」
「……………まあ別にいいんだけどな」
アレクは、すでに諦めているようだ。
普通であれば、バルとユーリの方が部屋が広いなど、あり得ないが、それがベネット公爵の、というか、この国の基準なんだろう。
「それよりも、だ」
アレクが手にしているのは、一枚の紙。
王宮を出る前にもたらされた、ジェラードからの連絡。
『夕刻、リィカ嬢が牢から出されるのを確認。だが、攪乱されて移動先の確定ができず。これから全力で探す』
その内容を読んだ時、全員の顔から血の気が引いた。
最悪の状況だからだ。
「……晩餐に出ないわけにはいかない。だがその後、俺とバルは屋敷を抜け出してリィカを探す。何か聞かれたら、適当にごまかしてくれ」
「二人でか? 全員で探した方がいいんじゃないか?」
泰基の言葉に、アレクは首を横に振る。
「いや、どこにいるか分からないんだ。気配を読める俺たちだけでいい。完全にここを無人にして、ベネット公爵に何か嗅ぎつけられても面倒だ」
その言葉に反応したのは、暁斗だった。
「待ってよ。だったらオレも探す。オレも気配よめるよ。リィカのこと、探せるから」
「しかしな、アキト……」
「いや、暁斗も連れてってくれないか。大人しく待つなんてできない奴だから」
アレクは渋るが、泰基の言葉にしょうがないと頷いた。
「分かった、アキト。でも、冷静にな。一人で暴走するなよ」
「……うっ……! 気をつけます……」
暁斗の返答は、何とも自信なさげだった。
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