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第三章 魔道具を作ろう

それぞれの成果

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赤い顔をしているアレクをバルはサラッと無視することにして、他のメンバーに顔を向ける。

「んで後は……、アキトはやっぱり魔法のバッグか?」
欲しい欲しいと連呼していたのだから、おそらくそうだろうと思って話を振ってみれば、暁斗の顔は渋い。

「……そこまで行かない」
魔石の加工が上手くいかない。

魔法を無詠唱で使うのは何の苦労もしない暁斗だが、魔道具作りは難しいようだ。
サルマにも、不器用だねと言われてしまった。

「ユーリとタイキさんは?」
視線を逸らしたユーリに、フェイのジトッとした視線が突き刺さる。

同じ神官だからか、フェイはユーリには接しやすいようで、ユーリの魔道具作りを見ていたのだが……。
「ユーリはこだわりすぎ。威力を出そうとして、魔力を込めすぎて魔石をダメにする」

その魔石に込められる魔力ギリギリまで込めようとして失敗して、何個も魔石を灰にしてしまっている。

これ以上の魔石は上げられない、と言われたら、倒したばかりのオークの魔石に手を出した。自分で浄化できるから、確かにやろうと思えばできる。

が、ほっといたら10個全部使いかねない、と思ったアレクが許可を出したのは一個だけで、それには非常に不満そうな顔をしたユーリだった。

結局それも灰にしてしまい、ユーリの成果もゼロだ。

「思いっきり、のめり込んでんじゃねぇか」
魔道具作りの前に、リィカや泰基が言った事が、まさにピタリと当たってる。
バルの言葉に、ユーリは視線を逸らしたまま無言を貫いていた。


「じゃあ、タイキさんは……」
暁斗みたいに不器用って事もなさそうだし、ユーリみたいな事もしないだろう。
むしろ、リィカみたいに成功しているイメージが強い。

そう思ったバルだが、泰基は難しい顔だ。
「……ただの《回復ヒール》を付与しただけの魔石にしかならないんだよな」

「何を作ろうとしたんだ?」
「身に付けていれば、自動で体力や怪我を回復してくれるもの」
「……そりゃあまた、すごいこと考えたな」

日本のファンタジーから考えれば、自動回復効果のある魔法だったり道具だったりは、結構ありふれている。
大体が、微少な回復効果しかないものが多いが、その微少な回復というのが侮れない事も多い。
だから作ってみたかったのだが、結果はただ《回復ヒール》を封じ込めた魔石が出来上がっただけだ。


「ふいー、疲れたぁ」
魔石に集中していたリィカが、顔を上げた。
魔石が綺麗な円球になっていた。

「魔石のランクが上がると、加工も難しくなるなぁ」
リィカのぼやきに、サルマが呆れて返す。

「普通なら、難しい程度じゃ済まないよ。ちなみに、ワタシはCランクの魔石の加工は無理」

「――えっ、なんで!? だって、さっき、Cランクならできるって……」

「大体の感覚でできると思ったからそう言った。それに、リィカちゃんならCランクの加工もできそうな気がしたから、何も言わなかったけどね」
リィカは口をあんぐりさせる。

サルマは笑うと、
「火魔法の付与、失敗しないように気をつけなよ」

頷いて魔石に視線を落としたリィカだが、そこでオリーがストップをかけた。

「悪いけど、そろそろ出発するよ。それは馬車の中でお願い。――今日中に街に到着したいから、少し馬車を急がせるよ。みんなも、野営するよりベッドで寝たいでしょ」

全員が頷いて、片付けをしてから出発した。

急がせた馬車の中は、お世辞にも集中できる状態じゃなく、リィカは火魔法の付与を諦めた。
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