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第三章 魔道具を作ろう

命名:カセットコンロ

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「あの、他にはどんな魔道具があるんですか?」
引き攣っている勇者二人を助けるべく、リィカが話を魔道具に戻す。
幸い、サルマは気付いた様子はない。

「そうだねぇ。……そうだ。あんたらテントは持ってる?」
リィカは首を横に振る。
欲しいとは思ったが、それこそかさばるので諦めた品の一つだ。

「ワタシらの開発の一つ、超小型収納テント。休憩するときに見せてあげるよ。気に入ったら、値段交渉はオリーとやって」

簡易調理器はかさばるから無理だと言ったのに、こっちは自信満々なサルマだ。
値段は気になるところだが、期待は高まる。

「でしたら、あの調理器も試しに使わせてもらえませんか?」
ついでとばかりに、ユーリがのってきた。

「……ちゃっかりしてるね、あんた」
「カセットコンロ、にしようよ、名前!」
呆れたサルマの言葉に被さるように、暁斗が言った。

「調理器じゃ名前が面白くないじゃん。カセットコンロ、どう?」
泰基は、おいおいやめておけ、と内心思う。
下手なことを言えば、勇者とバレる。

「……カセット……コンロ? どんな意味? 何か由来でもあるの?」
「なんとなく、勘!!」

サルマの問いに対する暁斗の答えに、泰基は内心でガクッとくる。
もうちょっと別の言い訳はないのか。それじゃ、頭の悪い人間みたいだ。
そこまで考えて、暁斗の学校の成績を思い浮かべる。みたいと付ける必要もなく、その通りだった。

「……勘、ねぇ。でも、カセットコンロ……。うん、いいかもね。よし、アキト! その名前、使わせてもらうよ」
「やったぁ」
「そんな簡単で良いのか?」
思わず泰基は聞いてしまう。

「いいよ。こういうのは深く考えても駄目。パッとイメージがわけば、それで良いのさ」

うーん、と考え込む泰基を横目に、ユーリはカセットコンロと命名されたそれを使う約束を取り付けていた。

リィカは、こうやって日本の言葉がこの世界に浸透していくんだなぁ、としみじみ思っていた。


それからも色々と話を聞くが、どれも興味をかき立てられる。
まず、乗っているこの馬車。これも魔道具の一つだという。

魔石に、《結界バリア》の魔法を封じ込める。さらに、風魔法を封じ込めることで、気配を極力抑える。
その魔石を、馬車の屋根近い部分に埋め込んであるのだという。

「残念ながら、効果はEランクの魔物しかないけどね。《結界バリア》があるから、Dランクでも攻撃力が高くなければ大丈夫けど、あのオーロックスは無理。前は街道に出てくる魔物なんてEランクしかいなかったから、護衛がいなくても十分だったんだけど」

はぁ、とサルマはため息をつく。
魔王が誕生すれば、魔物は活発化して強くなる。そのせいで、一気に人の動きが少なくなる。
この辺りは南の方なのでまだマシだ。

だが、北に主な商売先があるサルマたちは、悩みの種だった。


後は、開発中という魔道具。

一番飛びついたのは暁斗だが、他の面々も興味を引かれた。
かつて暁斗が話題にした魔法のバッグ。それの魔道具版を作成中らしい。

「勇者伝説に出てきた、ってオリーが言い出したんだけどね。――とはいっても、現状お手上げ。ユニーク魔法を持ってた、って勇者様だからできただけだと思うんだけどね」
頓挫している、という説明にガックリきた。


もう一つ見せてくれたのが、耳に付けられていたイヤリングだ。
風の手紙エア・レター、っていう魔道具だよ。これを付けた人同士、離れた場所にいても、話ができる」

「ええっ!?」
「すごいじゃないですか!」
各々に驚きを示す。

つい最近、離ればなれになって合流に苦労したのだ。むしろ、それが欲しい。
そんな顔に気付いたのか、サルマは苦笑する。

「売ってあげられれば上げたいんだけどね。これ、相手を特定できないんだよ。この魔道具を持っている全員に、話が伝わってしまうんだ」
泰基が少し考える。

「つまり、俺たちがその魔道具を手に入れて使ったとすると、あんたたちにも話が伝わるし、あんたたちの話も、俺たちに伝わってしまう、ということか?」

「そういうこと。だから、今のところ、ワタシたちの専用品なんだ」

電話みたいだと思ったが、そう上手くはいかないらしい。
電話機やスマホのように、一つ一つに、違う番号のようなものを割り振る事ができればいいのだろうが、そんな方法など、何も思い浮かばない。


泰基だけではなく、暁斗もリィカも何となく考えていた所に、サルマが言った言葉に、驚かされた。

「それで、ようやく本題。――あんたたち、魔道具作り、してみない?」
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