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思う存分泣いて
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〔 Side リィカルナ 〕
目を開けた時、居場所が分からなかった。
「…………………?」
ここはどこだろう。
横になったまま、記憶を掘り起こす。
確か、地下牢に入れられていたはずだ。
そこで、公爵閣下に言われてずっと立っていた。
それから……、それから………………?
ガバッと起き上がった。
頭がクラクラしたけれど、構わずベッドから降りる。
そこで、初めて自分が柔らかいベッドに寝ていたことに気付いた。
周囲を見渡す。
牢のような柵があるから、牢屋であることは間違いなさそうだけど、ベッドや周囲の調度品なんかを見ると、間違っても地下牢じゃない。
そして、ここにいるのはわたしだけだ。
「なんで……」
何があったのか、まるで分からない。
一つ確かなのは、公爵閣下から休んでいい、という言葉を聞いた記憶が全くないこと。
つまりは、許しを得ないままに、わたしは休んでしまった事になる。
「謝らなきゃ……」
そうじゃないと、母にすべてが降りかかる。
なんだか体が重いけれど、構わず動かす。
公爵閣下のところに行かせてもらわないといけない。
誰かいないかと、牢の柵に手を掛けた。
「起きたか、リィカルナ」
わたしが声を出すより先に、声を掛けられた。
「……アレクシス殿下?」
そこにいたのは、第二王子のアレクシス殿下だ。
何でこんな所に、と思ったけれど、王子殿下がここにいるのは好都合だった。
「あの、公爵……じゃなくて、お父様はどちらですか? お父様に話があるんです。逃げたりしませんので、どうかお父様に会わせて下さい」
危うく公爵閣下と言いそうになって言い直す。
他の方々の前では、きちんと父と呼ばなければいけなかったから。
けれど、アレクシス殿下は困った顔をしただけだ。
「覚えてないのか……」
「え……?」
何のことか分からず、首を傾げる。
すると、アレクシス殿下は困った顔のまま、笑った。
「ベネット公爵には会わせられない。――そんな顔をするな。きちんと説明する。今、食事が届くから、食べながら聞いてくれ」
そんな顔、と言うのがどんな顔が分からないけれど、説明して頂けるなら、まずはそれを聞くしかないだろう。
食事、という言葉には心惹かれたけれど……。
「い、いえ、食事はいりません。説明をお願いできませんか?」
牢に入る前に食事抜きと言われて、そのままだ。食べて良い、とは言われていない。
だから、公爵閣下に謝罪をして、すべてはそこからだ。
「リィカルナ、母親は無事保護した」
唐突なアレクシス殿下の言葉の意味を、理解し損ねた。
「衰弱していて、今はまだ治療中だが、命に別状はないそうだ。面会できるようになったら、ちゃんと会わせてやる。――だから、もういい。ベネット公爵の言うことを聞かなくていいんだ」
「…………………ぇ……」
言うことを聞かなくていい?
会える?
今、治療中?
……無事、保護した?
「…………お母さんを……?」
「そうだ」
アレクシス殿下が頷く。
「なんで…………………」
なぜ、殿下が母のことを知っているんだろう。
なぜ、保護してくれたんだろう。
疑問はたくさんある。
けれど。
「…………無事……」
「ああ」
短い殿下の返答だけど、とても力強くて、目が優しくて、信じて良いと思えた。
母は大丈夫なのだと、素直に思えた。
「お母さん、生きてる………」
次から次から涙が溢れた。
止まらない。
誰かの手が、頭を撫でた。
そのまま抱き締められる。
「思う存分泣け。ここまで、ずっと辛いのを我慢して、頑張ってきたんだもんな」
いつの間に中に入ってきたのか、アレクシス殿下だった。
その声がすごく優しかった。
優しくて、心に染み渡って、ますます涙が止まらなかった。
そのまま、わたしはアレクシス殿下にしがみついて、泣き続けた。
目を開けた時、居場所が分からなかった。
「…………………?」
ここはどこだろう。
横になったまま、記憶を掘り起こす。
確か、地下牢に入れられていたはずだ。
そこで、公爵閣下に言われてずっと立っていた。
それから……、それから………………?
ガバッと起き上がった。
頭がクラクラしたけれど、構わずベッドから降りる。
そこで、初めて自分が柔らかいベッドに寝ていたことに気付いた。
周囲を見渡す。
牢のような柵があるから、牢屋であることは間違いなさそうだけど、ベッドや周囲の調度品なんかを見ると、間違っても地下牢じゃない。
そして、ここにいるのはわたしだけだ。
「なんで……」
何があったのか、まるで分からない。
一つ確かなのは、公爵閣下から休んでいい、という言葉を聞いた記憶が全くないこと。
つまりは、許しを得ないままに、わたしは休んでしまった事になる。
「謝らなきゃ……」
そうじゃないと、母にすべてが降りかかる。
なんだか体が重いけれど、構わず動かす。
公爵閣下のところに行かせてもらわないといけない。
誰かいないかと、牢の柵に手を掛けた。
「起きたか、リィカルナ」
わたしが声を出すより先に、声を掛けられた。
「……アレクシス殿下?」
そこにいたのは、第二王子のアレクシス殿下だ。
何でこんな所に、と思ったけれど、王子殿下がここにいるのは好都合だった。
「あの、公爵……じゃなくて、お父様はどちらですか? お父様に話があるんです。逃げたりしませんので、どうかお父様に会わせて下さい」
危うく公爵閣下と言いそうになって言い直す。
他の方々の前では、きちんと父と呼ばなければいけなかったから。
けれど、アレクシス殿下は困った顔をしただけだ。
「覚えてないのか……」
「え……?」
何のことか分からず、首を傾げる。
すると、アレクシス殿下は困った顔のまま、笑った。
「ベネット公爵には会わせられない。――そんな顔をするな。きちんと説明する。今、食事が届くから、食べながら聞いてくれ」
そんな顔、と言うのがどんな顔が分からないけれど、説明して頂けるなら、まずはそれを聞くしかないだろう。
食事、という言葉には心惹かれたけれど……。
「い、いえ、食事はいりません。説明をお願いできませんか?」
牢に入る前に食事抜きと言われて、そのままだ。食べて良い、とは言われていない。
だから、公爵閣下に謝罪をして、すべてはそこからだ。
「リィカルナ、母親は無事保護した」
唐突なアレクシス殿下の言葉の意味を、理解し損ねた。
「衰弱していて、今はまだ治療中だが、命に別状はないそうだ。面会できるようになったら、ちゃんと会わせてやる。――だから、もういい。ベネット公爵の言うことを聞かなくていいんだ」
「…………………ぇ……」
言うことを聞かなくていい?
会える?
今、治療中?
……無事、保護した?
「…………お母さんを……?」
「そうだ」
アレクシス殿下が頷く。
「なんで…………………」
なぜ、殿下が母のことを知っているんだろう。
なぜ、保護してくれたんだろう。
疑問はたくさんある。
けれど。
「…………無事……」
「ああ」
短い殿下の返答だけど、とても力強くて、目が優しくて、信じて良いと思えた。
母は大丈夫なのだと、素直に思えた。
「お母さん、生きてる………」
次から次から涙が溢れた。
止まらない。
誰かの手が、頭を撫でた。
そのまま抱き締められる。
「思う存分泣け。ここまで、ずっと辛いのを我慢して、頑張ってきたんだもんな」
いつの間に中に入ってきたのか、アレクシス殿下だった。
その声がすごく優しかった。
優しくて、心に染み渡って、ますます涙が止まらなかった。
そのまま、わたしはアレクシス殿下にしがみついて、泣き続けた。
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